お弁当 その4
放課後、授業が終わるなり明は一目散に学校を出た。
中目黒駅で降りて朝の登校ルートで太鳳を待ち伏せした。
だがなかなか来ない。電話番号を聞いておけばよかったと今更ながらにして思った。
今日は暑いな、と手で顔を仰ぎながら待っていると遠くに太鳳の姿が見えた。
太鳳も明に気付き、少し驚いたような顔をした。
「何してんの」
「遅い。もっと早く来なさい」
「……何で俺注意されたの」
「家に帰るでしょ。付いていってもいい?」
「いいけど、何で」
「お弁当。ウミツキのお母さんに直接お礼を言いたくて」
「あら、今時律儀なお嬢さんだ事」
明は太鳳の隣に並んで歩き出した。
「お弁当美味しかったなー。ウミツキのお弁当はどんなおかずが入ってた」
「ハンバーグとか唐揚げとかソーセージとか」
「同じだ」
「そりゃ同じでしょうよ」
「いかにも男の子のお弁当って感じだったから、もしかしたらウミツキかお父さんのお弁当と間違えちゃったのかなって」
「それは多分、うちのお母さんが対女性用弁当を作った事がないから、いつもの感じでウシオの分も作ったんだと思う」
「じゃあ、次の時はもうちょっと少なめにって言っておかないと」
「次があると思ってんのかよ」
「あ、何かお土産持ってくればよかった」
「別にいいよ」
「でもあれだけよくしてもらってお土産の一つもないのは失礼じゃん」
「子供がそこまで気を遣う必要なんかないでしょ。見返り欲しさにウシオを助けた訳じゃないんだから。そういうのは大人になってからプリンの一つや二つでも持ってくればいい」
「プリン好きなの?」
「普通」
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