第75話 ホルストと占星術、ローマ神話についての雑話

 たまには自分で書いた古い文章を引っ張り出してくるアーカイブ記事でいいかな? らくしたいだけ(笑)。


 今回は天体と音楽のお話。かつていろいろなところ、一般向け講座などでお勉強して知ったこと。新しい惑星や太陽系の天体を発見するのって、天文台などの天体望遠鏡だと思っていたのだが、方法はそれだけでは無いことを知った。

 太陽や恒星などの質量と重力のバランスから、惑星同士の重力や軌道と自転や公転などの運動を加味した一定のバランス計算があるらしくて、そこで腑に落ちない数字から、この宇宙空間(座標地点付近)には他に何かが存在するはずだ、って目星がつけられるのだそうだ。同じように質量と重力のバランスの不均衡な場所からブラックホールも探せるらしい。知らない世界や分野というのはいくつになってもあるものだ。


 ポンコツおじさん故に、いまさらそのやり方や詳細を知りたいとは思わないが、それで発見されたのが海王星や現在は準惑星となってしまった冥王星らしい(現在は冥王星の外側にも同等の準惑星が数個発見されているそうだ)。改めて天文学者って頭良いなと感心させられたところの、たいして頭の良くない一般人が贈る天体の話(笑)。初出は2018年(一部改稿しています)。芸術とリベラルアーツを話題にはしているが雑談程度でお読み頂きたい。なぜなら一年一年、加速度的にポンコツ化しているおじさんは、自分のあたまの中身、脳みその劣化におびえながらの言語化するコミュニケーション生活を送っているからだ(笑)。


では今より頭が稼働していた頃の文章と行こう!


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 今回は欧州の文芸や創作の根底にある主題の源泉となる事が多いローマ神話と占星術(この当時は天体占星学という学問と民間信仰の狭間の最末期時代。科学の進歩とともに、天文学と分離して占いや文化に変化していった概念)のお話である。そしてなによりもこれは私的なエッセイとして軽い気持ちで読んで頂きたい。もっといえばおじさんの独り言である(笑)。


 最近、ラトルの振るホルストの作品『惑星』(1918)を聴いている。ホルストはたまに聴くといつも新鮮である。今回のものは音も録音も実にいい。クラッシック音楽の録り直されていくコンテンツは、日進月歩で聴くごとに面白くなっている。今回聴いているEMI盤(TOGE-11084)は冥王星だけでなく、小惑星まで入っている。どんどん増えていく(笑)。

 専門家に言わせれば、もともとこの曲は天体や天文学を意識した曲ではないらしい。わたしのような拙い者のお粗末な知識だが、本来ミュシャの『黄道十二宮』なども含めて、こう言った芸術的な主題の背景には、占いなども含め、おおよそ歴史的時代相が関係しているという専門家も多い。天文学領域ではないというこの創作のお話を対象物から検証していこう。

 私たちおじさんは、2006年に国際的な取り決めが変わる以前の教育で、冥王星を惑星の一部として教わってきた。『すい・きん・ち・か・もく・ど・てん・かい・めい』と小学生の時覚えたのが懐かしい。

 このホルストの『惑星』には冥王星がないのは、大きく周知されている(別の作曲家マシューズが後に付け足したけど)。1930年のトンボーによる発見がまだされていない時代の話でもあるのだろう。ただここで私の興味の対象、もっと重要なことは、地球が入っていない事である(『惑星』TOGE-11084 ライナーノーツp.18にも軽く触れられている)。これは母なる世界なので、視点であり、大地であり、土台だからである。そしてそれが占星術との関連を示唆しているとよく言われているらしい。占星術の星の要素は地球から見える天宮図であるからおおよそ地球は大地、地面としてしか見えない。

 子どもの頃に習ったように、天球、夜空の中で惑星は不規則運動をする。太陽公転の惑星には、地球の自転による円盤運動(現代の星の日周運動、天球の北極星を軸とした天体運動)が及ばないからだ。他の大多数の恒星とは異なり、勝手に円を描かず移動するのである。理科で大昔に習ったのを思いだそう。

 この状況から、ホルスト(あるいはホルストにインスパイアを与えた者)は占星術としての惑星をイメージしての創作だった。これはそれぞれの惑星に、副題が添えられているところからも容易に想像がつく。例としては金星が「平和をもたらす者」などだ。専門家がよくホルストについての文章を書いているのを見ると、わりと触れられることの多い話題である。ただしこういうお話は、音楽を理論で考える人々に任せておけば良い。音楽を聴くだけで、歴史に興味のある私は、こっちではなくて文化的時代相が気になる。

 たまに日本語の占星術というのを英語にするとどうなのだろうと小さな疑問にぶつかるときがある。ちょうど良い機会なので簡単にだが調べてみた。astrologyは辞書で占星術、horoscopeも占星術である。もうひとつ星占いにはzodiacという単語がある。同じ言葉なのにどうなのか。ただしzodiacには辞書を引くと黄道帯と十二宮図、歳月などの一周という三つの意味があり、十二宮図には金属の星座が彫られた円盤の絵図が載っている(『プログレッシブ英和中辞典 第四版』小学館 p.2160)。つまりこれ自体に占星術の意味は無い。きっと後ろにastrologyかhoroscopeの単語とセットで、黄道十二宮の占星術、つまり十二星座星占いになるのではないだろうか。それを省略してzodiacのみでもその意味で使うことが多くなったのかも知れない。推測に過ぎないが。

 ただそう考えれば、私が別アカで出しているミュシャの『黄道十二宮』の英名「zodiac」の十二円盤や西洋十二支といっている意見に正当性を少しだけいただけるかもしれない。

horoscopeはhoro-という語頭に意味がありそうだ。例えばhorolo-まで行くと、辞書を順に観察すれば、時計やその台座である時計盤や円盤の関連語に行き着くことが分かる。時間という「時の概念」だろう。

 空想してみよう。私たちは巨大な円盤を皆平等に頭上に持っている。天球だ。その天球は夜空になるとわかりやすくなるが、地球自転速度が一時間に十五度で(一日24時間の分割概念を刻まれていく時間という概念でも良い)、これに合わせて回っている。このことが通底概念全てのルールとなる。ここに時間という概念が存在するし、成り立っている。夜空や太陽が時を刻むのである。つまり地球が自転と公転することから時間という概念が生じたと考えるのが妥当だろう。換言すれば自転が24時間と公転が365日と言うことだ。ここから過去の優秀なひとびとは逆算して、一分や一秒という単位を発見したのかも知れない。宇宙の周期性のルールに私たちの社会は則って、時間概念とともに過ごしていることになる。その意味で天体と占星術と時間は大昔は背中合わせの学問だったのかも知れない。哲学概念で言えば、大もとは一緒の概念だったとも言えよう。

 肝心のhoroscopeは黄道十二宮や天宮図を意味するので、大空の太陽の移動する円盤と考える空想も成り立つ(同掲書 小学館 p.936)。やはり天体運動と黄道十二宮に行き当たる。どれも私の空論、勝手な推測の領域を出ないが、astro-にも-logiと-nomの接続する語尾があり、語彙や意味の枝分かれがある時点から存在したのだろうと考えた。ただしこの辺の言葉の解明も英語の専門家がもうやっているのだろうから、空想家の素人の出る幕ではない。

 ここで必要なのは占星術と天文学は似て非なるものだし、このホルストの作品がインスパイアされた文化的土壌を考慮したとき、やはり占星術からの主題と考えてこの音楽を聴くことが重要であると個人的には思っている。神話、すなわちローマ神話の神々と星々、そのお姿を思い浮かべて聴くのが私流ということだ。だから冥王星が入っていなくても問題にはしないし、小惑星もとくに興味ない。この結論を導き出したかったのだ。自己採点するなら、小論文の構成としては紋切り型の及第点ぎりぎりといったまとめの文章である。綺麗にオチも付いている(笑)。

 どうでもいい理屈を並べさせて頂いて、鑑賞するイメージやモチーフの再検証をここでさせて頂いた。こういう機会でもないと、ちゃんと調べようという気にならないためである(笑・ここで使う「ちゃんと」という言葉が、素人の探求ごときに対して適切かどうかは疑問だが)。「ここまで考えて、音楽を聴いても楽しくない」といわれると困るので、今回はたまたまであると言い訳をしておこう。『惑星』だからである。これが「マス」だったら魚釣りの話をしていただろう。

 今回は文化、概念、芸術のベースとなる歴史社会と時代相を面白い切り口から取り出すことが出来たのではないだろうか? 最後に占星術astrologyと天文学astronomyのこと。これらの両者、語尾のわずかな違いで、どこかの時代から枝分かれしたお隣同士の概念だったのかも知れない。しかし現在は全く相容れない概念である。狭間に科学という大きな壁があるからだ。素人の独り言である。こんなややこしいことを考えるよりもホルストを聴いて心を安らげることにしよう。ではまた。


 ラトルの惑星に関する盤紹介。ここにもシンセサイザー演奏者冨田勲さんの話題があるが、クラッシック音楽を雰囲気だけそのままにポピュラー、大衆に紹介する才能の持ち主であることが今更ながら知ることが出来る。尊敬に値する。

今回の紹介盤 https://www.hires-music.jp/mqa-classic4/

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