第27話 周りの心配
「でさ、テツくんを何ランクにするの?」
ジンさんにサナさんが問いかける。
いやいや、規定に従って下さいよ。
「あのー、別に規定通りで……」
「テツくんは黙ってて!」
「……はい」
サナさんがジンさんを捕まえてランクを上げろとゴネているのだ。
ランクを上げても同じようなことはあると思うがなぁ。
サナさん的にはもう俺に偉そうにしてアリーに危害が及ばないようにして欲しいらしい。
「んー。でもよぉEランクからだと飛んでCランクが良いとこだぞ?」
「CランクからBランクって試験なんだっけ?」
「そりゃ、賊の討伐……」
「条件満たしてるわよね?」
頭をガシガシかいて「だぁぁぁぁ」と言って悩んでいる。そこまで悩まなくても、Cランクでもいいんだが?
「俺が冒険者協会の上から理由聞かれるんだよなぁ。説明がめんどくせぇんだよ。順当にいかないやつってのぁよぉ」
「ゴブリンの集落一人で二つ潰したって言えばいいじゃない?」
「はぁ? 今日も潰したのか?」
ジンさんがこちらをチラッと見てくる。
それだといけるんだろうか?
でも、証拠がない。
「ゴブリンキングの魔石はありますけど、それ以外のゴブリンは魔法で全滅させちゃって、集落があった証拠ないですよ?」
「なぁんでぇ。やっぱおめぇは面白ぇな。ゴブリンキングの魔石があれば集落があった証拠になる。奴は単体では動かねぇからな」
それは知らなかった。
魔物の生態系をよく理解してるんだな。
流石だ。
「よしっ! 今日からテツはBランク! カード出せ」
「えっ? 良いんですか?」
カードをサナさんに渡す。
CランクからBランクの壁は厚いと言われている。人の命を奪わなければ上には行けないからだ。その点、俺は沢山の命を奪ってきたからな。
「良いも何も、ゴブリンキングのいる集落を一人で潰せる奴なんてのぁAランクだ。ただ、Aランクになるには、Aランクの魔物を十体は倒せないとダメだ。これは、ハードルがたけぇんだよ。なにせ、Aランクの魔物、五層にしか居ねぇからな。まぁ、東の森以外にも出るっちゃ出るけどな」
俺がAランク相当ってことか?
五層って……。
「五層はな、Sランクも居るんだよぉ。だから、Aランクを倒すのが難しい。みんなSランクは避けるからなぁ。強さが段違いだからよぉ」
「なるほど」
「まぁ、これで少しは威張れるだろ?」
「威張りませんよ……」
「少し抑止力になりゃいいな。まぁ、さっきので他の連中もテツの強さを分かっただろうからな。丁度いいだろ?」
「いいんだか悪いんだか分かりませんね」
「まぁ、そう言うな。ほらカード」
冒険者カードをサナさんからジンさんが受け取って俺に渡してくる。
「テツくん? 今度絡まれたら、Bランク相手に出来んのか!? って言っていいんだからね? Bランクなんてこの街に、五人位しか居ないから」
「はぁ」
何故そんなに威張る必要があるのかは分からないが、皆がそう言うならアリーに相談してみるかな。
いや、アリーなら威張る事はしないと言うに違いない。
◇◆◇
「今日、Bランクになったんだ。サナさんがこれで絡まれることは無いって言ってたんだが……」
家に帰ってきて一番にアリーに報告した。
「それは、テツさんの強さが認められたということです! 私も嬉しいです! でも、これからはAランクの魔物と戦うのですよね? 気をつけてくださいね!?」
あぁ。俺の事を心配してくれているんだな。
ガイさんも魔物にやられたと言っていたから心配してくれているんだろう。
「あぁ。無理には戦わないさ」
「それより、なんで急にBランクになったんですか?」
「あぁ。ゴブリンの集落を一人で壊滅させた……か……ら……」
ヤバい。ポロッと事実を話してしまった。
アリーの目が釣り上がっていく。
「そんな危険なことをギルドはさせるんですか!? 私、文句言ってきます!」
バンッとテーブルを叩いて立ち上がる。
慌てて止める。
「いや、その……助けは呼んだんだ。ただ、出来れば壊滅させた方がいいなと思って俺がやったんだ」
「テツさんが、選択したと?」
「あぁ。そうなんだ」
すると、アリーの目から涙が溢れ出した。
あぁ。心配させてしまったか。
「私……グスッ……テツさんが死んじゃったら…………グスッ……嫌ですよ!?」
俺の胸に拳を打ち付けてくる。
ポカポカと叩いて気持ちを訴えているのだろう。
「あぁ。すまない」
「グスッ……ごめんなさい。テツさんが強いのは知ってます。けど、心配で……明日はフルルちゃんの買い物に行く予定です! 罰として、テツさんがお金払ってください!」
俺に指をさして、ニカッと笑ってくる。
アリー、俺はなその笑顔の為だったら何でもするぞ。
「あぁ。もちろんだ」
「決まりです!」
◇◆◇
次の日、フルルを連れての買い物になった。
まず、服屋さんに行きフルルが着せ替え人形にされていた。
それは長い時間店にいたのだった。
二時間位だろうか。
気がついたら日が高くなっていたと思う。
ようやく終わったと思った頃、次はアクセサリーショップに行ったのだ。
腹減ったなぁと思ってもずっとニコニコした顔で選んでいるアリーとフルルを見たら何も言えなかった。
幸せを守るのは大変なものだ。
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