デート その3
その夜、明は喫茶店で撮ったパンケーキの写真を太鳳にメールで送った。
期待していなかったが数分後には「美味しそうですね」と返信があった。
──それなら今度一緒に行──
そこまで文字を打って消した。
あの影が脳裏に浮かんだ。
あれが何だったのか皆目見当もつかないが暫く渋谷には行きたくなかった。
代わりの文章を打ち込む。
――電話していいですか。
――はい。
明は太鳳の番号に掛けた。
「もしもーし」
「もしもし、こんばんは~」
「こんばんは」
「メール面倒くさいね」
「お前がやろうつったんだろ!」
「私さ、チャットもそうだけど、スマートフォンのちっちゃい鍵盤押して文字打つのがじれったくて好きじゃないんだ。離れてまで話したい事もそんなにないし、学校の友達とは学校に行けば会えるんだから、その時話せばいいじゃんって」
「はぁ」
「でもさ、最近その気持ちがちょっと分かったんだ。明日学校に行けば会って話せるけど、そういう事じゃないんだって」
太鳳は黙って聞いている。
「ウミツキは……私と同じ気持ちかな」
「さあ。でもさっき送ってきたパンケーキの写真は良かったよ」
「でしょ。あ~美味しかったな~。ウミツキは甘いの好き?」
「甘党ですよ、私は」
「じゃあ、今度一緒に食べに行こうよ、渋谷以外で」
「なぜ渋谷以外」
「怖い影を見た」
「怖い影?」
「うん、人の形してるんだけど鎧を着てるようなごつごつしたシルエットしてて、でもそんな鎧着た人どこにもいなくて」
「その影の写真とか撮ってない?」
「ない。嫌な感じがして直ぐその場から逃げたから」
「それを渋谷で見たの?」
「うん、しかもこれで三回目」
「三回?」
「一回目はショーコに見せてもらった写真だけど。あ、そういえばショーコのインスタにその影が映ってる写真があるよ。送ってあげようか」
「いや……、いい。三回とも全部渋谷?」
「うん。何だったんだろう、あの影」
太鳳から返事はない。
「ね、何食べたい? 明日午後空いてるなら一緒に食べに行こうよ」
「明日は予定がある」
「……そっか」
「まあ、そのうち。俺、そういう店一度も行った事ないから、ウシオのお勧めの店があればそこへ連れてってほしい」
「ほんと? 責任重大だ、私。私が美味しいって思ったのはー、帝国ホテルの」
「一般家庭の子供が気軽に入れる場所にしてー?」
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