『現地取材にどっか行こうと思うんだけど、行かね？』

「行かねぇ」

『坊主君もいっ』

　おじさんは何か操作した後、スマホを座卓に置いた。相手の声はもう聴こえない。

「おじさん」

　おじさんは作業机に戻る。椅子に腰掛ける前に、スマホが鳴り出す。

「出るなよ」

　僕の方を見ずに言うから、つい、出ちゃった。

◆◆◆

『おじさんと坊主』より、秋野森嵐と草名木二葉、ついでに桜桃院椿（おうとういんつばき）。

　BL作家の桜桃院（23）、本名で書いてやす。

　大企業の社長の息子（次男）、一番好きな花は薔薇。薔薇にまつわる物語を集めている内にBLと出会い沼落ち、小説を書くように（絵は絶望的に下手）。

　おじさんとは何度か一緒に仕事をし、個人的にもおじさんの絵が好きだから、一から何か一緒にやりたいと思い、ビジュアルノベル制作を持ち掛ける。

　そのビジュアルノベルのテーマがホラー×BL。

　美坊主or神主の息子と友人以上恋人未満だったらいいのに。

「お前っ……また呪われているじゃないかっ！」

「祓って祓ってー」

　みたいな。

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