第6話

 そして、夕飯を食べ始めてからしばらくすると、聖女様のお祖母さんのしげ子さんが俺に訊いてきた。


「どう?外崎くんの口に合うかしら?」

「あっ、はい。美味しいです」

「ね。だから言ったでしょ。美味しいって」


 俺がしげ子さんに対してそう答えると聖女様が俺に絡んできた。


 ただ、これは本当のことだったので俺は素直に認めた。


「ああ」

「それなら良かったわ」

「…」


 いや、気まずい。会話が続かない。


 なんとか会話を続けさせようとしげ子さんが更に訊いてきた。


「そういえば、外崎くんの下の名前の『あおと』ってどう書くのか教えてもらっても良いかしら?」

「ああ、ええっと…普通の空の色の青じゃなくて、草冠に倉って書いた蒼に、まぁ普通に人って書いて蒼人ですね」

「…良い名前ね」

「あっ、ありがとうございます…」


 わざわざ、しげ子さんが話しかけてくれたが、残念ながら俺のコミュニケーション能力の圧倒的な欠如で会話が続くことはなかった。


 しばらく、皿と箸の当たるかちゃかちゃという音しか聞こえなくなった。この「俺」という異分子が混じったことにより壊れてしまった空気から逃げるために俺はさっさと食べ終えると言った。


「ご馳走様でした。美味しかったです。」


 そう言って、俺がシンクに皿を置き、洗おうとすると、それを阻止するようにしげ子さんが声をかけてきた。


「外崎くん、置いといて頂戴。まとめて洗っちゃうから」

「いや、でも…」 

「お風呂湧いてるから先に入っちゃって」

「いや、俺は…最後でも…、そもそも着替え持ってきてませんし」

「お客様に先に入ってもらいたいし、着替えは大丈夫よ。一応あるから」

「…ありがとうございます。じゃあ、先にいただいちゃいます」


 俺がそのしげ子さんの言葉に甘えて、お風呂場に向かうと何故か聖女様も付いてきた。


「あの、なんで聖女様も?」

「いや、タオルとか出さないと」

「ああ…」


 洗面所に行くと聖女様は俺にタオルを取って渡した。


「ありがとう」

「ん」


 聖女様はそう言って洗面所から出て行った。


 俺はそこで服を脱ぎ、風呂に入った。



 そして、俺が風呂から上がると着替えが置いてあった。


「サイズぴったしだな」


 俺がその後リビングに行くとそこに聖女様がいた。


「蒼人くん、うん、ぴったしだね。似合ってる。良かった」

「…ああ、ありがとう」

「うん。じゃあ、私お風呂に入るから、おやすみ」


 そう言って聖女様はお風呂場に向かって行った。


 俺はそれを見て、一旦台所に向かい、そこにいたしげ子さんにお風呂いただきました、ありがとうございましたと言うと今日俺が過ごす部屋に向かい、再び机に向かった。


 そして、気付くといつの間にか1時を回っていた。俺は尿意を催したため、お手洗いに行き、出たときにたまたま聖女様のお祖父さんの亘さんと会った。


「おお、まだ起きてたのかい」

「…ええ、ちょっと色々ありまして」

「…寝れないのかな?」

「…まぁ、そんな感じです」

「それなら、ちょっと時間いいかい?…これからと白紅について話したいことがあるんだが」


 俺はそれを了承した。


「…ええ」

「じゃあ、一回付いてきてくれ」


 俺は歩いていく亘さんに付いて行った…。

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