転生したら前世チートで無双する

第7話 武器屋で買い物

「ここが、武器屋です！」

　中に入っていくのを追って入っていく。

　中は、ズラリと様々な武器が並んでいる。

　ナイフや剣、槍や斧、ボウガンから弓。

　銃と刀は無いようだが、その他は揃っている感じだ。

「あれー？　カタナないですねぇ？」

「いや、ナイフでいい」

　まだカタナを買おうとしているのか、店頭に並んでいるのを探している。

　あれは切れ味もあるが、本当に刀かが怪しいのだ。直刀、太刀、脇差、短刀と長さや曲がりで種類がある。

　この世界を疑う訳では無いが、そこまで分かって作っているかは怪しいものだ。

　俺は、適当な刀を持つ気は無い。

　それならば、元々この世界にあるナイフの方がいい物があるだろう。

　並んでいるナイフを見る。

　小さなナイフから大ぶりなナイフ。

　手に持ってみて手の周りをクルクル回したりする。

「すごーい！　なんですかそれ！？　遊戯団みたい！」

　この世界にもサーカスのようなものがあるのだろうか。

　その類のものに見えたのだろう。

　しかし、こういう取り回しはできて損は無いのだ。意外とここぞと言う時に生きてくる。

「あまりしっくり来るのがないな」

「えぇっ！？　そんな事やってですか！？」

「何が気に入らねぇ？」

　後ろからやって来たのは店主らしき男。

　上半身はタンクトップのような格好で下は短パン。

　筋肉ムキムキだが、俺から言わせれば無駄なものが多い。

「俺は、この幅広の大振りなナイフが好きだ。このナイフ自体は申し分ない。いいナイフだ。だが、重量が先端よりだ。だから、俺にはしっくり来ない」

　俺は、思ったことを率直に言った。

　その方がいいと直感で思ったからだ。

　少しニヤッとした気がするが。

「お前は武器のことがちゃんと分かってるようだ。こっちに来い」

　店の裏に通される。

　すると、裏にも武器が並んでいた。

　そこには刀もある。

「すごーい。こんなに奥にもあったなんて知らなかった」

「お前の親父さんも裏で武器を選んでいた」

「そうなの？　知らなかった」

「お前の親父は女のアリーには武器を見せないようにしていたようだからな。連れてきたことは無い。俺は見かけたことがあるからガイの娘だと分かったがな」

　見事なナイフが並んでいる。

　一つ気になるナイフがあった。

　幅広で大振り。

　持ってみると取り回しがしやすい。

　これは凄くしっくりくる。

　また、手の周りをクルクル回し、体の周りもクルクルと回して見せた。

「気に入ったか？」

「あぁ。これがいいな。もう一振あるか？」

「あぁ。それは元々番(つがい)だ」

　もう一振出してくる。

　両手で持つと番の意味を理解した。

　これは、凄い。

　二振り持った時の体のバランスが素晴らしい。

「そこに藁がある。試し斬りしてみろ」

　藁の前に行くとまずは刃を上に向けて順手で切りつけ、クルリと回して逆手で切りつける。

　次は左右で切りつけ交差させて切りつけ回転切りでザシュザシュザシュと六度ほど切りつける。

　綺麗に真横に切れた藁がコテンと下に落ちた。

　それを見た店主は驚いた様子で笑いだした。

「ハッハッハッ！　お前さん、良い腕してるぜ！　ハッハッハッ！　おい！　他に何が使える？」

「刀」

「クックックッ。好きなの使って切ってみろ」

　もう笑いが止まらないようだ。

　何がそんなに面白いのかは分からないが、試し斬りしていいと言うのだから遠慮はしない。

　刀も鞘に入った状態で綺麗に並んでいる。

　目を引いて離れない刀がある。

　これは、正しく刀だ。

　鞘はシンプルだ。

　漆黒の黒。

　抜いてみると綺麗な波のような乱刃だ。

　これは刀を作る工程で出来る紋様である。

　持った時の重心、持ち加減。

　俺の為にあるのでは無いだろうかと言うぐらいしっくり来る。

　藁の前に立ち鞘を左の腰の横に持っていき、右足を少し出して左足を引く。

　大きく息を吸い、大きく吐く。

　また吸う。

　ピィーンと空気が張り詰める。

「ふっ！」

　刀が一瞬で鞘から振り抜かれた。

　藁はそのまま立っている。

「おいおい！　空振りしたのか？」

「ん？　何言ってる？」

　俺はそう言ってツンッと刀で藁を突いた。

　すると、ドスッと真っ二つになった藁が落ちた。

「ハッハッハッ！　俺は幸せだ！　こんなに幸せなことはない！　俺は、これを出来る者を待っていたのだ！　これが出来るものは、刀の神だ」

　両手を広げて嬉しそうに天を見つめる店主。

　大笑いをして上機嫌だ。

　神だとか言っていたが大袈裟では？

　テツはほぼ常識がないものだから、何が難しくて何が簡単とされているか。

　世間の評価など、知らないのである。

　だから自分のした事の凄さが、何も分かっていないのだ。

「ふふふっ。テツさんは神様だって？」

　アリーは横で嬉しそうにニコニコしている。

　言われたのは俺だぞ？

　何がそんなに嬉しいんだか。

　やはり機嫌がコロッと、直った。

　女性とはやはり難しい。

「おい！　おまえテツって言ったか！？　それ、両方やる！　好きに使え！」

「いいのか？　かなりいい物だぞ？　どっちも」

「お前以上の使い手が現れるとは思えねぇ。そのナイフと刀も本望だろう。大切に使ってやってくれ」

　店主は頭を下げてきた。

　こちらも頭を下げる。

「ありがたく頂戴する」

「儲けもんだね！　テツさん！」

「いい店を紹介してくれて有難い。感謝するぞアリー」

「ふふふっ。どういたしまして！　じゃあ、行こっか！」

　表に戻ると、店主が慌てて追ってきた。

「おい！　テツ！　何かあったら手入れは任せろ！」

「あぁ。そんときは頼む」

「また来いよ！」

「あぁ」

　手をふらっと挙げて店を後にする。

　いい方に転んだな。

　俺が気にいられてよかった。

　前世では文句をつけすぎて出入り禁止になった店もあったからな。

　ホントに店主に感謝だ。