ボーイミーツガール その4

 シャワーを借り、汗と太鳳の血を洗い流した。

 浴室を出ると籠の中に美里が用意した着替えが入っていた。

 太鳳の物だ。袖を通し、脱衣所を出た。


 ダイニングへ戻り賢二に声を掛けた。

 賢二も太鳳の血を洗い流しに浴室へ向かった。


 ソファーに寝そべる太鳳の様子を窺った。

 固く目を閉じ、浅い呼吸を繰り返している。

 じっと見ていて気付いた。

 太鳳の顔にあった打撲痕や切り傷がいつの間にか無くなっている。


 寝ているのか分からないが音を立てないようにそっとその場から離れ、キッチンに立つ美里に声を掛けた。

「タオの顔の傷が消えてる」

「ね、医者いらずでしょ」


 明はほっとした。美里と賢二の言っていた事は嘘じゃなかった。

 賢二が浴室から出た後、美里の握ったおにぎりを三人で食べた。

 走った後だからか、こんな時でも食欲旺盛で明は三つも食べてしまった。


 テレビやネットのニュースでは渋谷が鎮静化されたらしいと報道されていた。

 鎧の集団が拘束されたのか、殺されたのかは分からず、情報は錯綜している。

 SNSを見てみると、目を覆いたくなるような渋谷の惨状が幾つも投稿されていた。その中に返り血で染まった白い騎士の姿が映り込んでいる。

 そしてその白い騎士と戦う黒い騎士の姿も。


 美里と賢二にスマートフォンの画面を見せた。

「これ、タオですか」

「そうだね」と賢二が言う。

「これがタオの秘密ですか」

「そうね」と美里が言う。


 何から話そうかしら。美里は太鳳に目を向け、語り始めた。

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