あなたが知りたい その4
そのうち賢二が帰ってきて四人で夕飯を済ませた。楽しい食事だった。海月家の人々とは波長が合う。話して楽しいし、沈黙が続いても気にならない。まるで本当の家族のような安心感がある。
「私、本当は海月家の子供なのかもしれない」
「何言ってんだ、お前」
明を駅まで送る道中の事だった。またおかしな事を言い出したと太鳳は思った。
「私、お母さんと性格似てない?」
「掴みどころがないところは似てる」
「ほら、きっとそれ遺伝だ」
「迷惑な遺伝だな」
「ウミツキアキラ……ほら、ぴったり」
「何が」
「ウシオタオ……ほら、ぴったり!」
「何がぁ」
「私の推理を披露していい?」
「どうぞ」
「私達、実は同じ日の同じ病院に生まれて、同室の隣同士で眠っていた私達は不幸にも取り違えられてしまったんだよ……!」
「お前誕生日いつだよ」
「じゅういちが……八月五日!」
「残念だったな。ウシオと取り違えられたのは違う人だったらしい。そもそも男女取り違えられたら直ぐ気付くだろ」
「じゃあ、きっと生き別れの姉弟だ」
「こんな手の掛かる妹に育っちゃって」
「えー、ウミツキが弟でしょ」
「いや絶対お前が妹。末っ子感が半端ない」
「そうかなぁ、お兄ちゃん」
「受け入れ早」
でもやっぱり太鳳と話すのが一番楽しい。
どうしてだろう、同年代だからか、男の子との会話が新鮮だからか。
何でもない言葉のやりとりがこんなにも心地良く感じてしまう。
駅に着いてもまだ話し足りなかった。別れが惜しい。まだ一緒にいたい。
「ねぇ、もうちょっとお話しない? どこかカフェでも入って」
「俺これから用事」
「あ、そうなんだ……」
明はしゅんと項垂れてしまう。
ふと幼少期の自分を思い出した。祖母と別れるのが嫌で大声で泣き喚いていた。
だがあの時と違うのは明日になればまた太鳳と会える事だ。
会える?
「明日は学校来る?」
「分からない」
そうだ、太鳳に限っては明日も会えるのか分からない。
この人はいつか、さよならもなく私の目の前から忽然と姿を消すような気がする。
「じゃあ、気を付けて」
「うん、ばいばい。送ってくれてありがと。学校来れたら来てね」
太鳳は小さく頷いて去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます