騎士 その6

 辺りを見渡した。他に白騎士の姿はない。

 終わったのか。扉は閉じたのか。

 しかしいくら待っても扉の閉まる音は聴こえてこない。

 こいつではないのか。まだ他にも異形の白騎士がいるのか。

 それとも方法が違うのか。


 歩き出そうとした瞬間、右肩の付け根に矢をくらった。

 瞬時に靄化し、矢だけを置き去りにして建物の陰まで移動し実体化した。

 傷口から赤い光子が漏れ出し手で強く押さえた。


 まだ白騎士はいる。鍵は掛けられていない。


 派手に暴れ過ぎた。こちらに気付いたのは矢を放った者だけではないはず。

 ここに留まっていては危険だ。一旦ここを離れて態勢を整え――。


 寄り掛かっていた壁から跳び退いたと同時に壁が砕き吹き飛んだ。

 土埃を割いて巨大な斧が刃を覗かせた。


 狙撃手は建物の陰から黒騎士が出てきたのを見逃さなかった。

 再び飛んできた矢が黒騎士の左大腿部に突き刺さり膝をついた。


 壁の穴から大斧を振り上げた白騎士が勢いよく飛び出してきた。

 振り下ろされた大斧が靄を割いた。

 黒騎士が剣と共に実体化し白騎士の首を刎ね、三度飛んできた矢を今度は掴んだ。

 即座に剣を弓に変え、高層ビルの上階、矢が飛んできた窓辺に向け、掴んだ矢を撃ち返した。

 弓で狙撃していた白騎士の顔面を矢が貫いた。

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