傭教施設の裏仕事
傭教施設のおかげで、傭兵見習いの死亡率は著しく低下していった。
だが、それだけでは低下していっただけで、0《ゼロ》になったわけではない。
そのため、傭兵ギルドは裏でクロヤや、サナカなどの信頼できる傭兵にある依頼をしていた。
それは、大陸に蔓延る魔物の主を討伐することである。
確認されているだけでも、魔物の主は現時点で7体であり、元々は30体もいたのがクロヤ達の活躍のおかげで、この裏の依頼所ができてからの数ヶ月で23体が討伐された。(本当にこれはあり得ないことなのだ。世界最強とも言われた先代帝国の皇帝でさえ、その魔物達の威圧に耐えれず戦意喪失したほどである。)
今回の王国についての一件。
実はついでであり、サナカは裏の依頼所の窓口で、万が一盗み聞きされても大丈夫なよう、表向きの依頼をデモ鎮圧として、裏では王国の北に位置する魔物の主の調査を依頼していた。(王国での一件でそれは失敗したが……。)
残りの7体はどれも強力で、7体が手を組んだ場合、どの国も勝ち目はないと言われるほど。
しかし、その7体は何かに怯えたように自分のナワバリから離れようとしない。
理由として、
約1200年前のことだ。この時シロネットは、元々一つの国で、人間、獣人、魔物、摩訶不思議な生物たちは、それはそれは平和に暮らしていた。
魔物もこの時代までは、知能を持ち、人間や獣人たちと協力していたのだ。
そう、この時代までは。
○○○○
(ある少女の回想)
「そーれ、とってきなさーい!」
「ガウゥ……!!ハフッ!」
と、木で作られた円盤を投げ、自分の相棒であるブラリス(ブリザードウルフ)と遊んでいた。
それは今の時代では到底想像もつかないほどの光景であった。
魔物が人を襲わないこともあるが、なにより、知能を持っていることがあり得なかった。
今の時代の魔物は知能を持たず、魔物の本能とでもいうべきもので人を襲い、その肉を糧として今を生きている。
まぁ、この時代を生きていた人にとっては馬鹿げていると鼻で笑うが…。
「よーしよし、えらいわねー♪」
「ハッハッ、ワウゥ!!」
少女は円盤をとってきたブラリスを撫でる。ひんやりとしていて気持ちいい。
しかし、異変は突然やってくる。
「それじゃあ今日はこれくらいにしてかえりましょうか、ブラ……リス?」
「ガルルル……!!バウゥ!!」
少女は驚いていた。ブラリスが上空に向かって威嚇しているからだ。他の魔物も上空を見据え、威嚇をしている。
「どうしたの……?ブラリッ、きゃっ!?」
様子がおかしい相棒を心配し、そちらに向かうが、相棒はこっちにくるなと言わんばかりに押し出した。
「いったい、どうしたっていうの?空になにがあるって………いうの?」
少女は見た。いや、見てしまったと言うべきか。
上空にあったのは、黒い月だった。
輪郭が分かる程度にはまだ明るいが、それは少しずつ、だが確実に黒く染まっていた。
世界疫病はこの時代では、狂花病以外に発症することはなかった。
しかし、狂花病に次ぐ危険な病がこの時代で発症しようとしていた。
突如として、黒く染まった月は人間には何の影響を与えないものの、魔物には存分に発揮していた。
それは………、
「なに……?あれ、と、とにかく、騎士様にれんら、っぎゃああああー!!」
魔物が突然人を襲い出した。
それを、周囲が確認すると同時に一斉に魔物から、逃げようとする。
しかし、それを黙って見ることなんてなく、
次々と、一方的にそれらは襲う。
まるで、満たされない飢餓をなくすように………。
そして、あたりに人がいないことを確認すると、魔物達は揃って街の方を目指す。
そして、国単位の大虐殺が行われたこの出来事を、畏怖の念を込めて、
黒の
と名付けられた。
そうして、止まらない大災厄は突如として終わりを告げた。
「これ以上殺されると、オレがきた意味がないんでね。悪いが、ここで終わりだ。」
それは、ある世界から転生した者。
初代勇者、
であった。
○○○○
そうして、終わりを告げた大災厄。
実は、元々の元凶はあの月であり、そうではなかったのだ。
そもそも、あの月は月光を遮ることで、生物の本能をひきだすというもので、その月を見てしまったものは本能に従って生き続ける。
そして、魔物の本能というのは飢餓を無くし、生きること。
そこには、自分だけ生き残るという自己中心的な考えも含まれている。
そして、今のこの時代を生きているものの魔物の主の正体が、まさにその黒い月を見た魔物達の生き残りである。
その生存本能のために、自らが危険を犯すことのなく、ただ、生きる為に子供達に食糧を持って来させ、そして、食べ続ける。
満たされない飢餓をなくすために。
そのために、今も魔物達による被害が無くならないのだ。
誰が為にその手を差し伸べる? @Kusanagi1025
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。誰が為にその手を差し伸べる?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます