こうぼうと書いて工房とは読まずに攻防と読む。それが異世界。
壁の上から眼下を見下ろすと遠い先にモンスターの群れ。でもあの量、さすがに足が震えてる。
群れはだんだんと歩みを速めながら接近してきて、魔法の射程圏内に入るころには猛烈な速度で壁にぶつかり始めていた。
「こんなん耐えきれるのぉ!?」
「石壁に耐えられないものはない! 射撃を続けろ!」
隊長の号令に従って次々と射撃物が放たれる。私は火属性の魔法、
そのぽちは壁に上るのは無理なので遠吠え(物理)をしてモンスターの耳を壊す作業をしている。小豆に大豆は奥まった場所に避難。
短いようで凄く長いような時間が経った後、群れは引いていった。
「今のうちに石壁の補強をするぞ! 土属性が使える物は誰でも良い、集結してくれ」
私は疲労困憊だったけど土を扱えるので集合。一番土を扱える魔法使いに魔法を教えて貰って石壁を直す作業に入った。
これを何日続けるのだろうか。
早く救援隊よ来てくれ。
深夜までかかって石壁を補強し、就寝。
翌日は疲労が残りながらの防衛戦となった。
「火球もだんだんと撃ち慣れてきたな……まさか熟練度システムが!?」
「物事に熟練があるのは同然だろ! 阿呆なことを言っていないで火球をもっと放て! 魔法が使えない物は弓矢を、長槍で壁に張り付いたモンスターを刺し殺すのも忘れるな!」
でも昨日より明らかに熟練度が上がっているので、絶対補佐をするシステムがあると確信する。だってだて、火球の大きさが二倍くらいになっているんだもの。
さすが異世界! 熟練度システム(仮)があるなんて!!!!
こんな感じで防衛をしていたんだけど、ついにモンスターが門に張り付いた。門は石壁ほど防御力が高くない。モンスターの自爆するような突進でだんだんと門が崩れていく。
お犬チームが修復材を持ってきて内側から修復するけど間に合わない。
私は粘着を貰って自己流で木材を門に貼り付けていた。
無我夢中だった。
そんな中、威勢の良いラッパの音が聞こえた。
モンスターとは違う地響きが聞こえる。
それはモンスターの群れの側面に思い切りぶつかったように聞こえた。
「やった! 騎兵隊が来たぞ! 救援部隊の先遣隊だ!」
「すげぇ、あの突撃一回でモンスターの群れを二つに食いちぎってやがる」
「突っ込んだ数は二〇もいねえぞ!」
「これが、ヒゲソリ男爵が誇るモンスター騎兵か」
壁の上から感嘆する声が聞こえる。きつねみみぱわぁで何でも聞こえるのだよ。
「救援隊より防衛部隊へ。よくぞ守った! 男爵から褒美が出る。後で雇われているギルドで受け取るように」
「こちら防衛隊及び採掘基地隊長。わかりました。あの突撃の後散ったモンスターの掃討はお願いできますでしょうか」
「そのために後続が来ている。もう休んで大丈夫だ」
うおおおおお、歓声が上がる。みんな怖かったし疲れ切っていたからね。
夜、ぽちのブラッシングをしている所に男性が現れた。
「これが君の馬か。なかなか個性的だな」
「オオカミなんですよね。犬なんですわ。ええと、あなたは?」
「私は救援隊隊長のトテモ・ヒゲソリだ。爵位はヒゲソリ騎士。騎兵以上の騎兵が集結を遅らせたと皆々が口々にしておってな、会いに来た」
えらいひとやんけ
「これは失礼いたしました! 騎兵以上の騎兵というか、やれることをやったまでです!」
「それが属性を変えながら戦況を立ち回った狐の言い分か。君には男爵直々にお礼状が出される。一週間後に男爵の城で式典が行われるのでくれぐれも参加を忘れることのないようにな」
「ええええええええええええええええええええええええ」
「しかし確かに凄いモンスターオオカミだ。これがヒゲソリ騎兵隊に加入したらヒゲソリ男爵領は騎士領まで下げられるかもしれないな。ははは」
そんなことを言いつつトテモ・ヒゲソリさんは去って行ったのであった。
式典とかなんの礼儀も知らないんですけど。
翌日、物を詰め込んで急いで街まで戻って(行商するのは忘れない)商人ギルドへ直行。
「ほーそれは凄い。上級民じゃ無い限りこぎれいな服装なら式典で十分な服装だから、ワンピースでも買っておけよ。金は持ってきた魔鉱石でまかなえる。あれは重いしかさばるから結構高価なんだ」
「胸が極端に強調されるけどしょうがない、折り返し付きのワンピ、購入するか……」
ということで青のワンピを購入。だぼっとするよりは折り返しがあった方がまだ綺麗に見えるからな。しょうがあるめぇ。
式典までに話を聞いて回ったんだけど、ヒゲソリ男爵領がここまで発展しているのに男爵領なのは、ヒゲソリ騎兵隊を保持しているからだそう。それくらい有名で強いんだってさ。
実際本当に強かった。ただの突撃でモンスターの群れを瓦解させた。
強すぎる騎兵隊を持っていて、爵位も高いと反乱の恐れがあるから爵位は下げちゃうらしい。地球だったらそっちの方が反乱しそうだけどね。さすが異世界。
とりあえず式典ですなー。
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