第58話 文豪と当て字と筆名
ペンネームを少しだけ変更。音は変わらず、表記のほうを漢字オンリーで、大昔の文豪の筆号みたいに変えてみた(笑)。本名に戻すでも良かったんだけど、四、五年ぶりにちょっといじってみるかと思い立った。特に運気とかは関係ないし、画数も見てない。ただ雅なほうが良いかな? っていう程度である。またひらがなで「まさみ」だと、女性と間違われることもあったのでこれなら男性、ないし中性的な筆号に見える。
本音というか、意図は戦前の文豪みたいなペンネームがいいな、っていう思いだけから来ている。そう、単におちゃらけているだけだ。なので文学青年きどってロマンや新感覚、星菫派、自然主義やらの文豪のような作品を書く気は全くない(笑)。
実はもう自分のなかでは、僕ごとき筆号を変えるメリットもデメリットもないと踏んでいる。まあ、何かの賞に引っかかっちゃったら、その時は、有り難いことなので、その時点での筆号に固定するつもりである。この先も現在のような仙人生活が続けばまた数年ごとに、寿命を全うするまで定期的に変えようかな? なんて思っている。前提として、元気なウチは小説をずっと書き続けるつもりであることが我ながら笑える。
さて、ちょっと横道。その昔、原稿用紙の時代に集まった人々の議論が思い出された。動画配信で似たような光景を見たためだ。若かりし頃の烏合の衆的な論客の集まりを思い出す。それを傍観して、ただ横で見ていた僕のどうでも良い話。若い人はまねしない方が良い(笑)。こういう議論は友達減ると思う(爆)。
どうしても過去に自分が受けた教育や勉強に対する信奉者同士の意見が割れることもあるだろう。自信を持つのは良いことなのだが、なんでも度を過ぎるとよろしくない。それで食べているのならまだしも、楽しい仲間内での意見の対立してまで自我を通すのは……。どこの社会にもある話だ。(しかも今ならワープロソフトが変換してくれるから、こんな意見交換は少ないかも知れない?)
例えばこんなケースだった。
「きく」、「みる」、「つく」などの漢字をどう当てるかで意見が割れているのを思い出した。後に出版界でサラリーマンなどやってて、この議論自体無意味で、そのへんはどうでも良いと知るのだが(笑)。
例えば「つく」。職につく、鼻につく、目につく、駅につく、という前には「に」という助詞があるが、その辺を考慮してどういう字を当てるのだろうという提案だ。
職なら目安は就職という熟語で、「就く」かな? と推測する。鼻につくは慣用表現なので「鼻に付く」一連で覚えるべきモノ。目につくはどっちでもよい「付く」でも「つく」でも、慣用表現だが辞書によってまちまち。ということは偉いセンセイがたでも意見の相違がある。
では駅に着くは、というと到着という熟語から「着く」が正しいかも知れない。
ではお手元に『広辞苑』がある方、ちょいと「つく」を引いてみて欲しい。付く、附く、着く、就く、即くは併記扱いと言うことが分かる。もともとは大和言葉の音に、当ててみると、よりこの漢字が近いからこの字を当てようというレベルで使い方が成り立っていることが分かる。
受験生には、まだ早い話なので、教えられた問題集通りの答えで、そう書くべきだと言うしかない。大人になってまた考えを変えようと言うしかない。そうで無いと受験に受からない。
話を戻すと、これらの「つく」は皆、おおもとの出所は使用表現が一緒のようだ。
逆に「つく」でも「吐く」や「尽く」、「突く」は出生が違うので、別の項目で括られていて、前に挙げた「つく」とは違う毛色のようだ。すなわち前のグループの「つく」の代用はできないというモノだ。辞書って注視すると面白い。
同じ理由で「見る・観る・視る」が代用が可能である。でも「診る」の代用は不可となる。「きく」も「聞く」と「聴く」は代用可能。「効く」と「利く」は代用不可である。
僕は作品中でよく「訊く」を使う。当用漢字ではない。簡単に言えば、明確に伝わるように英語のaskに相当して使っている。筒井さんの作品を読んでいた名残だ。
それ以外は音楽を楽しむときは「聴く」だし、街角の店から流れた音楽を拾い聴きするときは「聞く」である。でもこの二つは別に併用しても間違いではない。
戦前の名作を読むと分かるが、必ずしも先に述べたこれらの区分けが明確に行われているわけでもないのだ。送り仮名だってまちまちだ。だから本人の好きに書いたらいいのだ。
一般社会においては、なるべくこの手の話の好きな人には近寄らないようにしている(笑)。話し出したら適当に相づち打って、折りを見計らってドロンでござる。
残った人たちでやれば良い。そのあとの顛末は読み手の受け取り方の問題だ。大多数がおかしいと言えば直せば良いし、ポリシーがあるのなら反対意見ははじけば良い。ペーパーテストの誤用と正解は、必ずしもクリエーターの文才とは別の話だ。漢字の当て字って厄介だけど、大切だよね、という昔話題になったおじさんの持つ小ネタ(笑)、僕の昔話をひとつご披露させていただいた。
さらに横道。戦前の文豪って、武者小路実篤、国木田独歩、田山花袋、夏目漱石、森鴎外、与謝野鉄幹とか、かたい文字だらけ。田山花袋なんて名前の音も「かたい」なので、今回僕もかたそうなのにした(笑)。こんどオマージュで「蒲団がふっとんだ」って作品でも書こうかな? 独歩のパロディなら、「牛モツとアヒージョ」なんてどうかな? 漱石だって「我が輩がベコである」っていうのはどうだ。ふざけているわけはない。こういうのはセンスである。表題が決まっても中身がそこそこピリッとした、しっかり骨子までオマージュさせないと面白くないのである。筒井流だよね。昔『日本以外全部沈没』っての書いておられたなあ、と思い出す。
話がズレたが、何にせよ、新たなステージで筋立ての面白い作品と、温かな感動が湧き出すハートウォーミングな物語と、綺麗なお行儀の良い風刺作品で次のステージも始めたいと思っている。即ち何も今までと変わらないということである。今後ともよろしく。
追伸
新しく始めた『「みはしらのうずのみこ」が願う帝都ものがたり』という拙作。また無性にSFが書きたくなったので、おおよそのプロットも出来たし書き始めた。長いこと新規のSFを書かないでいるとやっぱり書きたくなる。物語を作りたくなるんだなあ。悪癖?
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