episode No.9 幻影と小物


「はぁ.....」


(これどうしよ.......避けてばっかではたから見れば反復横跳びしてるだけだしな.....)


 俺は息切れ混じりのため息を吐き、思考を巡らせる。今の状況ははっきり言ってゴミ、というか何で俺はこんなマジになってるんだろう?相手の姿も見えないし。途中途中影のやつでクソ痛いし、というかなんで全部喰らってるのは見えてる影だけなんだよ。死角からリンチに出来るだろ........ん?


 無限に出てくる影........


 見た影しかダメージを受けてない........


 そもそも何で槍を持ってるんだ.......


 能力だけで充分.......じゃないのか?





(..........?あれ?なんだか分かってきた?)



 俺は状況を整理し、能力に穴があるのを考え、意を決して影に囲まれている中、足を止め、目を閉じた。


(.........1........)


 俺は1秒間目を閉じ、1秒後目を開けた。


「ビンゴ。」


 目を開けると、周りに居た筈の影がいなくなり、目の前に刺そうとしている対戦相手の姿があった。


ゴン


 俺は突く途中の槍の痛く無い部分に思いっきり腕で押した。


「えっ.........」


 相手の態勢は崩れ、立て直そうとしている。その隙に俺はバッグからとっておきを取り出し、相手の顔がこっちに向いてくるタイミングで.........


ヌッチャ


 とっておき......相手の顔にゴキブリホイホイをくっつけた。


「あっ.......何.......へ.....?」


 しかもただのホイホイじゃ無い。両面テープの様に片方をあらかじめ外しておき、くっ付いたらもう片方も剥がす........そうすると、外そうとすれば手もくっつき、相手は火にガソリンを取る様な、まさに地獄絵図。無論相手は大変無様で、視界不良&片手制限という何処ぞのハキバでも無い限りマトモに戦えない。


「はぁ......ヤバイ........」


 相手は焦った様に再び影を出してきた。しかし、さっきと比べて明らかに数が少ない。目を開けた時に消えていたが、瞬きでは消えなかった.......恐らく影を出し続けるにも体力が必要なのだろう。


(あれ......?........なるほど。)


 相手が影に隠れた。今まで姿が見えなかったのは、影に隠れていたからだろう。俺は相手が隠れた影に向かって、手元にある釘バットを思いっきり投げた。


グシャッ


「があぁ.........」


 投げた釘バットが、相手の胴体に当たり、気分が悪い音がなった。そして


ビッビ-ッッビー


 試合終了の合図が響く。


「以上で第二回戦を終了します。選手は速やかに自席に戻り、次の試合の準備に取り掛かってください。」


 試合終了後、俺は対戦相手の方に近づき、


「すいません、これ取るのにどうぞ。」


 ベビーパウダーとペットボトルに入れた菜種油を渡した。


「それじゃ、自分はこれで。」


「あっ、ちょっと待っ」


 俺は気まずい空気になる前に、さっさと自席に戻って行った。



『????研究所???』



「よっしゃ!では賭け金5万!頂かせていただきます!」


「マジっすか.......買ったと思ったんですけどね......」


(やっぱりコイツ状況判断が馬鹿高いな......コイツ向いてるかもな......まぁいいや!今日は徐々園だ!)






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