第4話 相。

僕は、

「冷たいね、手」

そう言って、服を脱ごうとする藍の手を止め、握り締めた。

「こんなに冷えるまで…なんで僕を待っててくれたの?」

「…なんで…かな…?」

そう言うと、藍は泣き出した。

ずっと、我慢してたんだな…、と、僕はそう思った。

こんな風に、たった二回会っただけの人間の前で、涙を堪えきれないほど、きっと疲れていたんだ。

疲れ切っていたんだ…と。

「寒い時は…行くところがない時は…ここに来ると良い。ハニーレモン、ご馳走するから…」

藍は、泣いている。


『私と、セックスしたいんですか?』


藍は、あの時、どんな気持ちであんな事を言ったのだろう?


「…ねぇ…輝君…愛って…本当にあるのかな?私は、セックスは…いっぱい…いっぱいしたけど…愛がなんなのか…今でも解らないよ…」

藍は泣きながら、そう零した。

「ゆっくりでいい。ゆっくり、探せばいいんだ。のセックスに愛は無いよ」

「…そう…なのかな…。じゃあ…私が今までしてきた事って…一体何だったんだろう?好きって言ってくれた男の人は…私を…全然好きじゃなかったのかな…?」

「…解らない…。でも、大丈夫。僕が…藍を守る…」


(…)


何言ってんだ…。


僕は、そう思った。

自分でもよくわからない。

一体何を口走っているのか…。

でも、どうしようもなく、握った藍の冷たい小さな手が愛おしかった。


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