第82話 着想とイメージ-7パターンの女性登場人物編-

 いよいよ本年もあとわずか。本年最後のこのエッセイ記事。

 二十五日が大安だったので、この日に玄関の新年飾りと小さな鏡餅を飾った。一夜飾りというのは良くないらしく、今年は大晦日が大安なのだが、それ前はというと二十五日になるからだ。


 では本題。久々にこのエッセイの本業記事である小説記事(笑)。

 プロット先行型の僕の描いた拙い物語の中で、キャラクターについての自己分析。話の流れで必要になる性格というモノがある(今はキャラ先行型が主流であり、あまりプロット先行型の人はみない。古いのかな?)。

 その代表例をちょっと七つに分けて分析してみた。お暇な方はお付き合い願いたい。一応その作品を読んでいなくても分かるように説明は入れてあるので、お茶でも飲みながらゆっくりと登場人物考察をお楽しみ頂きたい。キャラ先行型の作者さんほどバラエティーには富んでいないが、プロット先行型でもキャラが確立していないとお話が進まないし、展開しないので、そこそこキャラ付けは必要である。

 では見ていこう。


❶神田みさき(かんだみさき)・多賀御美希(たがおみき)・三馬亜佐美(さんまあさみ)・浜北芽衣(はまきためい)

 みさき。冴えない中堅出版社社員であるアラサー紀尾井くんの出張帰りを待つ事務の女の子。いつもニット帽を被って電卓を片手に手際よく伝票を整理して、五時になると荷物をまとめて一目散に退社するというのがイメージだ。みさきは『かんなづきの夜』の後半に陽子さんたる神さまに縁結びをしてもらった紀尾井くんのデートの相手である。

 僕の中ではこのみさきと「おとぎ話は表参道で」の多賀御美希はワンセットな人物だ。OLさん同士、仕事は出来るが異性との出会いのない、ご縁も薄い存在。そこで神さまの思し召しが顕在化するといった感じだ。

 美希のほうは、気まぐれなみさきと違い、シンデレラストーリーの渦中で、御曹司の彼を射止めるという少々古風な少女マンガテイストの展開になっている。前者のOヘンリースタイルよりは親しみやすい展開の物語である。

 僕の小説の中では、OLさんは結構な比重を占める設定である。僕の発想の土台となっているものの一つ、星さんや眉村さんなどのショートショート小説の舞台設定がサラリーマン社会や会社生活が多いので、それが起点になっているためと思う。


❷明治美瑠(めいじみる)・細波映磨(ささらなみえま)・角川栄華(かどかわえいか)・鯖江由佳(さばえゆか)・帆立愛海(ほたてあいみ)・河床葉萌(かわどこはも)

 もっと多いのかな? なんて思っていたが、思ったよりも少なかった楽器係女性ヒロイン。僕のプロット展開で楽器で進む話が多いので、話の数だけこの手の登場人物は増える。挙げてはいないがバイプレーヤー的な存在で、フィドル奏者のお駒さんや和琴やチェレスタ奏者の長慶子の時巫女などもいる。

 角川栄華は別格だが、他は皆これから演奏家を志すという登場人物が多い。ブーたれ系の映磨、夢追い人の由佳や葉萌、チャンスをモノにした愛海などだ。

 基本僕は音楽については雑食性なので、ポップスからロック、フォーク、ジャズ、ブルーグラス、カントリー、ラグタイム、クラッシックとなんでも聴いている。ただお気に入りは、ジャンルと言うよりも生楽器のナンバーである。アコースティックな響きがある世界観を小説の題材にはしている。ボーカルの有無とか、ヒット曲かどうかと言うのはあまり関係ない。気に入ったらそれが題材になる。そこでいろいろな楽器が登場すると言うわけだ。音を聴くのはピアノ、自分が弾くならギターというのは、このエッセイでも何度かお話ししてきた通りで、それが作品にも活かされていると自己分析している。



❸真名板戀(まないたこい)・朱藤富久(あかふじふく)

 現代女性の代名詞、自堕落系女性である。自分では何もしないし出来ないけど棚からぼた餅を待っているタイプ。ある意味困ったちゃんである。そこが愛される要因でもある。人間の立ち位置って不思議だ。

 この手の登場人物を作るときは結構イメージから入る。おじさんの僕からしてもヘンテコな若者で奇抜さを持った衣装や性格を考えて構想する。どちらもアートな世界観でかっとんだ女性である。愚図る姿もほぼ一緒、ギャグマンガやコメディーの世界を飛び出してきたような登場人物である。表情もかっこつけずに描写してしまうので、蝶よ花よの扱いはしないキャラクターである。ある意味ヨダレ、はなみず、ずっこけなどは日常茶飯事で描写するし、擬声、擬音の連続で奇っ怪な人物に見えるように演出もされる。そんな扱いの二人だ。



❹神戸あおば(かんべあおば)・数田育美(かずたいくみ)・安香由里(あんこうゆり)

 クラス委員タイプやしっかり者のお母さんタイプである。少々奥手で頭でっかちなところも玉に瑕って感じだ。その白碧はくへき微瑕びかと世話好きの性格が重なるとこう言ったタイプのキャラクターになる。稚拙な男の子よりも一足先に大人になった常識の鎧を着た女の子で自尊心拡大形女性である。

 僕の作品にこのタイプが多用されるのは、三十歳ぐらいになるまでは、こう言う女性がいい女だった時代相があったからだ。僕より十歳以上年上の男性は、この手の女性に弱い。マンガの番長でも、偉いセンセイなどでもこの手の女性がいないと何も出来ないという設定の物語やマンガ、ドラマが多かった。優しく叱られたい感じ? 例えば大原麗子さんとかバカボンママとかかな? この二人並列して良いのか? (笑)

 それより更に十歳以上年長の人たちは色っぽい、都合の良い女性が「いい女」とされ、そんな性格に憧れることも多いようだ。例えるなら『ルパン三世』の峰不二子のような女性だ。

 委員長タイプに話を戻すと、自然にこの手の登場人物が書きやすかったことと、この手の人物を出すとプロットが組み立てやすかったという要因に行き着いた。なので必然的にプロットとこの性格の女性の登場が多くなった感じだ。


❺青空麻鈴(あおぞらまりん)・勘解由小路歌恋(かげゆこうじかれん)/杯佐和(はいさわ)

 ちゃっかり系というか、ジョーカー的な役回りというか、何でもありというキャラクターで考案されたのがこの二人である。これはおちょくりがいのある対象人物(相方)がいて成り立つポジションだ。麻鈴にはボケ役で探偵の逢野安間郎、歌恋にはフリ役の三井みずほというライバルがいて成立するキャラクターだ。

 よく思い浮かべるのが『トムとジェリー』、クレヨンしんちゃんならお母さんのみさえさんと、ドタバタ劇に必要な二人羽織を物語にしたちぐはぐ感である。他にもラムちゃんとあたるくんや刑事ドラマの『噂の刑事トミーとマツ』(例えが古くてごめんなさい)のような絶えず言い合い、絶えず取り合い、最後に優劣の決まる一撃でオチがあるというスラップステック風のコメディな感じだ。ラムちゃんなら電撃、トミマツなら「トミコ~」である。そんな愛情のある確執が面白い物語を導いてくれることが多い。


❻美濃加佐子(みのかさこ)・石鯛沙織(いしだいさおり)

 キャラ的に評判の良い二人。守ってあげたくなる女性だ。奥手にドがつくほどの生き方下手すぎという二人。沙織の兄もそれに近いので、兄妹揃ってという感じだ。加佐子は真面目な自分を変えたくてこんな風になっているので、若いとき、元は❹か❼のタイプだったのかも知れない。こういう女性キャラは物語上、その相手の男性キャラの立ち位置がつけやすくなる。だって当然男性は男気のある守ってあげるタイプになる。実際、加佐子を守った純夫、沙織を守った津真巳は明確に説明や心情を描かずともその性格を定義づけることが出来る。分かりやすい展開に運べるのだ。


❼紗弓えみ(さゆみえみ)・横溝美紗(よこみぞみさ)・青砥零香(あおとれいか)

 最後が僕の描いていて、楽しく嬉しい、しかも描きやすい女性のタイプだ。これらの女性は清楚、奥ゆかしい、健気、優しさを備えたタイプである。むろん栄華や美瑠もこのタイプに入るが、それが強調されているのがこの三キャラクターである。舞台女優、ミステリー好きの女子大生、町の食堂の女将さんと職業はバラバラだが、自分を前に出さず、でも自分をしっかりと持っていて、相手を気遣い、恩を忘れない、相手を傷つけないという、女性と言うだけで無く、人としてそうあって欲しい人物像を託している。だからほんのり、ほんわか系の物語に登場するキャラクターである。真面目で、感動や清涼感を求めるプロットには必要なキャラクターと僕は考えている。



 さて、たまには真面目に拙作作品の検証などしてみた。本年最後の回だし、これで締めくくるというのも良いモノだ。文学小説好きのおじさんには格好のシメだ。

 ご愛読下さっているみなさんも、技法やノウハウなどの創作ティップスを出した回は結構お集まり頂いているようなので、拙い、素人目線ながらのティップスで2023年のシメと参りたい。新年は予定では七日か八日当たりのアップを目指している。お暇な方、おじさんのどうでも良いお話を読もうという殊勝な心がけをお持ちの方は新年以降もお付き合い頂きたい(笑)。


-今年もこのエッセイにお付き合い下さりありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎え下さい。2024年があなたにとって幸せな歳になるよう願っています。ではまた来年!-


              SFとショートショートが好きな湘南のおじさんより













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