第34話
それから約二か月、レオナルドは噂の真相を明確にするべく奔走してくれた。
そして、レオナルドから久しぶりに来た手紙には「調査結果は『訪問』の席で報告する。」という事が書かれていた。
カレンは緊張の面持ちで、久しぶりの『訪問』に赴いたのだった。
「では、やはりあの聖剣は、北の国のものだったと……。」
カレンとレオナルドと陛下。
三人で丸テーブルを囲みながら、レオナルドの報告を聞いていたカレンは溜息とともにそう零した。
「ええ、残念なことに噂はほとんど真実でした。」
「……そうか。」
レオナルドの言葉にクリスも沈痛な面持ちで頷く。
「そして、これは最近仕入れた情報ですが、どうやら聖剣を実際に探しているのは、北の国の宰相らしいのです。」
「国王ではないのか?」
続けられたレオナルドの報告に、クリスが顔を上げる。
「はい、これもまだ調査途中なのですが、今北の国では二つの派閥に分かれているらしく、旧王政派と現王政派で対立しているそうです。」
「旧王政派というと……まさか?」
「はい、三代前の賢王のことです。」
「まだ、側近が生き残っているのか?」
「といよりも、その思想を受け継ぐ家臣の末裔がいるようです。」
「なるほど。その事についてだが、こちらからも報告があるぞ。」
一通り話を聞いていたクリスが、唐突に言ってきた。
「報告……ですか?」
クリスの言葉に、カレンとレオナルドは顔を見合わせる。
「ああ、その派閥争いに関係しているのかは知らんが、北の国が我が国と外交を兼ねて親交を深めたいという申し出があったんだ。」
「外交……ですか。」
「ああ、向こうの目的はそれだけではない気がするがな。」
「そうですね。もしかするとあちらも聖剣について何か掴んだのかもしれません。」
「ああ、その可能性は十分考えられる。なにせ、こちらも今まで何の情報も得られなかったのが、急に降って湧いたように掴めたのだからな。」
「ということは、この情報はあちら側からと?」
「その可能性も捨て切れんが、いい機会じゃないか?」
クリスの言葉に、カレンとレオナルドは顔を見合わせる。
「陛下、それは少々危険かと……。」
「なあに、その時は腕の立つ第一騎士団が何とかしてくれるだろう。」
レオナルドの忠告に、クリスはそう言ってウインクしてきた。
まさか、部下を挑発してくるとは……。
クリスの大胆発言に、レオナルドは呆れてしまった。
そして、観念したように溜息を吐くと――
「わかりました。ただし護衛は絶対つけてくださいね。」
「ああ、わかっているとも。」
クリスはそう言って、したり顔で頷くのであった。
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