隠れた名店 その3
明が二階のカフェに戻ってきた。
「ごめん、お待たせ」
席に座り、アイスティーを一口飲んだ。
自宅で食べようと思っていた残りのパンに手を付けた。
心なしか明の表情が沈んでいるように見える。
電話の相手はきっと太鳳だと咲は察した。
喧嘩でもしたのだろうか。
それとも学校の欠席が続いている事だろうか。
二人がどんな会話をしていたのかとても気になる。
だが明から打ち明けてくれるまで静観すると決めている。
「サキは知ってた? ウミツキがモテる事」
改めて決意した途端、明から海月の名前が出てきて咲はぎょっとした。
「うん、知ってたよ」
「ウミツキを好きになるなんて、案外物好きな人って結構いるんだね」
その物好きの一人が目の前にいる、と咲は思った。
「中学の時はどうだったの。やっぱりモテてた?」
咲はかぶりを振ったが思い出して「あ」と発した。
「そういう話は聞いた事なかったけど、一人噂になってた女の子がいて」
「噂?」
「ウミツキ君がよく学校を休むようになった頃、転校してきた女の子がいたの。その子は別のクラスだったんだけど二人で一緒にいる所をよく目撃されてて、付き合ってるんじゃないかって噂になってた」
咲は言い切ったところで余計な事を言ってしまったと気付いた。
見るからに明がショックを受けている。
「あ、でも、全然仲良さそうには見えなかったよ! 付き合ってるようには全然!」
「仲良さそうじゃないのによく一緒にいたの?」
「私には友達のようには見えなかった。楽しそうにお喋りしてる所とか見た事なかったし。それにその子、一年後にまた転校しちゃったんだよね」
「転校?」
「うん、珍しいよね」
「どこへ転校したか分かる?」
咲はかぶりを振った。
「その子はどんな子だったの」
「大人びた子だった。奇麗なんだけど近寄りがたい雰囲気があって、ウミツキ君以外の誰かと一緒にいるのを見掛けた事なかったな」
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