第4話 監禁部屋で
私の考えは思いの外甘かったかもしれない。見た目が娘のままだったとしても、この体に取り憑いたことに悪意を持って話せば処刑される。
その結果、こんなことになるなんて思いもよらなかった。
処刑になるような話は無く、様子を見に来るメイドたちの対応もアストレイナの両親もまるでここの娘としてのものだった。
何もない部屋に一人残され、幽閉と何ら変わりのない。
こんなことを続けるよりいっそ楽に殺してくれないものかしら?
ここを抜け出せれば、一番良かったのだけど……
「閉じ込められてかれこれ三日。昨日は、給仕に来ていたメイドの脇を通り抜け部屋から脱走するまでは良かったけど……まさかの二重扉により断念したのよね」
この部屋に連れてこられた時には、そんなものがなかったはず。私が逃げ出すことを想定されて、後から付け加えられていたのは予想外だった。
私がこの子の中に入っていたとしても、見た目は我が子であることに変わりはないから手を下すのを躊躇っているかもしれない。
そうなったら私にもまだ考えはある。
夜を待って寝静まるまで見張りのメイドがいる。しかし、彼女たちがずっとここにいるということはない。
扉の音を確認して、辺りを見渡し誰も居ないことを確認してからベッドから降りる。
「とっとと終わらせますか」
天井付きのベッドには何かの使い道があるのかただの飾りかわからないけど、カーテンのようなものがある。
椅子を足場にして、カーテンを首に巻き付けようとする。
何度か引っ張り確認する。強度がかなり心配だったが……子供の体重ならなんとかなると思って椅子から一歩進む。
グッバイ、異世界。
数秒すら宙に留まることもなく、軟弱なカーテンは破れてしまい床にそのまま衝突する。
「がはっ、いだいいぃぃ」
額を強打したことで大きな声を出してしまう。
死ぬのはいいけど、ただ痛いだけなのは勘弁してほしい。
痛みで暴れ、体から離れないカーテンに悪戦苦闘を繰り広げているところを……駆けつけたメイドに見られる。
「あ……これは、その、寝相が悪くて」
などという嘘はあっさりと見破られ、メイドの呼びかけに外にいた騎士がカーテンを剥ぎ取られそのまま抱きかかられる。
当然暴れようとしたが、騎士からの無言の重圧により目をそらすことしかできなかった。
騒ぎに駆けつけた父親の指示で、私は別室で監禁される。真夜中だというのに椅子にただ座っているだけ。
『アストレイナから絶対に目を離すな!』
あの言葉に騎士は敬礼をしてその職務を全うしている。しかし、忠誠心を体現するのはいいとしてもこの状況はただ居心地が悪い。
私の四方に騎士が立ち、部屋の入口、窓にも騎士が立っている。
用意されていた、紅茶に手を伸ばすだけでも全員の視線が向けられる。
あんなことをしでかしたので監視なのは分かるのだけど……人口密度が高い。あと、無言の圧力と視線が突き刺さる。
ここで暴れようとしても、簡単に取り押さえられる。
命令を下したとしても、聞き入れてくれるはずもない。
一体私にどうしろっていうのよ……
「アストレイナ様、大変お待たせしました」
騎士たちが居るのにもかかわらず、臆することもなくやってきたメイドは私に笑顔を向けている。
この場所に来てから多分一時間と少しぐらい。
ここを出るように促されるが……ニコニコとしているだけで、どう反応すればいいのかわからなくなってくる。
「とりあえず付いて行けばいいの?」
「はい」
部屋から出ると、騎士たちがずらりと並んでいる。
左には騎士の壁があり、右にしか進むことはできない。階段も塞がれ、逃げることを考えることですら無理だと悟るしかない。
「こ、これは……」
「頑張りました。それと、今日から私がアストレイナ様の専属メイドのシーラと申します」
騎士たちは部屋の外で待機になり、私とシーラだけが部屋に残される。
あの失敗により、当然のことながら長いものは全て撤去されている。窓にはカーテンもなく、天井付きのベットも片付けられている。洋室にも関わらず床の上に脚のないベッドが置かれる。
「それでは、おやすみなさいませ」
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