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「ええー、魔法とは人間の気を原動力に動くとは前にいったと思うが──」

「ほんと何なの、何で席開けたのに座らないのよ」

「まあまあ……」


 授業中クレアは大分荒れていた。私のために怒ってくれるのは嬉しいが、目だけはつけられないようにしてほしい。

 文句で少しうるさいが、ノートはちゃんと取ってるみたいだ。流石だ。

 さて、今の授業は何をしているのかというと、魔法の構造についてだ。魔法陣を先生が実際に描いて、これはどういう意味だ、とか言ってるがそもそも言語にあまり馴染みがない私はこの授業が好きではない。ただ、読み書きは勿論できる。ただなんというか感覚が無くて慣れないのだ。


「じゃあ……アリス。一旦そこから魔法を描いてみてくれないか?」

「え……」


 この先生は私のことが好きなのか良く当ててくる。クレア曰く、魔法が出来るから気に入られてるらしい。

 入学して間もない頃に支給された杖を握って、私は空に魔法を描く。黒板に描かれたものと同じように。

 すると円型の魔法陣から兎のようなものが一匹飛び出してきた。しかし空中を回り回ったあと、それはすぐに消えた。


「流石だアリス。このように、このくらいの召喚魔法は簡単に魔物を召喚することが出来るが、契約していない分すぐに消えてしまう。二年からの魔法選択で詳しいことをやるが、まずテストに出るのは魔物の使役の仕方だ」


 注目されるのは慣れていない。ただこうやって魔法が簡単に使えてよかった。恥をかくのは嫌だし。

 でも、魔法ができるせいで当てられているから、やっぱりできない方がいい気がする。


「魔物の使役の仕方は簡単で、まずなりたい種族の魔法陣を各々で調べてそれを描く。ここでは自分の血を混ぜた専用の魔法液が必要だ。血液だけでも構わないが、それはリスクも血もたくさん必要だからやめておけ。すると、自分の力量にあったその種族の魔物が出てくる。そしたら諸々の手続きを踏んで、仲間にできる。教科書を見てくれ書いてある」


 先生に言われたので教科書に目を通す。契約には口頭で色々聞かれるらしい。魔物がその人間につくかどうか力量を測るため、か。大変そうだ。聞かれる内容の例と答え方まで載っているけど、これ覚えないとだめかな。


「あと、そのページの下に表があるだろう。それが魔物の強さの順番だ。上にいけばいくほど魔物の強さは大きくなるが、危険だからといって魔法陣が公には公開されてないものもいる。誰でも魔物を使役できるチャンスはあるが、何でもいいというわけではなくて、自分の力にあった魔物を選ばないと、体が乗っ取られたり最悪殺される場合もある。自分を客観的に見れない人間は使役魔法は使うなよ〜」


 一番上の魔物はドラゴンとか一般的に都市伝説とされる魔物らしい。その下に悪魔。注意書きで最悪魂を取られる可能性がある、と書いてある。そこからは上級魔物とか中級魔物、初級魔物とか並んでいた。


「さっきのは初級魔物だな。血も含んでない召喚魔法ならすぐ消えてくれるが、上の方の魔物になると勝手に暴れだすから気を付けろよ。最も、魔力が足らなかったら出てくることさえないが、決して悪ふざけでもしないように。じゃあ次は──」


 使役魔法。怖いから使わないでおこう。私は人知れずそう思ったのだった。

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