第82話 真相?

「露払いお疲れ様。この辺で野営にするか」


「いえいえ。この位は朝飯前ですよ。夕食前ですがね」


「あははは! シーダさん、おもしろーい!」


 アリーがケタケタと笑っている。

 ここで怪訝な顔をしてしまっては俺がヤキモチを焼いているような感じになってしまう。


「アリー、笑っては失礼だぞ。真剣に言ってるかもしれないだろう?」


「プッ! ははははっ! なんでテツさんそんな真面目なんですか!? もう! 笑わせないでくださいよぉ」


 なんかアリーが上機嫌だ。

 何かもう今のうちから薬を盛られているのか?

 クンクンッと匂いを嗅ぐ。


 薬の匂いはしないな。

 何かのお香という訳でもない。

 首を傾げていると。


「笑ってくれて良かったですよ! さっ、野営の準備をしましょう」


 シーダ達は一つの大きめなテントだ。

 こっちはそれぞれが一人から二人用である。

 そうでないと疲れがとれないんだが。


「料理は俺達が作りましょうか?」


 その提案は来ると思っていた。

 警戒をとくと思ったか?


 前世で飯が作れなかった時、俺は仲間にその誘いをされて頼んだのだ。

 結果、裏切られた。


 薬を盛られて暫く動けない間に標的を逃がしたのだ。

 なにやらその標的に恋心を抱いたようだ。

 そんな失敗がある俺はその誘いは受けない。


「いや、こっちはこっちで作る。食料までは面倒見てもらう訳にはいかないからな」


「そうですか。では、こっちはこっちの分を作りますね」


 そういうと少し離れたところに魔石で動くコンロをセットしだした。

 ウィンももってたが、みんな持ってるものなのか?


 不思議そうな顔をして見ていると。

 ウィンが寄ってきた。


「何か、気になりますか?」


「あぁ。みんな剣士のようだし……来た方向も気になる。なぜ戻る必要がある? 何のためにこっちに向かってた? 謎が多いんだ」


「確かにそうですね」


「それもなんだが……あれはみんな持ってるもんなのか?」


「はははっ! それを見てたんですね! あれは結構持ってる冒険者多いですよ! ただ、こっち側の冒険者は。ですけどね。森に近いところを拠点にしている冒険者は、薪がありますからね。いらない人が多いみたいです」


 ウィンの言葉に納得する。

 なるほどな。

 たしかにあっちでは必要なかったな。


 土地柄というわけか。

 シーダ達が持っててもおかしくは無いと。


「そうか。ありがとう。じゃあ、こっちも作るか」


「はい!」


 干し肉と野菜、米を一緒にいれて醤油、砂糖で味付けをして煮付けのようなものにする。

 少し煮詰めると出来上がりだ。


「おぉ。凄いいい匂いですねぇ。お料理上手なんですね」


 シーダがやって来た。

 警戒する。

 食べ物になにか入れないか注視する。


 一挙手一投足を確認し。

 怪しい所がないか警戒。


「そんなに見られると照れちゃいますよぉ。テツさんってば俺みたいなのが好きなんですか?」


「いや、男は別に好きじゃない」


 俺が真面目に返すと。

 アリーが吹き出した。


「ぶはっ! 冗談じゃないですか! 真面目に返さないでくださいよぉ! テツさんもシーダさんもやめて! お腹が捩れるぅ」


 アリーがゲラゲラと笑っている。

 こんなに笑う子だっただろうか。

 やはり何か盛られた?


 ソフィアを見ると少し口角が上がっている。

 やはり面白いやり取りなのだな。

 俺には難易度が高いな。


「出来ましたよぉ」


 ウィンの合図でシーダは帰って行った。

 俺たちはご飯を食べ始める。

 うん。変な物は入っていないな。


 ウィンを疑う訳じゃないが。

 誰かが入れる可能性もある。

 しかし、味付けが美味いな。


 流石はウィンだ。

 ガッツいてしまう。

 みんなあっという間に無くなったようだ。


「じゃあ、いつも通り見張りっすよね?」


 ダンが確認する。

 俺はそのつもりだが……。


「あっ、見張りは自分たちがやるのでいいですよ」


「ホントっすか!? そりゃ有難いっす!」


 普通に有難がるダン。

 おい。少しは警戒しろよ。


「いや、うちはうちで出すぞ。そっちだけだと大変だろう?」


「いやいや、慣れたもんですよ。ゆっくりなさってください」


 俺のやり取りを見かねたのか。


「テツさん。お言葉に甘えましょう? こう言ってくれてるんですし……」


 アリーは上目遣いでそう言ってくる。

 この儚げな顔に弱いのだ。


「わ、わかった。じゃあ、今日はお願いしよう」


「わかりました! ごゆっくり!」


 シーダ達を残してテントに戻る。

 まぁ、いい機会だ。

 少し寝よう。


 寝てる時も半分覚醒することが出来るように訓練したものだ。

 寝てる間に攻撃されたりして鍛えられた。

 完全に寝たら刺されるのだから必死にもなる。


 皆が寝静まったであろう夜中。

 静まり返っていた所に声が聞こえる。


「あの、普通にいい人達じゃないですか?」


「けど、演技かもしれないだろ?」


「やるんですか?」


 物騒な会話が聞こえる。

 ムクっと起きるとテントを出た。

 殺られる前に殺る。


「なんだ? 殺しの算段か? やっぱり賊の類だったか」


「聞かれたか。待て! そういう事じゃ───」


「シッ!」


 ナイフを叩きつける。

 剣で受け止められ。

 受け流される。


 体勢が崩れるがそのままベタッと地面につき。

 足で剣を蹴りあげる。


「くっ!」


 剣が宙に浮く。

 それを見逃す俺ではない。

 ナイフをつきさ────


「待ってくれ!」


 寸止めする。

 ナイフは喉に突き付けたままだ。


「俺達は……ムルガ王国の騎士団なんです」


「何? そんなの信じられるわけが────」


「それは本当なんです」


 テントから出てきたのはフィアだ。

 一体どう言う事だ?

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