第30話
「それに、謎はそれだけではないのですよ。何故か聖剣を狙ってオーディンス家の女性が狙われるようになったのです。」
その話に、レオナルドは「は?」と間抜けな声が出てしまった。
――いやいやいや、まてまてまて、聖剣に懐かれているだけでなく、その聖剣のせいで命を狙われているというのか?
しかもその理由も知らないときている。
レオナルドは、目の前の親子の話を聞きながら、とんでもなく暢気過ぎるだろう、と唖然とした。
「それで、私兵を?」
なんとかまともな話をしようと、声を絞り出す。
「はい、私兵を雇ったのはオーディンス家の初代当主の夫の命令だったと聞いています。昼夜問わず襲ってくる刺客達に、オーディンス家の乙女と聖剣が戦ってきたのですが、彼女らが心身ともに疲弊してしまう事を恐れた彼が、秘密裏に雇ったのだとか。さすがに表立って騎士を雇うわけにもいかなかったそうで、裏の世界の者を聖剣とその乙女の護衛へと付けたそうです。」
ルドルフはそう言うと、紅茶を飲んで喉を潤した。
「その後、雇った裏の世界の者たちは、自ら聖剣と乙女に忠誠を誓うようになり、オーディンス家の影として代々聖剣とその乙女を護るようになったそうです。まあ、特に我が母の影響は大きかったそうで、今じゃそこら辺の上位貴族にも負けず劣らずな規模になってしまいましたからね。」
ルドルフはそう言って、肩を竦めてみせた。
レオナルドは話が終わると、盛大な溜息を吐いて額を抑えた。
――なんなんだ、この途方もない物語のような事実は?これが現実にある話だというのか?そして、我が妻がそんな現状の中心人物だというのか?
冗談じゃない!
レオナルドは、がばりと勢い良く顔を上げると、オーディンス伯爵に言ってきた。
「大体の話はわかりました。」
レオナルドの言葉に、オーディンス親子は「え?理解したの?」と驚いた顔をしていた。
彼らは正直、こんなに早くレオナルドが理解してくれるとは、思っていなかったのだ。
実はここへ来るまで、カレンはレオナルドに呆れられると思っていた。
大げさな、と笑われてしまうと思っていたのだが、しかし目の前の旦那様は馬鹿にするどころか全ての話を信じてくれたのだった。
カレンはその事が凄く嬉しかった。
そして、次に続いたレオナルドの言葉にカレンは更に喜ぶのだった。
「オーディンス伯爵に許しが貰えれば、聖剣について国王に話を通して、私の方で調査したいと思うのですが?いかがでしょうか?」
その言葉にルドルフは目を見開く。
しかしルドルフは暫く思案した後、ゆるく首を振ってきたのだった。
その反応に、レオナルドは「何故ですか?」と不思議そうに訊ねる。
「お気持ちは有難いのですが、事が公になれば国をも巻き込むことになるやもしれません。私が話したのは、貴方が娘の夫だったからです。この件はどうか、オーディンス家の問題としてお忘れください。」
ルドルフはオーディンス家当主として、頭を下げてきた。
その姿にレオナルドは、それ以上何も言えなくなってしまったのであった。
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