5話 -結城日向- 男の夢がつまった果実

「これで全員かな?じゃあ始めるよ〜」


土曜日の放課後。トリケラトプスの声が響き渡る教室で俺は不満を感じていた。

いつもなら午前に授業が終わって、今頃は家で録り溜めたアニメでも見ている時間帯だ。

今週は東○いさなのワンダフルなボディが動く様子を見る予定だった。


くそ、なんで俺がこんな面倒な実行委員をしなきゃいけないんだ。


「ねえねえ、同学年なのに見たことない子ばっかりだね」


宮原が耳元でコソコソと話しかけてきた。

決して卑猥な事は考えていないが、耳に変な感覚が残る。

前言撤回。実行委員幸せすぎるだろ。


「そうだな。俺は宮原しか知らねえわ。」

「こんな人数いてそんなことある?笑」


宮原は俺の発言に笑った。が、この宮原の笑顔は顔に貼り付けた感があった。


最近の宮原はずっとそうだ。いつもの元気なケラケラした笑い方をずっと見れていない。

心做しか、教室でも1人でいることが増えた気がする。


何かあったのかと思って聞こうとするが、彼氏でもない俺にそんな権利があるのか?と留まってしまう。


勿論それだけではない。

嫌われたくないという理由で深く干渉していないというのもある。

つまり逃げだ。


そんな自分につくづく嫌気がさす。



「えっと、まずはそうだなー、自己紹介とかからいくかー。じゃあ宮原から時計回りでお願いー」


トリケラトプスの気だるげな声で指名された宮原は、席を立って少し緊張した様子で自己紹介を始めた。


「実行委員長になった、宮原琉衣です。顔見知りの人は少ないのでこの修学旅行で仲良くなれたらな、と思っています。みんなで素敵な思い出を作りましょう。よろしくお願いします。」


宮原が席を座ると、俺の方に目を向けてきた。時計回りとなると、次は俺の番か。


「副実行委員長になった、結城です。よろしく。」


端的に挨拶を済ませて座ると、俺の隣のチャラそうな奴が席を立って自己紹介を始めた。


「実行委員長可愛いから修学旅行、まじ楽しみなんだがー。吉川蒼っす。よろ〜」


宮原狙いか。渡さねーよ、ばーか。俺の彼女じゃねーけど。なんか悲しくなってきたな。


「川崎つぐみ。皆が、楽しかったなってちょっとでも思えるような修学旅行にしたいと思ってる。よろしく。」


川崎つぐみ。こいつもなんというか、すげー美人だ。宮原とは違うタイプの綺麗系美女。お姉さんタイプ。あと、宮原と違う点はなんというか、、、。


「(なあ、でかくね??)」

「(うるせえよ。)」

隣の吉川が俺に耳打ちをしてきた。初対面なのにうるせえとか言っちゃった。てへ。


正直に言おう。本当は俺もそこばかり見てしまっていた。そして、そこに夢を抱いてしまった。


直接的な表現で書くなら。


揉みてーな。と思った。


最低なのは分かってる。でも、許してほしい。俺は男だ。性欲と好きな人は違うのだ。


そんなこんなで、実行委員全員の総勢15人ちょいの自己紹介が終わり、今日はこれで解散という流れになった。

1人でさっさと帰ろうと支度をしていると、隣にいた吉川に話しかけられた。こいつじゃない方の隣に話しかけられたかったな。


「結城君だっけ〜、よろしくなー。かおてきにきめるけど、結城君って巨乳派だよな。ちなみに俺は、胸なら何でも夢を抱くタイプだ。」


こいつ初対面に何言ってんだ。

俺は返事を色々と考えた結果、無視をする事にした。


「えっ!結城君、無視?!?!」

早足で教室を出ようとすると、早足で吉川も追いかけてきた。


「結城くーん、一緒にかーえーろー」

死んでも嫌だ。

こいつメンタル最強かよ。両○勘吉かよ。


纏わりついてくる吉川が鬱陶しかったから、さっきの質問に答えることにした。


「俺は、巨乳派なわけではない。大きさなんかで判断しない。俺は、お椀型の綺麗な形のおっぱいが好きなんだ。」


ど真面目な顔で答えると、吉川は「おぉっ、、」とだけ言ってキラキラした目を向けてきた。


「男子って本当に、胸好きよね。胸なんてあったところで何も変わらないのに。」

おいおい、それを川崎が言うか。いつか殺害予告されるぞ。


「何も変わらない、、、?じゃあその胸よこせよ、、。てか1回揉ませろよ、、」


俺と同じように教室を出ようとしていた宮原のとんでもない発言が聞こえた気がしたが、俺は何も聞いていなかったことにした。

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全力出さずに死にたい。出来れば、死ぬまで働きたくない。 円丸 @kitakubu0509

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