第3話 僕は一般人
「他に地表から近い場所はなかったので、安全に赤珊瑚亭へと到着した我々は
絶海の孤島の如く漂流した機工惑星の中にいる」
「違うね、こんな書き方じゃ伝わらないよ。
そもそも私たち星間座標幾つにいるのさ」
「知らない。持ち帰って業務をしていて逃げ出した僕は
何も持っていないから何も知らない!」
「知らないって、あんたね!お嬢ちゃんのエネルギーは補給しておいたけど、
あの子使えるの?」
「僕のアルストロメリアは
僕がピンチの時に助けてくれるようにカスタムしてあるから
用心棒くらいにはなる」
「それって“僕”しか助からないじゃない?」
「そんなこと言われたってここに使えそうなドールは他にいないんだから、
それくらいしかすることが無かった」
溜息があたりを埋め尽くす中、赤珊瑚亭の主人は建物のマザーシステムに
アクセスして得られる情報を集めていた。
「現在うちは地下三階まで破損、システムをシャットダウンしてある。
地下四階、五階、六階までで使えそうな内部通路と地図はこれだ。
星間航路全線はあてにしない方がいいが、他に宇宙への脱出経路というと
緊急ポッドくらいか?
おい、あんた何か知らないか?」
「知らないかもなにかも一般人ですよ僕は。
このドールをカスタムしただけの一般企業に勤める一般人。」
「外部監視を逃れての飲酒をやらかさなければならない一般人を
私は知りませんけどねー。
あんたがどこの誰かなんてどうでもいいから、
私たちをこの場から脱出させてくれませんかねー」
「酸素がいつまでもつか俺は知らねぇからな」
赤珊瑚亭の主人の一言で僕の手が汗でじんわりと湿っていく。
「この建物のマザーに接続できる端末はありませんか?
あと使えそうな機工品何でもいいので下さい!」
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