第12話
俺は聖女様の提案にストップをかけた。
「ちょっと待ってくれ。それ、難しすぎないか?」
「私たちならできます」
「その根拠のない自信は何だよ…」
「いや、それは私たち、その…こn…//」
「ん、何か言った?」
よく聞こえなかったので俺が尋ねると聖女様は慌てたように首を激しく横に振りながら言う。
「いえ、なんでもないです。とにかくやってみなきゃ分からないでしょ!」
「はぁ、そうか?」
俺は渋々であったが協力して皮剥きを始めた。
そして、1分後。
「いや、だからなんでできる?」
何故か、聖女様の無茶苦茶な提案は成功してしまった。聖女様は何故か顔を赤らめながら言う。
「やっぱり、私たち二人なら…」
「いや、どういうことだよ。今回はたまたまだろ。はいはい、鍋に入れて入れて」
予想外のハプニングで時間をとってしまったため、少し時間を押し始めていたので俺は彼女を少し急かした。
「ん、こっからは適当に炒めて、煮るだけだから大丈夫。手伝ってくれてありがとう」
「もう少し見てます」
「…見てても何も出ないぞ」
「いや、勉強になるので」
「…そうか?」
別に見られていても減るものでも困るものでもないので俺は曖昧に返事を返して、カレーの続きを作った。
作り終わった俺は聖女様に声をかけた。
「オッケイ。もうこれで後は食べる前に煮込むだけ。…それで忘れてたんだけど、畑山って湯船に浸かりたい?」
「別に、私は浸かっても浸からなくてもどちらでもいい派ですが…。蒼人くんに任せます」
聖女様の家では湯船に浸かっていたり、某国民的アニメのヒロインの影響で、聖女様というか女子は毎日湯船に浸かる派が多いのかと考えていたため、少し驚かされた。
「あれ、そうなんだ。じゃあ、とりあえず冬になるまでは入らないってことでいい?」
「ええ。特に構いません」
「じゃあ、いつでも好きなときにシャワー浴びちゃっていいからな」
俺はそう聖女様に伝えるといつも通り戸棚から線香を出し、キッチンを出て、両親の仏壇のあるリビングにむかった。
何故か聖女様が付いてきたので、俺は振り向いて彼女に尋ねた。
「…なんで付いてくる?」
「…駄目でしたか?」
彼女は少し申し訳なさそうな声で言ってくる。
「別に駄目ではないけど…」
「その、線香…、亡くなられたお義父さま、お義母さまに、ですよね」
ん?心なしか彼女がお義父さま、お義母さまという意味でおとうさま、おかあさまと言っているように聞こえたが…。いや、きっと俺の気のせいだろう。俺はそう判断して、そこには触れずに返事を返す。
「ああそうだけど…」
「じゃあ、挨拶をしておきたいんです。…これから蒼人くんに長いことお世話になるんですから」
俺のことを世話にしに来たんじゃないのか?あと、長いことって何だよ。俺はその発言からふと新しい疑問が浮かんだため彼女に尋ねた。
「あれ、そういえば、いつまで畑山って家にいるかんじ?」
「ご迷惑でない限りと言いたいところですが…、おそらく私が満足するまでですね」
いや、それっていつだよ。俺はそう聞こうとしたがその言葉を慌てて飲み込んだ。何故か、彼女の顔がいつになく真剣な顔をしていたからだ。
まぁ、どうせすぐに飽きるだろ。…飽きるよな?少し不安を抱きながらも俺は一旦仏壇といっても棚の上に写真と仏具を飾っただけの質素なものだが、に向き合い、線香に火を点けて話し始めた。
「昨日は線香あげられなくてごめん。それで、今日は報告があるんだ。父さん母さん。今日から畑山さんっていう、今俺の隣にいる女の子と訳あって一緒に住むことになった。まぁ、別に同棲とかそういうわけじゃないけどよろしく。…畑山話すならいいよ」
「あっ、どうも初めまして?お義父さま、お義母さま。畑山白紅と申します。日頃より蒼人くんにはお世話になっております。これから蒼人くんと一緒に生活させていただくことになりました。長いお付き合いになると思います。不束者ではありますがよろしくお願い致します」
彼女はそう言い締めくくると俺を真似て、黙祷をしていた。
俺はそれを横目で見ながら思った。その…、やっぱりなんか色々と不安だな…。
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