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そうして黒板を使い口頭で授業が進められあっという間に使役魔法の授業も終わり、帰ろうとしたところで“凄い人”から声をかけられた。
「アリス、ちょっと話さないかい?」
「じゃあ私先戻ってるね」
「あ、うん」
クレアに気を遣われたみたいだ。
私に話しかけてきたのはロイド・ヴァーミリオン様。この国の第一王子とも呼ばれる偉い人だ。薄い金髪、卵色といえばいいのかわからないけど、綺麗な髪の色をしている。目は碧色で、ザ・イケメンな見た目をしている。恐らく、その姿は一番人気になり得るだろう。
何故こんな人に話しかけられているのか私には想像もつかない。恐ろしいものだ。主人公補正、というやつだろうか。
「授業、魔法が使えて凄かったね」
「ありがとうございます。でもまだまだですよ」
「謙遜しなくてもいいよ。才能があるのかな、魔法に慣れてない人があんなに簡単に使えるのは凄いことなんだよ。僕達王族とか貴族は昔から魔法とは馴染みがあるからね」
「そうなんですね。中々知らなくて」
「ああ。だから少し恨みを買うかもしれない。気をつけたほうがいいよ」
「恨み……」
じゃあ、もしかしてフェリア様も……。
でも魔法を使う前から目をつけられていた気がする。確か、始めての授業の時、教室を間違えて教えられ遅刻しそうになった。無駄に遠回りをしたんだよな。それからクレアは目の敵にしちゃってるけど。もしかしなくてもフェリア様はただ平民をイビるのが好きなのか。
「深く考えすぎないでいいよ。ただ何かしらあるかもしれないし、注意はしておいてってことさ」
「はい……」
「君は、フェリアのことをどう思ってるかな?」
「え……っ!?」
まさかここでこれを聞いてくるとは。
もしかして、ロイド様はこちらの味方なのかな。だから恨みという単語を出して、気をつけてと注意喚起をしてくれたのか。でも、このフェリア様とロイド様は仲良しって聞くし、安易になにか言うのも恐ろしい。
──そうか、話しかけてくる理由が分からなかったけど、二人して私を嵌めようとしているのか?
でも、どう答えるのが正解なんだ。もうわからない。この国腐ってるよ。とりあえずありきたりなことを言っておこう。
「高貴な人だな〜って。どうしてそんなことを?」
「あはは。あんまり勘違いしてほしくないなって思ってね。かなり不器用だから、伝わってないだろうなとは思ったけど」
「勘違い?」
「ごめんね、ボクのほうから謝っておくよ。もしなにかあったら相談してね。何か力になるから」
「はあ……」
「引き止めてごめんね。お友達にもよろしくって伝えてほしいな」
「わかり、ました……」
それだけ言って去っていったロイド様。
真面目に伝えたいことは何一つとして伝わらなかったけど、私は取り敢えず教室に戻ることにした。
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