第101話 着想とイメージ-ネタ探しとタイプ?-

 ここ最近、大昔に読んだ雑誌記事などの内容を思い出していた。面白い接点がいくつかの記憶ごとにあったので、それを自分の中で結びなおす。


 それはプロの作家さんのネタ探しの方法だった。いくつかのパターンで見てみると面白い。


 例えば❶Aさんは小説をただひたすら読み続けるとそこからヒントをもらえると対談で言っている。❷Bさんは小説は全く読まず、趣味の本を読み続けるそうだ。❸Cさんは古本屋の100円棚からがばっとランダムに取って、それを買ってきて読みあさるのだという。きっと探せば他にももっと違うパターンでネタを仕入れている人は多いと思うのだが、とりあえずここではこの三つを僕の恣意的な判断で、自己経験則に基づいて、自分に当てはめて分析してみよう。


❶小説をひたすら読み続けるタイプ

 このタイプ、昔、十代の頃の同人誌のメンバーだった人にそこそこいたなあ、と懐かしい気分で思い出す。そういった人たちは、大体人様の文体が気になる人が多い。だから感想を言いたがる。僕とは真逆だ。そしてカテゴライズをするのが上手だ。雰囲気としては、大正から昭和中頃までの作家の性質気質に似たタイプと思う。文士とかいわれていた時代の作家さん。そしてそれに魅せられたアマチュアの方々。

 このタイプはいわゆる学校や予備校で勉強として教わる文学の信奉者とも受け取れる。レトリックと教育の賜物であり、感情や言葉、句点の意味など、受験のテクニックでも出題される知識を身につけ、覚えたものを武器にしているので、理論にも強い。また当時の小説を書き始めた人の大部分はスタート時はこんな心境で始めるのかなあ、とおぼろげに僕は思う。今はラノベとかあるから当時とはアプローチの仕方が違うと思うけど。

 僕も最初の詩歌は高村光太郎、石川啄木、中原中也、室生犀星、島崎藤村などに感銘していたずら書き程度に書いたなあ、と思い出す。

 俯瞰して考察すると、あくまで僕の独断なので信憑性には欠けるが、まとめるとAさんの様な人は真面目なタイプで、文体などの技巧に興味がある古風な考えをお持ちの物書きなのかな、と思う。かくいう僕も十代から二十代の半ば頃は、わずかだが一部でこういう読書遍歴を持っていた。

 

❷小説の本はあまり読まずに実用書や旅行ガイド、趣味の本などを読むタイプ

 大雑把にだが今の僕はこのタイプのように思う。歴史の本、二次資料、楽器の本、オーディオの本などをパラパラとめくるし、そういったサイトを横断して記事を読む。現在の拙作を読んでくれている人は、そうだろうな、と納得して頂ける筈だ。楽器を答え合わせに使ったり、設定の背景には歴史現象や神話などもある。まさに僕はこのカテゴリーの状況下なのかも。文芸作品を除けば、心情や生活模様のみで物語を進めるのは、よほどの実力がないと単調になるのと、共感を得られない部分が多いために僕はあえてこういうネタを練り込む。ここに背景舞台の嗜好性が加わると読んでみようかなと言う衝動に繋がると言う人も多いからだ。

 例えば地域、趣味、年齢などの個人の特性・嗜好性がその物語を選んでもらうための共感アプローチへと繋がる。

 青春小説なら同世代の若者ならちょっと読んでみようかなという若者層が感心を持つ嗜好性。そして舞台背景で地域性を前面に押し出すもの、例えば舞台が横浜なら神奈川県の人や旅好きならその地域に興味があって覗いてみようという衝動に駆られる。京都好きなら山村美紗とかね。自然やアウトドア好きなら趣味の共通話題に関心、興味があり面白くなると言った具合だ。これは小説よりも最近マンガに多くなってきた。『ゆる▲きゃん』、『のだめカンタービレ』、『けいおん』、古くは『美味しんぼ』、『釣りキチ三平』、『サーキットの狼』などの趣味、嗜好性が共感を呼ぶ作品だ。

 自己作品に反映するか否かはさておき、この凝り性のタイプはSF書きなどに多いと勝手に僕は決めつけている。その根拠は長くなるのでここでは割愛する。


❸ランダム派

 これねえ、僕ムリ(笑)。頭の出来が違うんだろうな、と僕は負けを認めるタイプ。でもアマチュア物書きでこのタイプも結構お会いしたことある。そして悔しいことにこれやっていると博学になるからオールマイティな小説家タイプなんだわ。泥臭いネタから高尚なネタまで何でもござれ、で、夜の町の話から清貧の感動家族逸話まで書けちゃうの。しかも完成度が高い。

 僕が知る限り、SF書きにはあまりいないタイプだった。そして推理やミステリー、ルポルタージュ小説なんかを書く人に多いと勝手に僕は思っている。松本清張さんとかは、こんなだよね。事件や真実を追究して、社会や世間を多くの現象と考察で切っていく感じ。かっこいい!


 ということで、今回は僕の独断なので、信憑性は全くないけど、経験則でいったネタによる作者のタイプ分けを画策してみた。えー? と思った方、大丈夫、あくまで僕の恣意的な、体験と憶測で仕上がっている感想なので一私論としてお読み頂ければ幸いである。他にもきっとネタから作るタイプというのであれば、無数のタイプがあるはずだ。三つのわけがない。

 そして自分の出したカテゴライズに自分を振り分ければ❷かな、と言うのだけは信憑性がある。自分のことなので確信はある。それ以外は経験則なので、人によってそのバランスは変わるのだ。ではまた。

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