夫婦の初対面 ◆〈400字〉

 私を買った旦那様は、最初は目を合わせ、ぎこちなくも笑みを向けてくださったのに、今や膝から崩れ落ちて項垂れている。

「え、新種? それとも別? いや別とかいるのか?」

「取り敢えず吸血鬼だから良いじゃないですか」

だったらまだ気が楽だけど……銀髪って」


「私が銀髪だと、何か問題あるのでしょうか?」


 膝を落としても、旦那様のつむじが近くなっただけ。見下ろす形になってしまうのは申し訳ないけれど、それを問題にしてくるようなら、貴方が顔を上げればいいと言うだけだ。

「この髪自体が数少ない誇れるものでして、髪色を変えるとなれば、毛を傷めるようなことをしなければいけなくなるのですが、私に拒否権はないのでしょうか?」

 まぁ、人間の染色剤って合わないから、一日で色落ちするのですが。

「……いや、そこまで求めないさ」

 力なく笑い、旦那様は顔を上げる。

「アルフェラッツのスカーだ、これからよ」

「本名を教えてくれませんか?」


◆◆◆


 八月でしたっけ、開催のコンテスト概要見て思いついた話。


 魔法使い『アルフェラッツのスカー』ことクロード・アルフェラッツ

 吸血鬼にして一応嫁『アルフェラッツの灰かぶり』ことブランカ・ホバート

 スカーの相棒であるアッシュ


 王族・人外・魔法使いなどに嫁入りするお話書いてねってあり、何故でしょう、人里離れた場所に隠れ住む、卑屈で悲観主義で顔に傷のある男がパッと浮かび、ざっくりした設定が……。


 黒本世界線の魔法使いは吸血鬼の涙を口にしないと魔法が使えず、実験体とかよく仕入れてる闇市から、吸血鬼、それもバッキンガムの子供達の一種・シェフィールドの吸血鬼が入ったよと言われ引き取ってみたら、シェフィールドじゃない(彼らは白髪赤目の吸血鬼なのです)。

 銀髪赤目のホバート、そんな種類はいなかったはず。

 でも流した涙を口に含めれば魔法は使える……え、ホバートって何?


 ホバートの謎、不平等同盟とのなんやかんや、近くの街をこっそり守り楽しんでいくような、そんな話を書いてみたくなったけれど──うーん。

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