第19話 ミラー?マッチ
案内された試合場で俺はネフィさんに<運命の女神セレクター>の召喚口上を教えるとかなり驚いていた。
そりゃそうだよな、呪文詠唱が必要だなんて誰も想定なんかしてない。
俺は家同士の諍いに無関係じゃないと言ったもののその実バリバリの無関係だ、だがハルモニア家はどう見ても怪しい人間だったから何も取り上げず、ある程度の自由意志を許してくれる形で契約してくれた。
当然カードの譲渡という打算もあるんだろう、だが少なくとも俺がハルモニア家に拾われたことは最善であり幸運であったと思ってる。
そういう意味でハルモニア家に非があるとはいえ、ちくちく言葉で虐められているのを見ていい気分にはならないぐらいの感情はある。
多少の恩返しぐらいはしたいのだ。
後クレアにいいところ見せたいというのもある。
「では始めましょうか、先攻はそちらで」
俺がネフィさんに声を掛ける。
「見たことのない<運命>カードを見せて頂けるとの事で、楽しみです」
ネフィさんはニコニコ笑顔に戻っている。その表情いつまで持つかな?
「<運命の使徒アシダマ>を召喚し、[選定]効果1を発動します」
運命の使徒アシダマ 1/1000/1000
[選定]
1.このカードが破壊された時、カードを1枚引く
2.自身にタフネスを+1000し、[盾持ち]を付与する
<運命>デッキはシーズン5では最強、6でも上位に位置したデッキだ。
どのぐらい強かったかというと今ネフィさんの出した<運命の使徒アシダマ>が10年以上経過したシーズン11でも初動で活躍しているぐらい。
[選択]カードはステータスこそ低めだが効果の選択肢が多岐に渡るため柔軟なプレイングが可能で、更に軽量ユニットの性能が高かった。
それもあり軽量ユニットの投入枚数はシーズン11でもあまり代わっていない。
「俺も<運命の使徒アシダマ>を召喚し、[選定]効果1を発動し終了」
「<運命の使徒アシダマ>で<運命の使徒アシダマ>を攻撃し、カードを1枚引きます、その後<運命の使徒コケン>を召喚、[選定]効果1を発動します」
運命の使徒コケン 2/1000/2000
[選定]
1.相手に1000ダメージを与える
2.このカードが破壊された時、ライフを2000増やす
うん、先に攻撃している、ちゃんと基礎はできてるな。
カードラプトはどのタイミングでも戦闘ができるため、ドローソースを開放してからマナを使用する、というのが一般的なセオリーとなる。
そして俺も<運命の使徒アシダマ>が破壊された為ドローする。
うん、切り札引き込んだ、これで負けはない。
そしてコケンの攻撃が俺に入る、1000ダメージ程度なら涼しい顔ができるようになった、慣れって怖い。
これで俺のライフは49000。
「俺は<闇の旅行かばん>を2マナで発動し、[選定]効果2を発動」
闇の旅行かばん 2
[選定]
1. 2000/3000の[怪しい旅行者]を召喚する
2.<フォースフィールド>のカードを2枚手札に入れる
「<運命>でない[選定]カード…?」
ネフィさんの表情から一瞬だけ笑顔が消える、うん、見たことないよな。
これはエラッタ済みのイレギュラーカードだから。
<フォースフィールド>ははっきり言ってデッキに入れるには邪魔なカードだが選定効果で2枚出てくるなら話は変わってくる。
「私はこのターン、2マナ支払って<運命の羅針盤>を使用し、[選定]効果2を発動。<運命の使徒コケン>で攻撃」
運命の羅針盤 2
[選定]
1.2/1000/2000の[盾持ち]を持つ<運命の柱>を召喚する
2.2ターン後に4/3000/3000 <運命の使徒ハダク>を召喚する
「俺は3マナで<運命の使徒ラクトン>を召喚し、[選定]効果1を発動、<運命の使徒コケン>を攻撃」
運命の使徒ラクトン 3/2000/4000
[選定]
1.[速攻]を得る
2.[盾持ち]を得る
そう、<運命>は低マナ帯はひたすら地味なのだ、いきなり殴りつけたりはせずちまちまアドバンテージを稼ぐ、そういうデッキだ。
時間が少し飛んで5ターン目のネフィさんのターン、向こうには4/3000/3000の<運命の使徒ハダク>がいる。
こちらの場には<運命の使徒ラクトン>が2枚、後に出した方は効果2で盾持ちを付与している。
「私は4マナで<運命の巫女フォーテーリ>を召喚し、[選定]効果2を発動、1体目の<運命の使徒ラクトン>を攻撃します」
<運命の巫女フォーテーリ>4/2000/4000
[選定]
1.ユニット1体に[効果無効化]を付与
2.ユニット1体に2000ダメージを与える
フォーテーリ強いんだよね、俺のデッキにも入ってる。
このカードはあまりの強さにシーズン7で4/2000/2000にエラッタされたが、その後のインフレにより4/2000/4000に再修正された逸話がある。
「<運命の巫女フォーテーリ>と<運命の使徒ハダク>を使用し…ダブル召喚」
「運命を司る女神よ…有象無象の岐路より選びし我が道の正しさの証明を願う…<運命の女神セレクター>を召喚!」
<運命の女神セレクター>x/5000/8000
<運命>と名の付く4コストのユニット1体+4コストのユニット1体
このカードの[選定]は毎ターン使用することができる。
[選定]
選択1.セメタリーにある<運命>と名の付く4コスト以下のカードを手札に戻す
選択2.デッキの<運命>と名の付く魔法カードを墓地に送る
1ターンに一度、墓地にある4コスト以下の<運命>カードを選択し、このカードの下に置いても良い。
このカードの[選定]の内容を墓地にある<運命>と名の付くカードの[選定]の内容に変更する
<運命の女神セレクター>はフィニッシャーというよりもデッキエンジンに近い。
OUは毎ターン自身の効果で毎ターン打てるので墓地のカードを毎ターン複写し続け、ドロー・除去・直接攻撃等コンボ要員として役に立つ。
ネフィさんもセクトも顔を綻ばせて喜んでいる、まあ初めて召喚したならそうなるか。
ただな、タイミング的にここで呼ぶのは純粋なプレイミスだ。
国家対抗戦の事を考えるとこのあたりも教えていかないとダメだな。
どうせ俺がカードを投げた貴族家が出場するんだし。
「<運命の女神セレクター>の効果で…<運命の羅針盤>の[選定]効果をコピーし、[選定]効果2を発動します。このターンは攻撃しません」
これで2ターン後に再び<運命の使徒ハダク>が召喚される。
「俺はワースカード<運命狂恫態ガベルザード>を5マナで召喚」
<運命狂恫態ガベルザード>5/3000/11000
ワースカード
このカードが場に出た時、以下のルールを追加する。
このカードの持ち主の場の全ての[選定]効果が両方発動するようになる。
<運命狂恫態ガベルザード>が場を離れた時、ルールは削除される。
シーズン9で出てきた<運命>のキーカード。
ワースカードであるという点が欠点だがマナコスト比であり得ないスタッツにとんでもない効果が付与された悪魔のようなカードだ。
なにせどちらか片方しか使えない[選定]が両方発動するのだ、強いに決まっている。
これを出してなんとしてでも生き残らせてめちゃくちゃにするのが<運命>デッキのセオリーだ。
「俺は<フォースフィールド>を発動、手札のもう1枚の<フォースフィールド>を墓地へ送ることで発動コストは0となる」
フォースフィールド 5
[共食い](マナコストと同じコスト数のカードを手札から捨てることにより、マナコストを支払わず召喚できる)
次の自分のターンが来るまで、味方ユニットに[食いしばり]を付与する。
俺が2ターン目に出した<闇の旅行かばん>が<運命>ではないのに[選定]を持っているのはこのカードと<運命の女神セレクター>のせいだ、元は<運命の旅行かばん>という名前だったが、<運命の女神セレクター>のコピー効果で毎ターン<フォースフィールド>を張ってクソゲーに持ち込む戦法が多発した為、名前ごとエラッタされてしまったのだ。
ネフィさんが長考に入った、顔はまだ微笑を浮かべているが余裕はなさそうだ。
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