面接試験

北西刻(冬)の節 午前7時

帝国ダンクールのある傭兵ギルドにて


そこには、数十名の傭兵志望者がいた。


その中でも、ある意味異彩を放っている少女がいた。


その子は、10人に12人は振り向くであろうほどの美しさであり、現に傭兵志望者の男子は全員その子に釘付けだった。


綺麗な銀髪は、まるで絹のように滑らかであり、赤い目は、美しさを醸し出し、恵まれた身体は、出るとこ出ていた。


しかし、イリルの顔は全くと言っていいほど、笑ってなかった。(なんなら周囲を睨みつかせている。)


一方、彼女の心の中では…


(なんで傭教施設に面接なんてあるのよっ!!)


と、今朝急に傭兵ギルドに集合させられた挙句、いきなり面接試験を始めると言われ、怒り心頭で待っていた。


(ここから先はイリル視点でいきます。)


本当、なんなのよ急に? 今まではこんなこと一度もなかったのに…


まさか、あのクソ学校が裏で手をひいたんじゃないでしょうね?


もしそうだとしたら不合格を貰ったら、すぐに八つ裂きにしてやるっ!!


おっと、口が悪くなってしまった。

平常心、平常心……


私は、産まれたときからずっと貧乏な生活を送っていた。


家族は母と3つ歳の離れた妹の3人家族で、父は、私たちに借金を押し付けてとんずらこいた。


母は、私達にはこんな暮らしをさせたくないと思っており、仕事を掛け持ちして貰った給料で借金の返済をしたり、私達に美味しい料理を食べさせてくれたり、寮がある学校にも通わせてくれた。


でも私が14歳で妹が11歳のときに悲劇が起こった。


その日は突然の嵐で、一日中屋根の修理をしていた。運良く学校は夏休みで寮から帰ってきたときだった。


屋根の修理が終わり妹と、一緒に母を呼びに行ったときだった。


物音がなく、家の中はとても静かだった。


いつもなら母は、私たちを心配して呼んでくれるのに……


それは突然だった。母は血を出して倒れており、その横には、それは汚い男が震えていた。


「きゃあーーーーー!!!!」


妹の悲鳴で我に返ったのか、その男は私たちを見てすぐ追いかけてきた。

血に塗れたナイフを持って。


私は、咄嗟の判断で、妹を押し、

「あんただけでも逃げてっ!!」

と言った。


妹は、押された勢いでリビングの窓を割り逃げ切れたらしい。


しかし、

「お姉ちゃんっ!!!」


「えっ………」

私の右腕から多量の血が出ていた。


後から痛みがきて、悶絶していたが、

男はそれでは止まらず標的を私に変え、追ってくる。


私は学校で習った治癒魔法を使い、なんとか止血し、すぐに逃げようとしたが、血を出しすぎたせいか身体が重くその場に倒れてしまった。


そして、

「よく見たら可愛い顔だなぁー。もう俺には逃げ場が無いし、ここでヤることヤって一緒に死のうかぁ?」

と、穢らわしい声で私を襲おうとしていた。


私は、悟った。

(あぁ、ここで私は犯されて死ぬのか。

この世界に未練なんてないけど、あえてあるとすれば妹だけね。)


そして、今にもナイフで私の服を切り裂かれそうになったとき、


「そこまでだ。」


そんな声が聞こえた瞬間、


男が飛んだ。言葉通り飛んだ。それはもう修理したばかりの屋根を壊す勢いで……。


あ、壊した。


私は、それを見た後、すぐに意識を失くした。


○○○○


「ーー姉ちゃんっ!お姉ちゃんっ!!返事してっ!!」


そんな声が聞こえて、目を開けるとそこにいたのは、私の妹と、メガネをかけた、目の細い人だった。


私は、反射的に妹を庇うようにし、その男を睨んだ、が、


妹は、

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。その人が、私たちを助けてくれたの。」

と、言った。


そして男は、

「怖い思いをしただろう?もう大丈夫だ。男は騎士団に引き渡したし、君の右腕も元通りだ。」

と、言われて自分の右腕を見てみると

そこにはナイフで切られたような跡はなかった。


そこでようやく私は、この男の人に助けられたのだと知った。


私は、

「あっ、あの、助けていただき本当にありが……」

お礼の言葉を言おうとしたが、彼の指によって止められた。


「別にお礼を求めるためにやったんじゃないんだ。それよりも、遅くなってごめんよ。もっと早くきていたら君たちが怖い思いをせずに済んだのに。」

と、逆に謝られた。


私たちは、慌てて、

「あっ、謝らないでくださいっ!!現に間に合ったんですし。それに、私が眠っている間に、色々なことを助けてくれたんですよね?屋根の修理とか、妹にご飯を作ってくれたり。」

と、そこにきて彼は驚いたように、私に聞いた。


「屋根の修理はともかく、君の妹にご飯を作ったって、なんで分かったんだい?」

と。


私は、

「うーん。なんとなくですかね?」

と言った。


彼は、納得したようだ。

「姉妹愛があって微笑ましいね。」

と言われた。 なんか嬉しい。


その後私は、母がどうなったのかを順を追って説明された。


そもそも、あの男は父親だったらしい。


あんなのが親なんて、私はごめんだけど。


そして彼を連行すると同時に母を病院に連れて行ってくれたらしい。


早く連れて行ってくれたので、命に別状はないと。


そして、高熱を出した私を妹の面倒を見ながら看病してくれたと。

(後々この高熱がある病気だとは知りもしなかった。このときあの人は、私を怖がらせないようにしていたのかもしれないけど。)


そして今に至るわけだ。


「君のお母さんは、明後日には退院できるらしいから、明日にでもお見舞いに行ってあげなよ。私たちは、元気だよってみたいに。」


そして彼は、後の事を騎士団に任せて帰るらしい。


私は、

「あのっ!もしよろしければ名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

と、言った。命の恩人なのだからいつかお礼しないと。


でも彼は、

「名乗るほどじゃないよ。ただのしがない傭兵さ。」

と、言った直後に、風の音が鳴って消えた。


でも、もう一つ聞こえて、

「君たちは、誰よりも輝ける。その瞳が証拠だよ。そんな君たちを自分は美しいと思っている。」



その後すぐに、騎士団がきて無事保護されたが、私、いや、私たちは今日のことを忘れないだろう。


彼の顔と声は、分かった。そして、傭兵をやっていることも。


だから、傭兵になってお礼を言うのだ。


でも、それとは別に、ある思いも芽生えていた。


彼と目が合うのを思い出すたびに、心が熱くなるのだ。


声を聞いたら安心するし、何より、

私たちをちゃんと見てくれている。


他の人は、私たちを見ても見て見ぬふりをする。


貧乏だからっていう理由もあるけど、私たちは、前に、髪で容姿が分からず偏見で醜いと言われたことがあり、そのせいか、誰も顔を見ようとしないのだ。


でも、彼は見ていてくれた。目を合わせてくれた。


美しいとさえ、言ってくれた。


これが、恋っていうのかな。顔が熱い。妹を見ると、彼女も顔が赤かった。


「お姉ちゃんこれが恋なのかな?//」


どうやら、考えていることは同じそうだ。姉妹愛っていうのかな?


そして、自分を磨きつつ、順調に学校生活を送っていたときに、ある新聞が目に止まった。


それを一目見た瞬間、すぐにそれを買い、私は、家族を呼んだ。


「ねえ!!これってあの方じゃない!?」


その新聞には、あの方が、魔結界を開発したことを書いていたものだった。


目の細さやメガネをかけていないが、

私たちにはわかる。これはあの方だ。


これまでも、そういうのを開発していたのかなと、前の新聞を読み返していたら、案の定あった。


これまで新聞を読んでいなかった自分が恥ずかしい。


そして彼は、クロヤ・フォードというらしい。良い名前である。


そして、彼のインタビューでは、こんなことが書いてあった。


「確かに、魔結界があれば、魔物から脅かされることは無いでしょう。しかし、警戒しないといけないのは魔物だけではありません。人もそうです。今も、危険な目に遭っている人がいる。今も、明日があるかどうか不安な人がいる。そんな人に自分は、こう言いたい。前を向いてください。そこにいるのは、敵ではありません。手を挙げてください。そこに自分はいるとアピールするように。あなたは、決して1人では無い。このことを覚えておいてください。自分は昔、魔物に大切な人たちを殺されました。それで弱っていた自分を助けてくれたのが、自分の家族とも呼べる傭兵団でした。だから、自分もそうなれる人になりたい。いや、なってみせます!」


私は、これを読んで、たまらず泣いてしまった。


彼は、魔物に大切な人を殺されたと。

でも今は、そんな自分を変えるために人の役に立つものを開発していると。彼のことをより一層好きになれた。

でも彼は、忙しそうだし会えないだろうなぁ。


でも、後数ヶ月で私は、傭兵に志望できる。


学校のあのクソ教師には、その頭なら、もっと良い学校に行けるはずだと言われるけどそんなの関係ない。


いつか必ず会って、お礼を言うんだ!


と、思っていたが、その記事にはまだ、続きがあった。


「傭教施設にクロヤ・フォード直々に指導か!?」


これを見た私に迷いは無く、


「母さん、私、傭教施設に行くわ!」


■○○○


妹は、心底残念そうに私を見ていた。

「私も数年早く産まれてたらなあ。」


「ちゃんと、お礼を言って帰ってくるから。」


母は、

「気をつけてね。あと笑顔でね!」

と、言い、私を送り出してくれた。


その後面接試験があることを伝えられて今に至る。


「次、イリル・ガーネット!!」

はっ!次は私か。よし、もう当たって砕けろ、よ!


そして、扉を開けて待っていたのは、

「うん、ええっと次はイリルさんだね。」

クロヤさん本人だった。


「あっ、えっ、とっ、えぇーーー!!」

私は、驚きを隠せずただ見ているだけだった。


彼は苦笑していた。


「あー、とりあえずそこに座ってね。」


と、指を指したところにある椅子に座れと指示され私は、慌てて座る。


そして彼は次々と質問をし、私は脳をフル回転させてなんとか答えた。


「よし、それじゃあ最後の質問だ。

君はなぜ、傭兵を目指すんだい?簡単に答えても良いよ。」


と、優しく問いかけられた。


なぜか〜。私は、ただクロヤさんにお礼を言いたいだけなんだけど、でもそれがダメならただ一つ。


「クロヤさんと同じように誰にでも手を差し伸べられるよう強くなるためです!!」


その答えを聞いたクロヤさんは、とても驚いたような顔をしていた。(笑っているようにも見えたけど……)

そして彼は、

「分かった。ありがとう、イリルさん。試験は終わりだよ。扉をでて右から三番目の部屋の中で待っててほしい。」


そして私は、促されるままに、その部屋で待機していた。そして数十分経って、


「合格おめでとう!!イリルさん!」


と、合格をもらった私は、翌日傭教施設に行くことになった。


      なんで?






むっちゃ修正しました。マジで申し訳ありません!!



























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