第30話 乱戦
「俺達の力見せてやれ! 突入!」
ジンさんが指揮を執る。
俺は一目散に酒を飲んでるやつらの目の前に躍り出る。
「あっ?」
両手のナイフを広げたまま回転する。
四人の首をはねる。
それが、開戦の合図になった。
「何してくれてんだゴラァ!?」
怒号が飛ぶが関係ない。
ただ、淡々と賊の命を奪うことに集中する。
乱戦は得意だ。
目の前にいるやつを取り敢えず始末して目に入った奴から順番に始末する。
「なんだコイツ!?」
「この国にこんな奴がいるなんて聞いてねぇぞ!?」
誰も知らないだろうな。
昔から居る訳でもないし、別段高いランクでもないからな。
ただ、お前達は素人みたいだ。
相手が悪かったな。
次々と切り倒していたところに、ゴブリンキング程の大きさの男が現れた。
「随分暴れてくれてるじゃねぇか。放ってはおけねぇなぁ」
無言で跳躍する。
腕にナイフを叩き込む。
少し入ったところで筋肉に阻まれてそれ以上入っていかなくなってしまった。
これだけの筋肉量があったらそんな事も出来るんだな。
すぐに手を離し距離をとる。
刀を構え、居合いの構えをとる。
「なんだぁ? そんな細っこい剣で俺の筋肉を切れるわけがねぇ! ハッハッハッ!」
両手を広げて余裕の表情だ。
左胸がガラ空きだ。
強く踏み込み、一瞬で肉薄する。
スパッと左胸を切り裂き通り過ぎる。
大きな男が首を傾げて笑っている。
「なんかしたか? 全然なんとも……ゴフッ」
口から血を流して倒れる。
綺麗に切れすぎて切られていることに気付かなかったようだ。
男の腕からナイフを回収する。
男がやられた事により一層騒がしくなった。
「部隊長がやられたぞ!?」
「ヤバい! あいつ何もんだ!?」
「他の部隊長はどこだ!?」
コイツは部隊長だったのか。
そして、これ位のがあと何人か居るのか。
問題ないな。
歩きながら目に入った奴の首をはね、胸を突き、次々と数を減らしていく。
様子を見ながら戦っているが、戦況はまだあちらに分があるだろう。
こちらの陣営も負傷者が出始めている。
外の賊は粗方片付いてきた。
しかし、洞窟の中から次々と賊が出てくる。
洞窟の中に突入してしまった方が早いかもしれないな。
「ジンさん! 中に先行して突入します!」
「わかった! 俺達も続く!」
出てくる賊を次々と薙ぎ倒しながら洞窟へと向かう。おそらく、狭いところの方が仕留めやすいだろう。
賊は剣を使うものが多いようだが俺はナイフを使う。小回りでいえば俺が勝っている。
胸を突き刺し、足をきりつけ怯んだ隙に首をはねる。機械のように心を無にして賊を倒しながら洞窟の中へと進んで行った。
一本道を進んでいくと開けた空間に出た。
そこには、賊がウジャウジャと待ち構えていた。
「よぉ! よくも俺たちの仲間を殺ってくれたなぁ?」
「仲間? 仲間意識とかあったのか? 害虫が」
「なぁにぃ? 外にはデクが行ったはずだが、アイツは何やってんだ?」
苛立ちながらこちらを見てくる。
俺が来たことでそんな事も察することが出来ないのか。回転の悪い頭だな。
「デカいやつか? 死んだが?」
「アイツがやられただとぉ? お前がやったのか?」
「そうだが?」
「お前達、コイツは逃がすなよ? ここで確実に始末する!」
随分偉そうだな。
コイツがカシラなのか?
「お前がカシラか?」
「俺は一番隊の隊長だ」
一番だか二番だか知らねぇが、さっさと掛かってくればいいものを。
待てよ……何故カシラがいない?
クルリと見渡すと奥に行ける穴がある。
カシラはあの奥かもしれないな。
「かかれ!」
一番近くにいた奴が斬りかかってくる。
詰め寄ってナイフで胸を一突き。
蹴り飛ばして賊をおしかえす。
反対方向から来た奴の件を交わして足を切り裂く。蹲ったところでそいつに躓いた奴の胸を一突き。
クルクルと全方向をカバーできるように回りながら次々と敵を屠っていく。
死体の山を積み上げていく俺を見て一番隊隊長とやらは焦ったんだろう。
自らやって来た。
「お前達じゃらちがあかねぇ! どけ!」
隊長とやらは大剣を持っている。
大きい得物が好きなんだな。
取り回しづらいのによく使うもんだな。
冷静に人が使う武器の批判をしている場合ではないが、この武器を出てきた時点で俺は勝てると思っている。
「くらえぇ!」
大剣を振り下ろしてくる。
ズガァァァンッ
横で地面を抉らせている。
ニヤニヤしながら剣を振っているが。
そんなの当たるわけが無い。
「オラァァ!」
そのまま横に振り抜いてくる。
スっとしゃがんで避ける。
そのまま懐に行き胸を一突きする。
ガキンッ
という音がしたかと思うとナイフの刃が止まっている。
あぁ。だから自信満々だったのか。
鎖帷子みたいな物を着ていた訳だな。
首が覆われていたからそうかとは思ったが。
「ハッハッハッ! どうした!? もっと突いてみろ!」
両手を広げでこちらを煽ってくる。
結局死ぬことになるのにみっともない奴だな。
少し静かにしてればいいんだが。
ナイフを鞘に戻して刀を構える。
居合の構えをとる。
「なんだ? その細っこい剣は! その剣ごと叩ききってくれるわ!」
大きく大剣を振り上げた。
切られない自信があるからそんなに大振りなんだろうな。
振り下ろすのを待つまでもない。
腰を低くし力を溜めて、解き放つ。
隊長とやらの首にキラリと光が走った。
ギャンッと金属と金属が擦れる音がなる。
通り過ぎて後ろに降り立つ。
ピッと血を払うと。
ドサッと一番隊隊長なる者は倒れた。
そこから賊は大混乱に陥った。
一番強いとされていた奴がやられたからだ。
ジンさん達も来たことで賊は徐々に数を減らしていった。
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