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不安だった入学式も、色んな行事も全て終え、目まぐるしい日々を必死にこなしていると、もう魔法学園に入学して一ヶ月が経とうとしていた。
もしこれが仮に入学のような新生活ではなくて、昔のアリスのような生活を続けろと言われたらとても大変なことになっていただろう。そこだけは命拾いだ。
しかし、異世界転生といえど、私にはこのゲーム? 小説? の知識がない。転生してプラスどころかマイナススタートだ。
例えばテストで歴史問題が出されたとしよう。私はなんの積み重ねもない。普通なら転生者という人間は異世界の知識があるから有利なのに、私にはそれがないのだ。
「はぁ……」
「大丈夫? アリス。変な顔して」
教室の机でぐだっとしてる私に話しかけてきたのは、クレア・マリーノ。金髪でボブくらいの髪の長さ。目は水色だ。普通に美形。流石二次元(仮)。
同じく私と平民の出で、聡明な女性だ。平民は少ないと寮母さんが言っており、その言葉通り理系クラスの女子くらいにはいた。また、クレアは魔法を買われているのに日頃の言動から学力はかなり上位だと思われる。
「変な顔って……」
「また、『お嬢様』になにかやられた?」
「何もされてないけど。っていうか……」
お嬢様。フェリア・フローリデ様のことだ。
噂によると、この国の第一王子ととても仲が良い、つまり権力があり、実質第一王子みたいなそれくらい凄い人。権力だけの人間ではなくて、容姿も良くて勉強も魔法も使えるハイスペック人間だ。
見た目は薄紫の髪を持っていて、瞳はアメジストみたいな綺麗な宝石みたいだ。スタイルもいい。
しかし、暴君で我儘、手に負えないなどの噂がある──。
そんな人に私はなんの心あたりもなく、よく嫌がらせをされる。例えば、移動教室の道を間違えて教えられたり、飲み物を全て捨てられたり。何故こんなことをされているのか、本当に身に覚えがない。謝りたいのだが、謝ろうとしてもタイミングはないし、それどころか圧が怖くて……
「私ってなんであんなに嫌がらせされてるんだろう。怖い……怖すぎる……」
「あんた魔法出来すぎるもんね。フェリア様だけじゃなくて、他の人からも少し目つけられてるじゃん」
「え、そうなの?」
「まあ、フェリア様みたいに何かしてくる訳ではないけど、妬みの視線っていうか。ごめん何でもない。アリスが気にしすぎてもだめだよね。忘れて」
そんなこと言われても。これから気にせずにこれから暮らしていけるだろうか。
「あ、噂をすれば……」
教室に入ってきたフェリア様。私を見るとすぐにこちらに近付いてきた。
びっくりして私はぐったりとしていた背筋を伸ばす。まさか神聖な学校でこんな姿を晒すなということだろうか。休める場所は無いらしい。アーメン。
「平民、そこで授業を受ける気? 平民らしく後ろにいたらどうですの?」
「す、すみません。すぐ退くので」
「…………」
私がいたのは真ん中で一番前の席。
確かに私如きがこんないい席に座っていいはずは無いですよね。平民らしくしよう。
「ちょっと、貴族だかなんだか知らないけど、そういう言い方は良くないんじゃない?」
「クレア、移動すればいいだけだから」
「その通り。それなら文句は無いわ。」
「……ま、アリスが言うなら」
少しだけフェリア様を睨みつけて席を移動するクレアに付いていく。こんな大きな態度をとるなんて少し不安だ。
「クレア、いいからいいから」
しかしなんということか。フェリア様はそこには座らずその席の隣に座ったではないか。これには私達もびっくり。
それから結局そこに座ったのはドレスをメインに作る会社のお嬢であるリマンダ様。
「席開けたのに、なんで座らないのよ」
「まあまあ」
「許せる?」
「…………まあまあ……」
クレアは文句を言うが、私が何も言わなくなると仕方なく黙った。胸に少しのざわめきが残る中、授業は始まった。
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