第92話 冬の日の満月かな?

 それにしても寒い。こうも寒い日がぶり返すと数日前の夏日は何だったんだろうという記憶が蘇る。

 昼には久々即席麺を作る。実は結構、いやとても大好きなのだが、野菜をたっぷり入れて、スープの粉を半分以下にして作ることを心がけている。以前に健診の機会に担当のお医者さまに塩分を控えることを言われてから、もう十年以上そうしている。食べるとナベ料理同様身体が温まるのである。


 昨日は知人のコンサートに行ってきた。おそらくまたしばらくは行けなくなるだろうけど。演目ではラヴェルのソナチネ、ショパンのポロネーズ、シューマンの幻想曲などがお気に入りだった。一番はラヴェルだった。印象派のなんとも奇妙なメロディはドビュッシーも含めて、現代のフュージョンに通じる部分があり心地よい(個人的感想)。正統派はやはりロマン派のショパンとリストが良い。

 おきまり、いつもの最後尾の席でお邪魔してきた。隅っこで大人しく聴いて、さっさとお暇するに限るのだ。これが自分の立ち位置である。あちらから話されたら言葉を返す程度が僕にはお似合いである(笑)。お調子者のように率先して行く人にはなりたくないというのが本音だ。話すと馬鹿がバレる。ははは(大笑)。

 帰り道はあの夜と同じ場所で満月が夜道を照らしていた。ツキヨミさまに感謝、かな? 再始動のあの夜を思い出した。さらなる躍進に繋がれば良いと感じる帰り道だった。


 さて本題。なんか久しぶりに『時神と暦人こよみびと』でがのっている。ここ昨今ではあり得ない状況。このところあの作品と対峙すると停滞気味だったのが嘘のようだ。今回は二万字から三万字程度の作品に仕上げるつもりである。「暦人」は各話それくらいに収めておくのがいつものこと。

 今回は設定とプロットに一部だが『ピグマリオン』、『妖怪人間ベム』と『竹取物語』と『御伽草子』にインスパイアを受けたような部分が入った感じだ。相変わらず古い作品に心を奪われている。古いコンテンツも包み紙を変えれば、現代風の楽しい創作の源泉と化す。


 付喪神つくもがみが活躍するという回で、夏見と栄華の新婚当時のエピソードとして書いている。一点物で、今回はエピソードゼロに入れるのだが、いずれは移動して「御厨に流れる時間物語」に入れるつもりだ。今はコンテスト参加でそのファイルは触れない、動かせないのである。よその媒体は今のところ予定通りそっちに入れるつもり。

「暦人」のキャラの一つとして登場させ、取り上げるのがこの「付喪神」。

「付喪神」に関してはいくつか解釈もあるのだが、「つくも」の語源は「九十九」を当てることが多い。ツクは「着く」ないし「付く」、「就く」で、モは「百」である。つまり百に辿り着くという状態を表す意味があるため「九十九」なのである。そして百年経って道具に命が宿るという部分で、妖怪とも、神とも言われている。僕は神のほうの視点で自作品内ではキャラクターを立てている。

 もともと神道には「新年事始め」という十二月十三日ごろの行事があり、芸妓や芸術家、文筆家などが一年のお礼を込めて道具を掃除したり、丁寧に扱ったりする慣わしがある。楽器、茶道具、華道具や、筆、硯から鍋釜、農機具、お針道具などといった仕事道具や家財道具に感謝を捧げる日だ。今では大掃除スタートの日とされることも多い。僕がいそいそと十二月になるとギターの弦を換えたりすることが多いのはそういう事に由来する。そして弦を換えないときは、掃除をしてあげる。


 過去には、そんな楽器を敬う、あるいは仲良くするという部分でフランソワというプレイエル社のピアノの妖精を付喪神としたり、おしゃれのアイテムとして、お雛様にみられる、平安から続くかんざしやバレッタに似た女性装具、金釵子きんさいしの付喪神ミヤを登場させている。

 これらは付喪神ごとにその特性も異なり、見える形状や実体も違っている。今回の物は、ジュピターが異国の地で百年を迎えたグランドピアノに心が宿る機会を与えたという設定で物語が始まる読み切り作品を目指している。


 なんとか数週間のうちにお披露目と行きたいものだ。それでは寒さがぶり返しているので皆さんはお体ご自愛の程、春に向けてラストスパートと行こう。♫もうすぐは~るですねえ、と鼻歌でも歌おうか。ではまた。


  


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