初恋 その6

 カフェを出て、今日は明が太鳳を駅まで送った。

「適当に見つけて入ったお店だったけど気に入っちゃった。また来ようよ」

「機会があったらな」


 カフェから駅まで十分も掛からない。直ぐに着いてしまった。

「今日はありがとう。ケーキ食べれて良かったよ」

「うん」

「じゃ」


 太鳳が背を向けて歩き出そうとしたところを明にリュックの持ち手を掴まれぐいっと引き寄せられた。

 太鳳も明のやる事に慣れてきたのか驚きはしなかった。


「君、俺が帰ろうとするといつも阻止してくれるな」

「ね、もしサキが告白してきたらどうする」

「は?」

 明はじっと太鳳を見つめる。


「何でそんな事聞くの」

 明は何も言わない。太鳳が答えるのを待っている。


「断るよ。付き合わない」

 明は表情にこそ出さなかったが胸の内ではほっとした。


「あ、もしかしてクラモチ、俺の事好きなの?」

「は? 自意識過剰」


 太鳳は傷ついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る