第41話 余暇

 最近、言い方は変だが、全てが面倒くさいと思うようになった。まるでギャグマンガやコントのような言い方だが、生活するのすらめんどくさい(笑)。

 若いときの夢や希望、恋愛などがあったときはモチベーションが維持できたが、目的も無く仙人(?)生活をやっているとただただ無駄な時間と体力の衰えを感じる自分しかいない。モノトーンな世界観、人生である。まあ、世間的にはそれを老化と言うのかも知れない(笑)。自分もそういう年齢になったという実感でもある。


 大学や院生などの学生時代などは今ほど文庫本のレーベルの種類は無かったし、本屋も結構大小様々な場所に存在したので、行く先々で文庫本を買っては片っ端から読書を楽しんだ。電車に乗れば文庫本は必須アイテムだった。当時の文庫本の値段も物価に対して比べてみると安かったので、手持ち無沙汰のおともには手軽に入手出来る文庫本だった。

 ちょうど岩波文庫がオブラートのようなカバー紙から艶のある綺麗なPPコート紙に入れ替わりの最中だった。緑の帯やピンクの帯が一新されて美しかった。

 一方で自分で買えないような高価な本は図書館。だから文庫本くらいはポケットマネーで我が書棚に、って感じだった。


 今は休日に寝ることと掃除すること、洗濯、そして体力温存をその一番の目的と課して、人生の余暇を楽しむという行為を忘れかけている。仕方ないことでもある。出かければ疲れるし、趣味を共感しあうような人間も近くにいないので、ただだらだらと時間を過ごすことが多くなった。それもまた心地よく、新しい僕の日常になりつつある。言い方を変えれば、この最近の生活パターンに順応しているとも言えよう(笑)。


 黄金週間前半は神明社にお参りしてきた。ありがたいことで、僕の休日などはもったいないくらいのイベントだった。御朱印も新しいものと期間限定のものを頂けた。


 今日からの後半の長い連休は、家で他所様のブログやVチューバ-さんなどの動画を見続ける予定だ。既にもう視てハマったものがある。

『花の二十四年組』についての動画である。自分の知らない豆知識がわんさか出てきて面白い。『大泉サロン』の話などは、名称は知っていたがどういういきさつで出来たのかや、どんな創作活動に寄与したのか、その意義に興味を惹く。その後の系譜なども面白い。文学史をマンガに置き換えたようで楽しい。


 遡って祖父母と暮らす前の子ども時代の我が家は、僕にチャンネル権(※註)などなく、ひとりで使っていない部屋で、あるいは近所にあった書店さん、図書館などで小説や詩歌を読む傍らで、合間にマンガ本を読むのが一番の娯楽だった。故に僕の一九七〇年代の後半の娯楽はマンガ一色だった。なので僕は当時のテレビ・アニメ-ションよりもマンガに傾倒している。ゴールデンタイムは自分の見たいモノは見られないことも多かったので、そのうち中学に行ってからは部活などで帰宅時間が遅くなったこともあるし、テレビに興味が無くなり、余暇に本ばかり読む子になった。


 当時は詳細を知らなかった『トキワ荘』や『大泉サロン』については今更ながら、なるほどと何十年もたった今に更新された知識を掴んでる。


 関連して『少年チャンピオン』を読んでいた僕は萩尾さんの作品が載っていたせいもあり、それは読んだ記憶がある。また竹宮さんの映画を見たなあ、などとその動画を見ながら思い出す。特に詳しくないし、夢中になって追いかけた記憶も無い。ただ読んでいたという事実だけだ。昔の知識はそのままほったらかしになっていることも多いので、今更ながら更新されると当時の謎だったことの答え合わせも含めて新たな発見があるのだ。あの時代の記憶の一部が潤うような感覚だ。


 おじさんのどうでも良いGWは、こうやって無理矢理興味を作って、無駄な時間を楽しむことに費やされていくのである(笑)。これを土台にして、これについてなんかを書くというわけでも無いので、本当に消化してはき出さない知識である。これも悪くない。結局、幸せの基準は自分が満足したモノが対価に見合っているかと言うことと、心が満たされるモノに巡り会えたかということに尽きる。モノをカタカナにしたのは、物質だけで無く、知識や物語、食べ物や思い出などの意味も入るからである。


 初穂を納めて頂いてきた御朱印は対価以上の幸福感、満足感を頂けるし、当時のマンガ家さんの作品に間接的に触れるのは過去の自分に向き合える貴重な時間というわけだ。モノの対価と満たされるモノはこの余暇で消化できているということだ。そして何より一番に身体を休めることが今は一番大切な僕である。明日に備えて、疲れや痛みをなくすことが先けつである。おじさんだなあ(しみじみ)。


※チャンネル権・昭和の時代、多くの各家庭では、リビングや食卓部屋にテレビがあり、どこの放送局を視るかの家族間での決定権。

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