第69話 高コストの魔法とは
「私はマナを4支払い、<水神殿の祈祷師>を召喚し、効果で<黒の魔導士ゴフェル>を[凍結]させます」
水神殿の祈祷師 4/4000/5000
相手ユニット1体を[凍結]させる
既に[凍結]している相手を選択した時、そのユニットに対し2000ダメージを与える
「更に、4支払い <水神殿の泉の精>を召喚」
水神殿の泉の精 4/2000/3000
このユニットがフィールドに出た時に、相手フィールドに[凍結]しているユニットがいた場合、そのユニットに対し4000ダメージを与える
<水神>は凍結したユニットに対してダメージを与えるカードが多く、コンボとして使用するのが前提のカードがいくつかある。
反面、手札消費が激しい為注意が必要。
「僕は7マナを使用し、<試作型魔導砲塔バルカンファランクス>を使用します」
<試作型魔導砲塔バルカンファランクス> 7
このカードはセメタリーに<魔導師>ユニットが3枚以上存在しないと発動することができない
このカードは使用した後、セメタリーにいかずデリートされる
1000ダメージを25回プレイヤー以外にランダムで振り分ける
この魔法は対象が破壊されても振り分け先から削除されない
基本的に魔法カードというのは、ユニットと違い一発打ってしまえば終わりでフィールドに残らない。
その為よっぽど強力でなければ高コスト帯では基本的にユニットが多く採用されているという事情がある。
そんな中で仕方がないとはいえ高コストの魔法ばかり採用される[魔導師]が環境にいる理由。
純粋に魔法が強いのである。
この<試作型魔導砲塔バルカンファランクス>は一度使うと再利用ができないというデメリットがあるが非常に凶悪な性能を持っている。
そしてこのカードの強みとして敵味方問わず的になるためコスト比でダメージが高く、更に対象を取らないため<水神殿の防衛機構>の効果はすり抜けて全体にダメージが入るというおまけ付きだ。
<試作型魔導砲塔バルカンファランクス>を使用した瞬間ガトリングガンのようなものが出現する。
その刹那凄まじい轟音と共に砲塔の回転軸が固定されていないのか弾丸をバラマキながら暴れまわり<水神殿の祈祷師>や<水神殿の防衛機構>や<魔導師学院の実験棟>に突き刺さる。
残弾を打ち尽くし消え去る頃には場に残っていたのはタフネスを3000残した<水神殿の防衛機構>のみ。
そして「この魔法は対象が破壊されても振り分け先から削除されない」というのは、例えばタフネス3000でダメージを3回受けて0になったとしても、その場では破壊されず選択対象として残り続けるという意味だ。
乱数が偏ってしまうと複数ユニットがいても1体だけに集中してしまう…ということもある。
「僕はデッキ内のカード3枚をセメタリーへ送り、<魔導師学院の実験棟>を復活させます…更に2コストを使用して<魔導師の火球>を復活した<魔導師学院の実験棟>に使用し、更にカード3枚をセメタリーへ送って復活させターンを終えます」
魔導師の火球 2
対象の相手に対し3000ダメージを与える
天馬はこのターン、デッキから6枚のカードをセメタリーへ送った。
基本的にこのゲームにおいて手札は非常に重要であり、手札を捨てるという行為は重く見られ、反面デッキから直接セメタリーへ送るという行為はかなり軽く見られるため、セメタリーを肥やすにはデッキから送るのが手っ取り早い方法なのだ。
「何か企んでいらっしゃるようで」
「それがカードラプトですから」
「仰るとおりですな、では私は8マナを支払い、<水神殿の最高司祭>を召喚しましょう」
水神殿の最高司祭 8 12000/10000
このユニットが場に出ている限り相手は手札からコスト5以上のユニットを召喚する事ができない
<水神>のエース。
非常に強力なロック性能を持っており、場が空の状態で出されると最高にキツく登場当時は出せばそのまま決着がついてしまうことすらあった。
このカードは手札にあるカードのコストの数値で判断するため、テキストでコスト軽減効果を記載している<大厄災の魔導師ディアドラ>も召喚することができない。
また、<水神殿の最高司祭>が防げるのは手札からの召喚のみの為、例えば魔法カードの効果やユニットカードを経由した召喚、ジョイント召喚等は防ぐことができない。
そういう意味でシーズン11では時代に取り残されたカードという扱いになっている。
「更に余った1マナで<水神のしもべ クルオラ>を召喚します」
水神のしもべ クルル 1/1000/3000
[盾持ち]
このユニットは攻撃できない
「では、僕のこのターンで<魔導師学院の実験棟>が破壊され、研究成果が出現します、この効果は手札からではありませんので、そちらのカードでは邪魔をされません」
一見して少し高めのビルのような<魔導師学院の実験棟>が破壊され、その中から紫色の二対の頭を持つ怪獣が出現し、その瞬間に背中にある多数の突起物が発射され
場にいる全員に降り注いだ。
「いっててて…出たのは…<研究成果4号>のようですね」
魔導師の研究成果4号 7/9000/7000
このユニットがフィールドに召喚された時、自分以外の全てに防御効果を無視して5000ダメージを与える
[鉄壁]
このユニットが破壊される時、自分以外の全てに防御効果を無視して3000ダメージを与える
研究成果シリーズの1体。
相手の場にユニットが多数存在していたり、お互いのライフがあまり減っていない場合に選出されやすい。
ステータスこそ低めなものの登場時にあらゆる全ての効果を貫通して5000ダメージを与える破格の性能を持っており、更に死亡時効果も含めれば大体の盤面を更地にできる。
特殊裁定として、どちらかのプレイヤーのライフが5000以下であれば絶対に選出されない。
この効果によりレオンのフィールドにはタフネス5000の<水神殿の最高司祭>のみが残り、天馬のライフは42000、レオンは50000となった。
「ふむ…」
レオンはあくまでも余裕を崩さない。
ここで天馬も違和感に気付く、レオンに勝つ気がまるで感じられないのだ。
このようなやり方を取った以上、少なくとも勝つ気があると算段を付けて望んだはずだ。
そして天馬が出てきた事が計算外であるのであれば少なくとももう少し表情に出るはずと天馬は考えた。
なのに彼は始終表情を変えない。
つまりレオンには勝つ気がないが何かしら有効な手立てがある、という事になる。
「私は4コストで<氷河期>を使用し、更に4コストで<ワカサギ釣り>を使用し、効果で2ドローします」
氷河期 4
セメタリーの<水神>ユニットを2体デッキに戻して発動することができる
お互いのユニットを全て[凍結]させる
ワカサギ釣り 4
フィールド上の[凍結]しているユニット1体につきカードを1枚ドローする
ドローできるカードの上限は5枚である
この2枚のコンボは発売前広報で一緒に紹介された有名なデザイナーズコンボで、<水神>が多くのデッキに出張採用されるほど多様された。
実際に<水神>メインのデッキでもネックであった手札消費の激しさをうまく補ってくれる非常に有用なコンボだ。
「僕は5マナで<魔導師の罠 チェーンライトニング>を<水神殿の最高司祭>に使用します」
魔導師の罠 チェーンライトニング 5
相手ユニットに対し3000ダメージを与えた後、相手プレイヤーに2000ダメージを与える
この効果で相手ユニットが破壊された場合、相手プレイヤーに与えるダメージは4000となる
このカードがマナを支払って発動されずにセメタリーへ送られ、更にセメタリーにこのカード以外の<魔導師>カードが存在する時、このカード自身をデリートすることによりこのカードの効果を発動することができる。
この効果を使用後、同じターン内に<魔導師の罠>という名称のついたカードを使用することはできない。
この効果で<水神殿の最高司祭>のタフネスは残り2000となったが、レオンへのダメージはバリアに阻まれ無効となった。
「更に…5マナの<光の魔導師ファーネス>を召喚し、カードを1枚ドローして終了します」
光の魔導師ファーネス 4/5000/2000
このカードがコストを支払ってフィールドに出た時
カードを1枚ドローする
ユニットの性能としてはそこまで高くはないが、[魔導師]は強力なユニットが少なく、ドロー効果は優秀なため基本的には仕方なく投入され強いカードが出ると抜けていくタイプのカード。
カード効果などで召喚してもドローは発生しない点に注意。
「私はこのターン、7マナを使用し<水神に剣を捧げしもの>を召喚します」
水神に剣を捧げしもの 7/5000/9000
フィールドに<水神>ユニットが存在する時、アタックが+3000される
「<水神の冷気>を<魔導師の研究成果4号>へ使用してターンを終えましょう」
水神の冷気 2
このユニットがフィールドに出た時、セメタリーに<水神>カードが存在する場合、対象1体を選択し、3000ダメージを与えて[凍結]させる
<水神>最強のカードと言っても過言ではない魔法カード。
<水神>カードをデッキに入れてなければ使えないが2マナで3000ダメージに加え凍結は破格で、この世界でも元の世界でも水神を低コストで固めてこのカードを入れる、という事がたまにあるほどのカード。
登場から軽く10年以上経過しているが未だに代替が見つからないカードでもある。
「更に<水神殿の最高司祭>でプレイヤーを攻撃いたしましょう」
<水神殿の最高司祭>が手に持った錫杖で天馬の右肩を殴りつける。
これで天馬のライフは30000となり、レオンとの差が広がる。
12000ものダメージを喰らい、流石によろけてたたらを踏み、攻撃された右肩を抑えながら天馬はレオンに対し口を開いた。
「……レオンさん、一つ聞いてもよろしいですか?」
「何ですかな?」
「何をそんなに後ろを気にしているのですか?」
その瞬間、レオンの顔が一瞬だけ真顔になったが、すぐに人懐っこい顔に戻ったのを天馬はもとより、天馬やオズワルドも見逃さなかった。
「いえいえ、後ろに控える執事は昔から僕につらく当たる人でね、怒られないかビクビクしているのだよ」
そう言われた執事は後ろで表情を変えず一礼をする。
「なるほど、そうですか」
天馬はあくまで真顔で対応する。
(苦しいだろうそれは)
そう心のなかで思いながら。
「僕は<魔導師の罠 チェーンライトニング>を再度、<水神殿の最高司祭>へ使用し、この効果でプレイヤーに4000ダメージを与え、更に3マナを支払い<魔導師学院の居眠り生徒>を召喚します」
魔導師学院の居眠り生徒 3/1000/1000
このユニットがフィールドに出た時、カードを4枚引き、1枚を選択しデッキの一番上に置き、残り3枚をデッキの一番下に戻す。
デッキトップ操作用カード。
ステータスは劣悪だがユニットであること自体が非常に強い。
「更に、<魔導師の運試し>を発動し、魔法カードを宣言してカードを1枚ドローします…魔法カードではないのでそのままセメタリーへ送ります」
カードタイプを宣言し、その後カードをドローする
宣言したカードタイプと違ったカードであった場合、そのカードをセメタリーへ送る。
「デッキ圧縮か」
「そのようですね」
カーネルとオズワルドは冷静に戦況を見守る。
デッキ圧縮とは、お目当てのカードを引く可能性を上げるためにデッキの枚数を減らす事である。
「しかしこのタイミングでデッキ圧縮とは大丈夫なのでしょうか…?」
「まあ大丈夫であろうよ」
「…信用しているのですね」
「ああ、何度も言っているが私は義弟の闘いをこの目で見て彼がこの国で一番強いと確信しているからな」
真顔で言い切るカーネルにオズワルドは懐疑的な目を向ける。
「そこまで信用されているというのは、羨ましくもあり恐ろしくもありますね」
ジョシュアがそう言いながら戻って来る。
「戻ったか、どうだった?」
「バッチリです」
「そうか」
「<光の魔導師ファーネス>でプレイヤーを攻撃し、ターンを終えます」
これでレオンのライフは41000、場には<水神に剣を捧げしもの>のみとなった。
「私は6マナで<水神殿の用心棒>を召喚します」
水神殿の用心棒 6/6000/7000
フィールドにこのカード以外の<水神>ユニットが存在する場合[盾持ち]を取得する
このカードの次に<水神に剣を捧げしもの>を繋げるのが理想とされる、<水神>の優良ユニット。
「更に私はマナを4支払い、<水神殿の祈祷師>を召喚し、効果で<魔導師の研究成果4号>を[凍結]させます」
「先程から<魔導師の研究成果4号>の行動を縛り続けているな、このあたりはレオンも流石と言ったところか」
「動けば9000、ユニットに突っ込まれてもほぼ間違いなくお互いの盤面が更地になりますからね」
「とはいえもう手札の枚数的にも限界であろう、そろそろ均衡が崩れそうだな」
カーネルがそう言った通り、次ターンより大きく事態が動き始める。
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