第99話 マンガの話Ⅳ-『トキワ荘』とはっぴいえんど-
『トキワ荘』という言葉が一人歩きしたのは昭和五十年ごろだった。
藤子不二雄さんが『まんが道』という自伝を書き始めて、拾い読みで知ったのが初見だったと思う。昔、僕は二十代の半ばに数年間豊島区民だった時期があるのだが、その時椎名町、東長崎に行こうかと思ったことが何度かある。ただしもうトキワ荘は壊された後であるため、止めてしまった。
トキワ荘はもともと手塚治虫さんがかくれ書斎として使っていたと聞く。それがいつしか手塚さんと寺田ヒロオさんの目に敵った人間を住まわせるマンガ家の梁山泊なんて言われるようになった。正直僕は寺田ヒロオさんの世代ではない。なのでこの方のまんがは詳しく存じない。
藤子不二雄さん、石森章太郎さん、赤塚不二夫さん、つのだじろうさん(通い)、水野英子さん、鈴木伸一さん、そして石森さんと赤塚さんのアシスタントをやっていた方々も晩年は住んでいたと聞く。ここは僕のド・ストライクの時代のマンガ家さんだ。
ドキュメンタリーなどでは、偶然に才能のある人たちが集まったなどと謳われることもあるが、それは少し違うと僕は感じる。もともとマンガ家のエリート集団なのである。
その根拠はまとめ役の寺田ヒロオさんの掲げた掟
「・『漫画少年』で寺田が担当していた投稿欄「漫画つうしんぼ」の中で優秀な成績を収めていること。
・協調性があること。
・最低限、プロのアシスタントが務まったり、穴埋め原稿が描けたりする程度の技量には達していること。(wikipediaより引用: https://ja.wikipedia.org/)」
に敵っている者で無いと入居できなかったのだ。
だから才能のある人が集まって、なるべくしてなったプロ集団の先駆けなのである。アメリカのハリウッドの映画や、ニューオーリンズやナッシュビルのジャズ、フランスのシャンソンなど芸術に直に触れるために、趣味という趣味に没頭して、世間で言う無駄な知識の会得に精を出している。その姿はレコードマニア、映画マニアの宮沢賢治や太宰治のように感じる。またモノ好きなことに、三島由紀夫は武道館までビートルズ来日公演を見に行っている。そういった文士は小説の肥やしのための芸術知識取得なのだが、それと同じ事をマンガの世界でも彼らはやってのけているのだ。そして学んだことはただ楽しむのではなく、みなマンガの中にちゃんと活きているので、丹念に読み込むとハリウッド作品のエッセンスが溶け込んでいたり、話題としてのジャズやシャンソンが出たりしているのだ。
話を戻して、僕の小学生時代は、「天才バカボン」、「ひみつのアッコちゃん」、「サイボーグ009」、「猿飛えっちゃん」、「ドラえもん」、「(新)おばけのQ太郎」、「花のぴゅんぴゅん丸」などが次々とアニメーションでテレビ番組になった時代なので、どっぷりとこのマンガ家さんたちの世界に浸った世代なのだ。
幼少期の自分の日常世界に存在したマンガの生みの親であるマンガ家さんの居住地ということで当時は凄く気になった。勿論、スタジオゼロの生み出した合作、「おばけのQ太郎」が最高傑作なのだけど。
スタジオ・ゼロはトキワ荘にいたマンガ家さんたちが一堂に会して、一緒に作ったアニメーションのプロダクションで、実験盤アニメーション作品「おばけのQ太郎」は、藤子不二雄さんと石森章太郎さんがキャラクターを描いて、赤塚さんやつのださんは自分の作品のキャラクターをモブで出したり、背景を描いて、鈴木伸一さんが監督・総指揮・企画をやっていたという。マンガ版の方を見ると一目瞭然で、正ちゃんやよっちゃんは石森さんのお馴染みの絵柄だし、チビ太や六つ子らしき図柄は赤塚さんだとすぐに分かる。
その後オバQは藤子不二雄の単独作品となって、学習雑誌などに連載され、藤子不二雄がコンビ解消で藤子・F・不二雄名義のクレジット作品となったそうだ。なのでオバQの歴史を単行本で読書すると、藤子不二雄ⓐさんだけでなく、石森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろう、鈴木伸一などの豪華なマンガ家の
僕はこの現象を鑑みるといつも、日本のロックポップ界のはっぴえんどファミリーとダブって重ね合わせる。すなわち細野晴臣さん、松本隆さん、大滝詠一さん、鈴木茂さんを軸に、その第二世代たるYMOの坂本さんや高橋さん、そしてミカバンドの松任谷正隆さん、高中正義さん、トライアングルの山下達郎さん、伊藤銀次さん、佐野元春さん、杉真理さんなどの一門とのオーバーラップである。
片やマンガ、片やポピュラーミュージックの売れっ子ファミリーと言ったところだろうか? いずれにせよ良い時代だった昭和の素晴らしい
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