第30話 お気に入りの場所

 僕のお気に入りの場所というのはいくつかある。そのうちで旅先ではなく、いつもの行動範囲にあるお気に入りの場所をあげてみる。それは横浜のみなとみらい地区。それも横浜美術館周辺の環境である。


 位置確認をしておくと、クイーンズモールとランドマークプラザ、マークイズなどの施設とその間を走るグランモール公園通りだ。ブックカフェやミニシアター、パシフィコ展示場、美術館とそのリファレンスライブラリー、パイプオルガンを持つコンサートホールなどの文化施設、芸術施設、横浜らしいグローバルな店舗が心地よく並んでいる地区だ。おまけに伊勢を意識したコメダの別ブランドである甘味茶屋「おかげ庵」もあるし、ハードロックカフェもあるし、言う事無しである。


 根岸線の桜木町駅を軸にすると山側のお伊勢さんや県立図書館、市民ギャラリーのある野毛山、紅葉坂周辺や、同線石川町駅から元町にかけての高台の公園や、多くの文化施設である西洋館、記念館、資料館なども、長い間すごくお気に入りだった。


 そしてここに来て、都市機能と緑が調和している新しい街であるみなとみらいのグランモール公園周辺が息吹を感じる。ここ十年で、一気に自分の中のお気に入りランキング急上昇となった。軽めでマイナーな欧米作品や、クラファン※によって制作された作品などを見せてくれる映画館と、それに連接するブックカフェは文芸ファン、映画ファンを魅了する。

 また横浜美術館のホールから長い廊下を歩いて行き着く、図書館機能と調べ物機能をかねたリファレンスルームは、一般にも開放しているので有り難い。大変役に立ったし、居心地の良い場所でもある。美術や歴史好きには、最高の隠れ家である(ただし美術館は現在改装中である)。公私設共に充実する都市機能の一角とも言える。さすが大都市横浜だ。


 このエッセイでは、今まで、かつての昭和な横浜ばかりを紹介している。よく聞く地方都市の話題では、疲弊するような都市機能とかシャッター商店街などのレポートを発信するドキュメント番組も多い。それとは異なり、横浜には未来を見据えた躍進を遂げる地区も多いことを一般の人や観光客に涵養させていかなくてはいけない。


 かたや氷川丸とマリンタワー、ランドマークタワーと昭和から平成を経た横浜の散策に、こういった令和のテイストもご紹介して今回はシメてみよう。ちなみにマークイズ・ショッピングモールは落ち着いて買い物ができるし、登山用品や文房具品などでも、幅広い商品を揃えているお店も多い。また飲食店も安価でおしゃれなものから、高価で本格的なものまで揃っている。クイーンズモールの東急プラザと抱き合わせのショッピング街を形成している。みなとみらい線みなとみらい駅のエスカレーターを上がれば、そこはもうこれらのモールの敷地内になっている。目的なしに、ぶらりと余暇や散歩で行かれてみるのもいいだろう。おすすめだ。


※クラウドファンディングの略 大衆クラウド+資金調達ファンディングを意味する広くネットで投資者を募る経済行為。

 

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