傭教施設 7人の当面の目標
「な、7人とも、長旅ご苦労様だったね。とりあえず中に入りなよ。」
この空気、どうしたんだ? 後でイリルさんに聞いてみよう。
まあ、でもまずは、この傭教施設についての説明だね。
7人の反応を伺いながら説明しようか。
「傭教施設は、知っての通り4年制でね、最後には卒業試験っていう形で、
君たち7人には、単独で中型魔物を討伐してもらうことになる。」
嘘です。本当は、全員で力を合わせて中型魔物を討伐してもらわないといけない。
まあ皆、当然のように首を傾げる。
「えっと…先生。単独じゃなくて全員ではないんですか?」
当然の疑問だ。イリルさんナイス!
まあ、他の何人かは、頭のネジが飛んでいるから疑問視してないけど、普通は、全員で倒さないといけないんだよね。
「イリルさんの言う通り、本当だったら中型魔物は全員で倒さないといけないんだ。けど、今回は事情が違ってね。君たちもおかしいと思わなかったかい?なんで傭教施設に面接が設けられたのかって。」
それについては、数人が頷いていた。
えーと、イリルさんとラナト君、そしてツバキさんかな。
他の4人は、どこかを向いているか、
俺のことをまじまじと見つめている。
「今回、なんで面接を設けたのかっていうと、実は自分の都合で申し訳ないんだけど、自分のバカンスを兼ねた指導になるからなんだ。」
カノンは驚いたようにこっちを見た。
それを言うのは、早すぎなんじゃないかって顔をしているね。ごもっともだ。
「はん、つまり俺たちは、てめえのバカンスのためだけに連れてこられたってわけか?」
と、レオン君が聞いてきた。
「いや、それは違っ……」
「それは違いますよー。」
俺に被せるように、それを否定してくれた子がいた。
確か名前はセドナ君?だったね。
「もし、先生のバカンスでしたら、僕たちをスカウトする必要性がないじゃないですか?」
今回、面接ともう一つあって、それがスカウト。
さっき、面接で頷いていた3人の他の4人は、俺がスカウトしてきた子達だ。
「まあ、そうだね。あー、実はそこの4人はとてつもない才能を持っていてね。傭兵としての才能、空間把握能力、未来予知、気配把握能力をそれぞれが持っているんだ。もちろん君たち全員には無限の可能性を秘めている。面接をした3人には、この集団をまとめる力があると思ったから、君たちを合格にしたわけだ。納得しないと思うけど、自分に自信を持ってくれ。」
3人はやっぱり納得がいかないっていう顔をしているね。
と、ラナト君が質問してきた。
「すいません。どういう基準で僕たちを合格にしたんですか?」
他の子達も気になるという顔をしていた。
「うーん。それじゃあ面接で聞いた質問を言ってみてくれ。」
「「「なぜ傭兵を目指すのか?」」」
「うんうん。それじゃあ君たちはなんて答えたかな?」
イリル「誰にでも手を差し伸べられるよう強くなるため。」
ラナト「強くなって、少しでも多くの依頼人を助けるため。」
ツバキ「憧れていた傭兵の人みたいになって色んな人を救うため。」
と、それぞれの答えは違うが、意味は全員同じだった。
「うんそうだ。その考え方は傭兵としての一種のとてつもない才能だよ。君たちも彼らと同じような考えに近づけるといいね。」
と、他の4人を見た。概ね好意的に捉えられただろう。
「はっ、アホくせぇ!そんなもんただの綺麗事だっての。」
ただ1人を除いて。
「確かに綺麗事かもしれないけど、その綺麗事で今が成り立っているんだ。例えば、今は魔結界があるから大丈夫だけど、昔は村や町は傭兵が文字通り体を張って守っていた。なぜ、そこまでして守るのか。なぜだと思う?」
と、俺は言った。
「その村や町が好きだからー?」
と、エルさんが答える。
「うん、正解だ。人はそうやって今を生きている。守りたいものを守るためにね。」
と、これで止まってくれたらいいんだけど。
しかし、これで止まるはずもなく、
「はっ、生温い!そんなもんで傭兵が務まるかよ。世の中金だ、金!!
お前らもそう思うだろっ?」
と、彼が見たのは、今まで静観を決めていたクレーナさんとセドナ君?だった。
「私は、先生の考えに従うまでだし…」
「僕も先生の方につくかな。」
それを聞いたレオン君は、
「お前ら、裏切ったな!?金にしか興味がねえって言ってたのはお前らじゃねえか!!」
あー、だからギクシャクしていたのかな?
「それを言ったっていう証拠でもあるの?」
「先生♡レオン君が変な言いがかりをしています♡」
と、裏切りを否定。しかし、
「嘘は良くないよ、君たち。さっきの話は本当のことでしょ?というかセドナ君、その媚び売るような声やめてね?勘違いするから。」
と、嘘を見分けることができる俺には簡単な話だった。
「むぅ……」
「おっとと、いやーばれちゃったか。あ、でも勘違いしても良かったんですよ♡」
反省してないな………
「ほら、2人ともレオン君に謝る。」
「「申し訳ございませーん(棒読み)」」
反省の色がこもってないな………
しかし、レオン君は、
「なんで俺を庇いやがった。てめえが嘘を見破れるのを知っているが、今までの俺の態度で庇う必要なんてねえだろ。」
とレオン君は言う。裏切りは気にしてないようだ。それに真剣に聞いている。
だから、俺も真剣に答える。
「自分は君たちの教育者であり、良き理解者になりたい。君たち全員のこれまでのことは資料などである程度は知っている。だから、間違っていることは必ず正す。偉いことをしたときには誰よりも褒める。と、ちょっと子供らしいな。指導するのは今回で初めてだし、多めに見てくれ。とまあ、これが自分の答えだよ、レオン君。いや、レオン。君に、くん、は似合わないな。」
なるべく真剣に答えたけど、どうだろうか。
それに、これを言ったのも初めてではない?
「はっ、そうかいそうかい。ーーー昔とまるっきり変わんねえや……さすが兄貴だ……」
なんとか納得してくれたらしい。物腰も柔らかくなったような。
他の皆も視線が柔らかくなっていたり熱くなっていた。
さて、今まで蚊帳の外だったカノンが口を開く。
「ええー、話を戻しますが、あなたたちは、それまでにここで自分を鍛えねばなりません。しかし、訓練と実践は違います。ですので、ある目標をつけます。」
7人全員がカノンを見る。その目標とは、
「北北東刻の節に、惑わせの森にて行われる実践訓練で、一回だけでもいいですから鬼ごっこでクロヤさんをタッチしてください。」
「「「「「「「えっ」」」」」」」
一瞬時が止まった。
「ハハハー」
俺も苦笑するしかない。カノン、それはまずいよ。
さすがに7人相手じゃあすぐ捕まるから。
☆この男自分に自信がない。
ほら、皆んな驚いたような顔をしているよ。そんなの簡単すぎだって。
☆逆である。絶対無理って顔である。
だから俺は、
「さすがに7人相手じゃ分が悪いよー。(俺の)」
「「「「「「「はい。本当にそうですそうです。」」」」」」」
皆、優しいね。そんなに慌てるなんて、訓練にならないって思っているんでしょ、本当その通りだよ。
「いえ、それでは間に合いません。ボクも参加するので一緒に頑張りましょう。」
ちょっと待て待て。えっ?カノンも参加するの?えっ、詰んだ?
「カノンさんって確か、[叛逆の杯]の副団長でしたよね?じゃあいけるんじゃないですか?」
と、セドナ君が言う。
「いえ、ボクが、一緒になっても勝負になるかどうか。」
ほら、君も認めちゃってるじゃん!
「ですが、そうでもしないと間に合いませんから。これから数ヶ月間、死ぬ気で頑張りましょう!」
うわー、皆、目が燃えてる。熱いくらい燃えてる。全員の熱がやばい。
「自分も訓練量増やすか〜。」
「「「「「「「「絶対にやめろっ!!」」」」」」」」
☆8人の心の中
カノン(これに勝ってボクが隣に相応しいことを証明するんだ!!)
イリル(先生に勝ってこれで認められれば、もしかしたら//)
ラナト(クロヤさんのために強くなるには必要なことだ!)
セドナ(ここで僕が勝って、クロヤさんと一緒に……///)
クレーナ(先生に勝って、誓いのキスを……//)
レオン(兄貴に勝って、兄貴呼びを認めてもらうっ!!)
エル(お兄ちゃんに勝って、ぎゅーってしてもらうの!!)
ツバキ(先生に勝って、あの時のお礼を言って、その後は……//)
尚、さまざまな思惑が入り混じっている。
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