第15話
彼女は俺が泣き止むまで優しく俺の背中をさすり続けてくれた。
俺は泣き止むと同時に唐突に物凄い羞恥心が俺を襲った。俺は反射的に彼女から距離をとった。
「蒼人くん?…やっぱり迷惑だった?」
俺が離れたところで不安になったのか、彼女は少し申し訳なさそうな声でそう言ってきた。俺は慌てて首を振りながら言った。
「いや、そういうわけじゃない。ただ…、ちょっと恥ずかしかったというか…」
「ああ…それはすみません…」
「いや、そうじゃないんだ。ありがたかった。というかごめんな。こんな時間まで俺なんかに付き合わせちゃって、ちょっ痛い痛い」
聖女様は俺の頬を再び引っ張り出した。ただ、先程とは異なり、強めになっていた。
「今度から蒼人くんが自分のこと貶したらもっとブニョブニョするわよ」
「はい…」
ブニョブニョ…俺は色々と思うところがあったが、大人しく頷いておくのに留めた。
「あと時間に関しては大丈夫ですよ。明日、日曜日なので好きなだけ寝られますし」
「それでもな…」
「はいはい文句言わないの。ううん…じゃあどうしますかね…」
「何がだ?」
「蒼人くん、一人じゃ薬を飲まないと寝られないんですよね」
俺は何故だか嫌な予感がした。
「そうだが…」
「じゃあ、一緒に寝ましょう!」
「却下」
いや、万が一のことがあったらどうするんだ。彼女は不満げに俺のことを指で突きながら言った。
「なんで駄目なんですか?いい案じゃないですか」
「考えてみろって。未成年の付き合ってもない男女が一緒に寝るとか色々とまずいだろ。あと、俺は男だぞ。万が一、何かあったらどうするんだって」
「まずくないです。私は蒼人くんのお世話にきたんですから。それに、蒼人くんのことを信頼していますから。あと、別に…こn//…ですし、最悪、責任をとってもらいますよ」
彼女は話している途中である部分を何故か顔を赤らめて小声で言っていたので、その部分を俺は聞き取ることができなかったが、とりあえず俺はツッコむ。
「まぁ、分かんないけどとりあえず根拠のない信頼をされていることだけは分かった。あと、最悪の場合って…本気で言ってるのか?」
「ええ、というより蒼人くんが今まで私のことを気遣っての行動しかしてませんからね。そんなことを、私が嫌がるかもしれないことはできないんじゃないんですか?」
「…いや、例えそうだとしても万が一のことが」
俺はなんとでも回避しようと抵抗した。俺がそう言うと聖女様はこう返してきた。
「じゃあ、分かりました。私も実は一人じゃ寝られないんです。一緒に寝てくれませんか?」
「嘘をつくな」
「嘘か分かりませんよね」
「…」
確かに、俺は聖女様が一人で寝ているのを見たことがなかった。
「私は蒼人くんが首を縦に振るまで諦めませんよ」
「外に放り出すぞ」
「出来るならどうぞ」
俺が出来ないと聖女様は舐めているな。そう判断した俺は放り出そうとしたが体が動かなかった。
こんなことをしていても時間がただただ経っていくだけなので俺は折れざるを得なかった。
「分かったよ。一緒に寝てもいいから一つだけ教えてくれ。なぁ、なんでそこまでして俺な…俺のことを気遣ってくれるんだ?」
俺のその問いかけに彼女は満面の笑みで答えた。
「それは蒼人くんが蒼人くんだからですよ」
「?」
「…まぁ、いつか分かる日がきますよ。ただ、その時は…」
彼女は最後まで言い切ることなく語尾を濁してしまった。
俺は彼女が濁した部分について聞くことも出来たが、そこに彼女が話したくない理由があるなら、聖女様がいつか分かる日がくると言っているので、わざわざ負担をかけてまでも話してもらうのは申し訳ないなと思い、あえてそれ以上追求することはなかった…。
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