第48話 居酒屋トークレベル
暴風雨が過ぎ去ってお日様と久しぶりのご対面である。洗濯物が良く乾いてありがたい。毎日とは言わないが、週に五日はこうであって欲しい。本日は人生いろいろの話。演歌歌謡のお話ではない。人生の在り方のお話だ。オジさんっぽい話題が妙に好きになった昨今だ(笑)。
世間話のレベルで、よく言われるのが、自分が人生の中で一番何処に思い入れがあったかで、自分の自信に繋がる部分が見えるという話だ。言うなれば幸福論の一種だ。
自慢することがさほどない僕からすると、常に話題も多く、自分の経験談を各所で切り売りして、マシンガンのように話せる人はうらやましい。そんなに自分が先陣切った人生を送った経験などないからだ。
人生最良の時はいつか? と言う話。居酒屋トークのような話題。
一番理想的なのは「現在」と言えれば格好良いのだろう。自分の理想の家族と一緒に、大好きな仕事を生業として、それでいて時間にも、経済的にも余裕があって、余暇や趣味に充実している毎日。
両親に溺愛されていれば、幼少期などが一番の最良時代。部活の成績で常に優秀さを認められていれば、クラスのヒーロー、ヒロインである中学高校。同じく進学校への入学や受験の成功なども親戚中の人気の的で、時期的には中学や高校かも知れない。また超難関大学に合格ならそのキャンパスライフが最良時期。
角度を変えて、中学でバレンタインデーのチョコレートが十個以上の時はモテ期という意味でその頃。大学時代にサークルで告白された数が人生最高というのであれば、モテ期最高地点が大学時代である。
だが人の価値観というのは結構恣意的だ。全くの例え話だが、高校時代にチョコを十個貰ったとしても、その時は恋愛に興味もなく、現在もそれ程興味ないという人には、その時代が最高点ではない。自分にとって価値のない物は嬉しくないのだ。
同様に超難関大学を合格したが、その後苦労なさって、ようやく自分で会社を立ち上げて不自由のない生活に現在は恵まれたというのであれば、実は大学生活に自分の誇れる場所はないのだ。むしろ学歴など関係ない、ベンチャービジネスの恩恵が自分の自信を支えているという方も居るだろう。
即ち人間は無い物ねだりをする傾向があり、複雑に絡み合った特性や職業、学歴などの狭間で常に自分の立ち位置を模索したがる生物なのだということだ。こういう冷ややかな考えをする僕こそ、無気力で情熱のかけらもないダメ人間かも知れないのだが、簡単にひとまとめに考察すれば、他者との比較だらけの世の中が矜持を保つことに繋がる人が多いと言うことだ。こうなってくると僕のような諦め組より、むしろそっちの方が健全だ(笑)。
僕が今まで見てきて、現在一番に感じる生き方、それに近い人というのが以下の通りだ。
温かい配偶者と家族に恵まれ、沢山の孫たちに祝われ、健康面にも恵まれ、何の不安もなく老後を迎えた人間が一番の勝ち組ではないかと思う。
さりとて、突出した有名人というわけでもなく、経済界を背負ってたつでもなく、ごくごく普通の会社員や商店店主、中小企業の経営者でもよい。でも温かな身内に囲まれた家族形成をなしえた人が人生の勝ち組のように思える。
とかく若いときにはそういうのは幸せとは感じないモノだ。ただこればかりは計画しても、人生設計だけで手に入るモノではない。子どもも孫も授かり物だし、健康も時の運だ。またその年齢に行き着くまでアップダウンのない人生を送るというのもなかなか難しい生き方が要求される。
だがこの結論、一見完璧そうに見えるようだが、そうは言っても、逆説も存在する。世の中には一人が好きという人も一定数は存在するから、やはり全部の人間に当てはまる幸福論や矜持ってわけではない。だがら所詮そんなものは存在しないのかも知れない。
決して皆と一律である必要はない。結局本人次第。困らなければ良いということだ。困ってばかりの僕が言うのもなんなのだが(笑)、抽象的になってしまうとはいえ、自分にとっての自由と満足が内在できる人生が一番の幸福論なのかも知れない。人生は解せない難題ということだ(笑)。ではまた。
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