だってモンスターなんだもん

「戦える人はこれだけか。今の状況を説明する」


魔鉱石採掘基地の隊長が私たちを集めて話をしている。

集まったのが十二名だから戦力になるのは十二名+ちょっとかな。


「現在この基地はモンスターの集団に襲われている。スタンピードというやつだ」


で、でたー! 異世界転生と言ったらこれ!


スタンピード!!


大体スタンピードってどんな意味だよ。スマホがないから調べられないよ。大襲来ってところかな??


「スタンピードに陥っているモンスターは混乱状態にある。見境無く、武力差を考えず、襲ってくる。ただしスタンピード同士では攻撃をし合わない、集団になるんだ」


へー勉強になる。この世界スマホ要らないな。


「今回我々は、基地のバリケードや壁を破壊されないように動く。救援が来るまでしのげば大丈夫だ、無理をする必要は無い。バリケードや壁は元々しっかりと強化されているからな。敵が集まらずに少数でいるうちに動き回って蹴散らしていけ。規模がデカいやつは相手にするな」

「はーい。ぽちと一緒にかき回していくか」


武器安置所から柄のながーい薙刀っぽい装備を借りて、ぽちに騎乗。

ぽちが体当たりすることと薙刀もどきで薙いでいくことを主な攻撃手段として小グループを蹴散らしていく。

モンスターの種類は様々で、ゴブリンからクレイゴーレムまで様々。

なんで寄り集まるのだろう? 魔石が関係しているのかな。実に異世界である。


まあぽちに乗っていれば雑魚の集団なんですけど、雑魚を蹴散らしていくうちになんか変わってきたことがある。

自分の強さだ。特に魔力関連。明らかに、とはいえないけど強くなってる。薙刀もどきを振る時のスピードや刺さり具合が鋭くなってきた。

これは……経験値システムなのでは!? こっちの世界の人だと当たり前すぎて気がついていないだけで! 異世界だあ!!


「魔石を持った動物を狩ると強くなるのは当然だろが。だから魔石ペットを狩られないように従属関係を結ぶんだろ」

「ですよね、ですよね。あざっす基地隊長殿!」


当たってた! 凄いぞ異世界! 地球とは法則が何もかも違う!


そうやって異世界で生きていることを実感しつつぽちと一緒に小グループを蹴散らす。

測っていないけどぽちは農耕馬の二倍くらいの大きさだから、大体一・五トンの体重で敵に突っ込んでいくんだよね。大きめの普通乗用車がぶつかるのと一緒である。普通の動物なら死ぬ。北海道の巨大鹿とか猪は別だけど。あいつら普通自動車の方を破壊するからな。

モンスターだとクレイゴーレム当たりが該当するけど、そこは私の出番。

薙刀もどきを振り回し粉みじんにしてあげるのだ。

アイアンゴーレムでも出ない限りはこれで何とかなる。


数日は今感じで蹴散らしていたんだけど、集まってくる群れの規模が段々と大きくなってきて。

さすがの私たちでも手を出せない大きさになっていた。やべぇ。


「隊長、突撃されたらさすがに適わないのでは?」

「完封は無理があるが、一ヶ月は持たせることが出来る。救援が来るまでとにかく凌ぐんだ」


手を出せなくなってからは睨み合いが続いた。魔法使いがいたので散発的な矢弾は群れに届くけど、さすがに効果は薄い。睨み合いが続けば続くほど群れは大きくなる。

うーんよくない。防衛力を上回られたら見えているのは基地の壊滅、そして人員が餌になる光景だ。


ドキドキしながら救援を待ったんだけど、群れの拡大の方が早くて。その日はついにやってきた。


「ひえぇぇー群れが突撃してきますよー!!」

「基地にいるもの全てが武器をもて! 迎え撃つぞ! 敵の群れを壁に近づけさせるな!」


スタンピードの本格到来である。


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