第20話

 彼女はシャワーを浴びているだけのはずなのに中々上がってこなかった。


 俺がさすがに心配になってきて様子を見に行くか迷い始めたところで彼女がお風呂から上がった音がした。


 その後、リビングに来るとなぜか俺の隣に座ってきた。


 あんなことがあった後だからか隣に座っている彼女のことを意識してしまったのは仕方ないことだろう。


 少し上気した顔に、このシャンプーというかお風呂上がりの匂い...

 

 そんなことを俺が考えていると彼女は俺の方に突然しだれかかってきた。


 俺はびっくりしてしまい、体を震わせた。その俺の様子を彼女に笑われた俺はなんともいたたまれない気持ちになった。


「風呂入ってくる」


 俺はそう言って、彼女の肩をどかし撤退するのがせいぜいだった。


 その後、風呂で軽く頭を抱えてからあがりグダグダしながら二人で夕飯を作り終わったころには大分精神も落ち着きを取り戻し、ほぼいつも通りにお互いに接せられるようになった。


 そして、夕飯を食べ終わると、俺はまだ寝るには早い時間にもかかわらず、欠伸をもらしてしまった。


 聖女様はそんな俺が心配になったのか声をかけてきた。


「蒼人くん?」

「ああ、ごめん」

「寝ますか?昨日遅かったですし」


 俺は一瞬考えてから返事をしたが、話している途中で大事なことを思い出したので彼女に尋ねた。


「...明日学校あるし寝ようかな。あっ、そういえば明日昼ごはんどうする?」

「どうするとは?」

「いや、俺朝早く起きて弁当作るから、もしよければ畑山の分も作るけど」

「ううん...。じゃあ私も起こしてくれませんか」

「...オッケイ。じゃあ寝るわ。おやすみ」


 俺がそう言い、薬を飲みに行こうとすると彼女に腕をつかまれた。


「私も寝るのでちょっと待っててください」

「いや、大丈夫」

「逃げちゃだめですよ」


 俺は彼女の有無を言わせぬその言葉で逃げることはやめたが、一つの結論にたどり着いた。


「なぁ、やっぱり昨日俺と手繋いで寝たの、俺のためだろ」

「さぁ、どうでしょうね。あっもういいですよ」


 彼女は小悪魔のように笑いながらそう言うと俺に手を差し出してきた。


 俺はそこで抵抗をすることなく、ありがとうと言い彼女と手をつなぎ、電気を消して布団に入った。


 そしてまもなく眠りの淵に沈んでいった...。



 翌日、俺は起きると先日の朝と同じことを繰り返し、彼女を起こそうとした。


 ただ、俺は彼女の安らかな眠り顔を見て、それをやめてキッチンに一人で向かい、二人分の弁当を作り出した...。


 

 その後起きてきた聖女様は俺の行動に静かに蒼人くん?なんで起こしてくれなかったんですか?と怒りを示し、しばらく俺は謝り倒すこととなった。


 なんとか怒りを鎮めさせて、朝ごはんを食べ終わると玄関に俺らは向かった。


 そこで聖女様は靴を履いても中々出発しようとしない俺に疑念を抱いたのか尋ねてきた。


「あれ?蒼人くん、学校行かないんですか?」

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