第3話
自分語りなんて、同性相手にするのは初めてだなぁ。いや、そもそもあいつ以外に色々語るのも初めてか。本っ当にチビッ子の時にしか友達いなかったからなぁあたし。
ん? 殺した理由を話すのにあたしの自分語りはいらない? いやいや、それがいるんだって。ミステリーとかサスペンスとか、それこそホラーにしたってそうだろ? なにせ殺した理由だからな。この生き死にの観念が緩くて命の軽い『アンデッド・キングダム』の世界しか知らないメヴィアちゃんにとってはそれこそどうでもいいことみたいに思えるかもしれないけど、過程とか理由ってのは結構大事なんだ。だから聞いて欲しい訳。
ただあたしが彼を殺した、ってだけよりもね。あたしがどういう生き方をしてきてどういう関係を彼と築いて、どう感じてどう思ってどう考えて、最終的にどうしたか。その一本の道が大事なのさ。
……そんなに苛立つコトないだろ。何に怒ってんだよホントに。
あ、口調? 口調が気に入らない? え、なんで。
あ、あぁー、語り草が『 』に似てるのが気に入らないって。いやいや、そんなにあたしとあいつ似てるか? ……いや、似てるか。
ミラーリング効果ってヤツかもな。好意的な相手の仕草とか口調とかがつい移ったり、自分と似たヤツに好感持つって効果。あいつとは長い付き合いだったからなぁ、口調くらい似るかもな。そういや、それこそ昔は女の子口調って言うのかな、それっぽい話し方してたんだけどよ。気付いたらこうなってた訳。
そういう意味じゃ、やっぱあたしはあいつに未練タラタラなのかもな。死んで生まれ変わってもあいつの残渣を自分の中に残して、それだけじゃ飽き足らずこうして生まれ変わった先でも会いに来ちゃうんだからよ。
ま、そこは我慢してくれ。不快って言われてもあたしとしても困る。
早く本題に入れ? そりゃそうだ。
じゃあどこから話そうかな……人生一から全部ってなるとあんまりにも長い、冗長が過ぎるってモンだしな。
まずは、あたしが前世でどんな人間だったかってことから話そうか。
あたしは自分言うのもなんだけど、昔はとびっきり優秀な子どもでさ。上に兄さんが1人いたってのもあって、その兄さんの真似をよくする子どもだったんだ。で、その兄さんってのが少し歳の離れた兄さんでね、そういう姿を優秀なあたしはめいっぱい追いかけてた。勝手に兄さんの教科書持ち出したりして、幼稚園の頃には小学校程度の漢字は自分だけで大体読めるようになってたし、算数とか理科、社会なんかもフツーに出来た。いやホント、自分で言うなって話だけど所謂神童ってやつだったのかな?
そんなとびっきり頭の良かったあたしは運動も出来た。それこそ下手な男には負けない程度に――この世界じゃ基本的に女の人の方が強いから、あたしの言ってるニュアンスがうまく伝わらないかもしれないけど。まぁ、スポーツとか単純な力の強さでもあたしは優秀だったってコト。
んで、外見もこの通り結構な美人さん。いやぁ、中身を知られる前はホントにモテたよ。嫌になるくらいにね。
そんな完璧なあたしだけど、致命的にある部分が足りなかったんだよ。
あ、別に人格障害とかサイコパスだ、良心が欠如してる、とかって話じゃないぜ? というか、そうそうサイコパスなんてそこいらにいる訳ないしな。そういうのが世間でのさばってるのなんてそれこそフィクションの中だけだ。あたしはフツーの出来の良い、才能のあるチビッ子でしかなかった。
うんうん、そうなんだよ。
下手に才能があるとさ、努力せずに大抵のことが出来るし褒められるんだ。だから、それが自分にとって当たり前になる。そんな傲慢な人格が形成されていく。
あたしは、才能だけで生きていたんだよ。生きていけてしまったんだよ。
中学くらいまでは本当に毎日が楽しかった。他のヤツよりも自分が優れてるって感覚……優越感って言うのかな? そういうのと幼稚な全能感に浸って、努力もせずに努力しているヤツよりも優秀な自分に酔ってたんだ。
この辺り……いや、もうちょっと前くらいかな? 10歳前後になる頃にはそんな性格のあたしには友達がほとんどいなくなってたんだよ。イジメられてた、ってほどじゃないけど、クラスでも誰も話しかけてこないし先生もあたしが解くと正解をポンって出すせいで他の子どもの勉強にならないからって妙な理由で授業中でもあたしを放置するようになって。うん、今思うと結構悲惨な気がするなあたし。
ま、要するに才能だけに頼った高慢ちきなチビッ子だった訳だよ。常に他人を見下してるから友達もいなくってさ。
早く殺した理由を話せ? もうちょっと待ってくれよ、こうして自分のことを機械以外の相手に語れるのが久方ぶり過ぎて口が良く動くんだ。もう少し付き合ってくれたっていいだろ?
あぁ、分かったよ。端折って話すよ。
そういう努力をせずに才能だけで生きてきたあたしは高校で挫折した。変なプライド、自尊心を保つために入学した地元でも有数の進学校に入学したあたしはそこで折れちゃったんだ。
マトモな努力をしてこなかったから、勉強なんてしてこなかったからかな。
進学校ってのはホントに頭おかしいくらい勉強させてくるんだよ。問題自体は解けるけど、量が多くってね。そんでもって、出来ないヤツに合わせずに勉強はガンガン進んでいくんだ。
努力の仕方を知らないあたしはその学校に通ってるうちに、段々勉強自体が億劫になってマトモに学校に通わなくなった。そんでもって、通わないでいるとそれだけの間学校じゃ授業が進む。それはもう、本当にすっごい早さで進んでいく。
流石のあたしも知らないモンは知らないし、解けないモンは解けない。そういう問題が増えてくる。友達も当然出来ないし、先生とかからの評価も下がりまくり。そんで、あたしは余計学校に行きたくなくなって適当な場所をぶらついたりしだすんだ。で、あたしがブラブラしてる間も学校じゃ時間も授業も進んであたしの解けない問題は増えていく。行く気はもっとなくなる。
そうして、結局は学校止めちゃったんだよね。
……ああもう、うるせーな。分かったよ、『 』とのコトを話してやるよ。
あいつとは家が近所でな。家族ぐるみの付き合いはなかったけど、チビッ子の時からずっと一緒だった。幼馴染、腐れ縁ってやつかな?
んで、傲慢で高慢でいけ好かないチビッ子だったあたしから唯一離れなかったのがあいつなんだ。
変だよな? みんなから疎外されてるような嫌なヤツなのに、あいつはあたしと一緒にいてくれるし話しかけてもくれたし遊びにだって誘ってくれたんだ。
あん? あぁ、あいつ自身は別にハブにされてたりはしなかったよ。フツーだからなあいつは。クラスで浮いてる妙な女にも話しかけるだけのフツーのヤツ、って認識だっただろうぜ。少なくともあたしからはそう見えてた。
んで、ある時聞いてみた訳よ。なんで『 』はあたしと一緒にいてくれるのか、って。他のヤツみたいに離れて行かないのかって。
正直、そん時のあたしはあいつのことも見下して下に見てた。自分よりも出来の悪い、それこそどこにでもいるフツーのヤツで天才で特別なあたしとは違う存在なんだって。だからこそ気になったんだよ。
それでさ。帰ってきた言葉が何だったと思うよ?
「ミソギちゃんの顔が好きだから」、だぜ!?
いや、当時たしか小学生くらいだったんだぜ、あたしに言う資格はないだろうけど、どんだけマセてたんだよあいつ。
そんで顔が好みだからって、性格が終わってる嫌われ者に構いに行くのかってな。
笑ったよ、ホントにそん時は笑った。心から面白かった――今思えば、あいつに惚れたのはその時だったのかもな。好意の返報性、ってヤツかな。自分のコトが好きな相手を好きになっていくってやつ。それにまんまと乗せられた訳だぜあたしは。
ま、あいつにとっちゃあたしは数多くいる好みの女の1人でしかなかったんだけどな。そんなに活発なタイプじゃなかったし、どっちかっていうと陰気なタイプだったからモテてなかったし目立ってなかったけど、あいつ結構な頻度で顔の良い女の子に話しかけに行ってたんだよ。面食いの典型例だな、ありゃ。そんで、やっぱ女ってのは子どもでもそういう下心を簡単に察するらしくて、そんなに酷い目には遭ってなかったけどクラスのカースト上位層の女子によく利用されてたぜ。忘れ物した時肩代わりしたり、掃除当番とか日直とかの仕事を代わったりとか。
あいつ、別にマゾって訳じゃなくてそういうのには不満を持ってたんだよ。
でも、結局最後にはいいやって許すのが『 』だった。顔が良いから許せるって、それこそ口癖のように毎日言ってたっけな。言わせてた半分以上はあたしだったんだけど。
で、そういう顔の良い相手なら誰でもいいって男に構われて無意識に恋してたあたしだけど当然別離の時ってのはやってくる。いや、高尚なイベントとかじゃなくって単なる時間の経過の結果なんだけどさ。
この世界じゃ文明が近代に進んでないけど、メヴィアちゃんは知識としてくらいは知ってるだろ? あたしの生きてた前世では、中学を卒業したら高校に行くのが『当たり前』ってヤツだった。んで、学歴社会なんて揶揄されるような文化文明が築かれてたから誰もがみんな出来るだけいい学校に行きたくっていい学校を目指す。
さっき言ったとおり、あたしもその『当たり前』で生きてたからいい学校を目指して、無駄に勉強を押し付けてくる進学校に入学した訳。でも、進学校ってのは頭良くないと入れないからさ。当然『 』はそこよりもずっと下のランクの、それこそフツーの高校に入った。
そっから数年……2年か3年くらい?
そんだけの間、あたしとあいつは会わなくなった。家は近くだったけど、学校の方向が逆でさ。それにあたしの通ってたの、私立のお嬢様校って雰囲気の女子高でな。色々……ホントに色々あいつとは違う生活を送り出して、あいつとは会わなくなっていった訳。
ま、その学校結局途中で辞めたんだけど。天才美少女ミソギちゃんも学歴社会じゃ中卒のロクデナシ、って烙印を押される羽目になった訳さ。
んで、学校止めると今度は家ん中がうるさくなった。当たり前だけどな、学びもせず働きもしない傲慢な娘が家庭内でどんなヒエラルキーに置かれるか、なんて語るまでもない。
しばらくして、あたしは家から追い出された。ちょっとのお金を握らされて、着の身着のまま家を追い出されちまったぜ。
追い出されたあたしはどうやって生活していこうか、ホントに悩んだ。
学歴もない、資格もない、意欲もない。あるのは賢い頭と健康な体とメチャクチャいい外見だけ。あとは若さくらいか?
出来ることといやぁ、それこそ家出少女みたいに体でも売るかくらいだったけど、これで世間を知らない箱入りだったあたしはそんなコト絶対したくなかった。
んで、思い出した訳。昔顔が好みってだけであたしから離れなかったバカがいたなーってさ。
それで、あたしはあいつの家に久々に向かってみることにした。
でも、そこにはあいつはいなくって。親御さんに聞いたら大学受験失敗して、フリーターしてるって言われてよ。なんか、大学通うならともかく18超えて家族に養われるのは我慢できないとか言って家を出て働きだしたみたいでさ。ちょっと遠くの街はずれの、やっすい家賃のワンルーム借りてなんとかやっていってるみたいだって。
今思えば超失礼だけど、笑っちゃったんだよね。
だって、フツーの高校をフツーの卒業して、そんでもって大学受験失敗でフリーターだぜ? 高校中退ニート女が何を、って話だけどさ。やっぱりあたしはその話を聞いてあいつを見下したんだ。自分より下の無能だ、って思ったんだ。安心したんだよ、自分はまだマシなんだって。客観的に見りゃ、働いてる分偉いのはあいつの方だけど。
んで、その話を聞いたあたしは当然『 』の家に向かった。最初は何日か泊めてもらうだけのつもりでさ。その何日かで今後どうしようかなーって考えようって。
男の1人暮らしに若い女が、なんて危機感はなかったね。なにせそん時のあたしは『 』を見下してたから。自分より下のヤツに襲われるなんて、フツー思わないだろ?
んで、着いてみたらそこホントにボロのアパートでさ。狭いし汚いし古臭いし、生活感ありすぎてうわっ、てなったぜ。
夜だったけど、丁度仕事に行く『 』が家を出るトコでさ。あいつ、何の仕事してたと思う?
昼はどっかの会社に派遣のバイトで向かって、夜はラブホの清掃してたんだぜ?
今思えば頑張ってるなーって感じるけど、当時はバイトって存在をあたしは見下してたし、それもラブホなんてとこで働いてるからこいつは下だ! って嬉しくなってさ。つい言っちゃったんだよね。
ここにあたしを住ませて、って。
そんで、あいつは少し嫌そうな顔をして悩んで、こう返してきた。
まぁ、顔が良いからいいかって。
勿論あたしは働かない。家事もしない。生活費は全部あいつ持ちで、家の仕事もあたしのお世話も全部全部あいつの役割だった。
ヤバいよな、あたし。そうされて当然って思ってたんだぜ? いや、正直その気持ちは今でもちょっとは残ってるけどよ。あたしは可愛いから、綺麗だから、あいつはあたしが好きだからって思い込んで、可愛いくって綺麗なあたしと暮らせてんだからいいじゃんって。むしろこんな狭くて汚い部屋で我慢してるあたし偉い! 頑張ってる! って思ってたくらい。
あいつ、結構バイト頑張ってたみたいで稼ぎはそこそこあったんだよね。いや、あたしが来たから稼ぐしかなくなったのかな? 口が増えれば生活費も増えるもんな。んで、バイト増やさなきゃ生活できなくて、家では前より多くなった家事が待ってて、そんだけ忙しいと就職活動も大学受験にむけた勉強もどっちも出来なくって。んで、日に日にあいつは疲れた顔が増えるようになった。
そんで、流石にここまで来たらこれはあたしの所為だな、ってあたしも感じ始めてさ。働かないで他人の負担になってるだけ、って字面だけ見れば甘えまくりのめっちゃ恵まれた環境に思えるけどな。これがストレスヤバいんだぜ。他人の不幸を、身近な誰かの不幸を知ったことかって言える図太さがなきゃやってられない訳。それで、あたしにはそんな肝の太さはなくって。疲れていくあいつを見てたらあたしも辛くなってきて、夜眠れなくなってきてさ。
あ、そういや仕事帰りの疲れたあいつに抱かれた……いや、あたしが抱いたんだったっけ? ま、どっちでもいいか。そういうコトをするようになったのがそのくらいからだった。愛してたから、とか恋してたから、じゃなくってさ。
家でただあいつの負担になってるってのにあたしは耐えられなくなったんだよ。顔が良いから、っていつものように辛そうな笑顔を浮かべるあいつが可哀そうで、それでそいつはあたしの所為で。だから必要とされたくなって、そういうコトに走っちゃった訳。
男の人ってそういうの好きって知ってたし、一緒に住んでたからあいつの趣味とかも知ってたし……『アンデッド・キングダム』もそうだけど、あいつエロゲ好きだったんだよね。なんか、ただエロいだけでもダメで楽しいだけでもダメで、両方あるのがいいって言ってたっけ。
んで、体重ねるとそん時だけは安心するんだよ。あぁ、あたしはこいつに必要とされてるんだ、ここに居ていいんだ、って思えてさ。
でも、しばらくすると……あいつがいつものように仕事に行って一人で部屋にいると、物凄く不安になったんだよ。ホントにあたしは必要なのか、居てもいいのか、いつか見捨てられるんじゃないかってさ。
んで、あたしは不安を解消するためにメンクリに行ってお薬出してもらうことにした。理由はまぁ、不眠症だとか適当に誤魔化してさ。不安が酷くて眠れない日があります、って言ってお薬貰った訳。嘘は言ってないよな、うん。
……お金? いや、勿論『 』の稼いできたお金から払ったよ。家追い出されたけど保険証はそのままだったみたいで、実家の扶養内にいるってコトになってたから医療費は三割負担、お安くっていいね。
お、おおう。そんなに怒るなよ。今思えば悪かったなって思ってるさ。
んで、何年かそういう楽しいのか辛いのか分からない生活を送ってたらさ。
ふと、あたし生きてる意味なくね? って思っちゃったんだ。
だってさ、ただ顔が良いってだけで『 』の家にいさせてもらってるんだぜ? 当たり前だけど、フツー人間ってのはアンデッドと違って歳取ると老けてくるんだ。可愛くも綺麗でもなくなっていくんだ。そうしたら、それこそあたしの価値は無くなるなって。あいつにとってのあたしの価値は無くなっちゃうなってさ。
生きてる意味もないなって。
でも死ぬのは怖い。痛いのは辛い。これでもあたしは健康的なメンヘラだったんだぜ。薬のODもしたことないし、リスカだって経験ない。勿論拒食とか過食とかもしなかった。ホンモノさんからしたらメンヘラ舐めてんのか、って言われそうな程度には健全だったんだよ。
だから、1人で死ぬのは嫌だとあたしは思った。でも生きてる意味もないなって。
じゃあ、どう死ぬのが怖くないか、嫌じゃないか。そうあたしは考えるようになって、ある時思いついたんだ。
『 』と一緒に死のう、って。
死に方は辛くないのがいいな、って思ったからちょっと遠めのホームセンターに行って練炭とダクトテープ買ってきてさ。それで帰りにお酒も、結構度数強めなの買って。あいつもあたしも出身地の所為かお酒に強かったからなぁ、50度近いヤツを何本か買ったよ。
んで、あいつと一緒に死のうとその日の内に行動に移した。
あたしがメンクリで貰ってたお薬さ、抗不安作用だけじゃなくって眠気も結構強く出るやつでさ。昔、お酒と一緒にデートレイプドラッグとしても使われたつっよいヤバいヤツでさ。アレ、水に溶かすとめっちゃ青くなるんだぜ。それをお酒と一緒に飲ませれば、そんでもって家中を目張りして練炭焚けば眠るように楽に死ねるかなって。
その日は『 』の仕事が昼まででさ。だから、帰ってきたあたしは家でゲーム……この『アンデッド・キングダム』をプレイしてたあいつに、そんなゲームするくらいムラムラしてるんならエッチしよって言ったんだ。
んで、お薬溶かしたお酒を口に含んでキスした。フツーに飲ませるんじゃ色でバレちまうからな。アタシがメンクリ通ってることもあいつは知ってたし、そういう薬だって知ってたら青い色が警戒されそうだったからな。
結果はまぁ、無事成功。あいつは見事に昏倒したぜ。その後は……こうしてあいつと2人、この世界に転生してる時点で言うまでもないだろ?
と、まぁそういう訳だ。色々耐えられなくなって死にたくなって、でも1人で死ぬのは怖かったから、あいつと一緒に死ぬことにしたんだ。
……実際、死ぬときに不安も恐怖もなかったな。家中にダクトテープ張って、火災報知器に煙がいかないよう細工して、そんで練炭に火をつけてあたしもお酒と一緒にお薬飲んで。
倒れたまま動かない、でもまだ生きてたあいつの体を抱きしめながら、溶けていく視界と思考のなかで、すっごく安心してたんだ。
あぁ、ようやく楽になれるって。しかも、あいつと一緒に死ねるって。
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