エイプリルフール その5
目が覚めると古びた石造りの部屋にいた。
ロッキングチェアに座り、目の前の暖炉の火をぼんやり眺めていると次第に頭が覚醒していき、はっとして首に触れた。
確か突然現れた白い騎士に首を刎ねられたはず。
だが傷もなければ痛みもなかった。
夢でも見ていたのか。いや、今は夢を見ている最中だった。
ふと左腕に点滴をされている事に気付いた。
垂らされているパックから管まできらきら光る青い液体が流れている。
「気が付いたかね」
声がして振り向くと丸テーブルを囲む三人の男女がいた。
紳士風の年配の男性に、二十代くらいの青年、そして太鳳と同年代くらいに見える少女がいる。
食事の最中らしく、パイを食べていた。
老紳士はグラスを置き、太鳳の所まで来て輸血パックを確認した。
「気分はどうかね」
「……普通です」
結構、と老紳士は言う。青い目をしている。日本人ではない。
「あの、これは」
太鳳は点滴を指す。
「血液だ。君の首を刎ねた白い騎士の」
「は……」
「先生」
青年が老紳士に声を掛けた。こっちは日本人に見える。
「僕達戻ります」
「ああ、おやすみ」
青年は太鳳に会釈をし、少女と一緒に部屋を後にした。
さて、と老紳士は近くにあった椅子を引き寄せ座った。
「聞きたい事は山ほどあるだろうがまずは私の話を聞きなさい。君の疑問の大部分はそれで解消される。そして覚悟しなければならない」
これから過酷な人生を歩まざるを得ない事を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます