あなたが知りたい その1
「どしたん、ウッシー」
「……え」
「さっきから何度もスマホ見て、らしくない」
学校の昼休み、そわそわと落ち着かない明に祥子は聞いた。
「メールか」
真希が代わりに答える。
「メール?」
「ドイツ在住のダニエル何とかとメールしてるんだって」
「誰!?」
明は教室中央の主のいない席を見やった。太鳳の席だ。明の席は廊下側の前から二番目。ちなみに一番目は祥子の席。
クラス替えして早々に席替えがあった。くじ引きの結果、不運にも明は同じ席を当ててしまいがっくり肩を落としていたらなんと祥子もまた同じ席だった。こんなミラクルがあるのかと二人は爆笑した。
その時はついてると思った。祥子とまた一緒の席になれたのが嬉しかった。しかし今となっては席替えさえなければと思わずにいられない。
席替え前、始めは五十音順の並びだった。一番目は吾妻、二番目は汐、そして三番目に海月。明の後ろに太鳳がいたのだ。
もし太鳳が後ろの席だったなら。人前で話し掛ける事はなくても傍にいるだけでも幸福度は違う。
結局昼休みになっても太鳳は現れなかった。今日はきっともう来ない。
昨日、太鳳にメールのやり方を教え、太鳳からメールが送られてくるまで自分からは絶対に送らないと固く誓っていた明であったが、早々にしびれを切らし自分からメールを送ってしまった。
──今日、学校来ないの?
そんな文面を前の休憩時間に送った。だが昼休みになった今も太鳳からの返信はない。もう一度送ってみるべきか。
もしかしたら煩わしく思われているのかもしれない。元々乗り気でなかったのを無理やりやらせたようなものだ。無視されているなら悲しいし、気付いてないなら腹立たしい。
「テス」でもいいから返信が欲しい。
「おーい、ウッシー、聞いてるー? どういう経緯でそのダニエルさんとやらとメールする仲になったの」
「え、ダニエル? 誰それ」
「お前が言ったんだろ!」
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