第4話 陰キャ娘、仮想世界の転生

「で、できた!ど、どう?」


ユーザーID:リンチャンネル


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個人的には、ネットヘビーユーザーだと自負しているが、

いざ自分で作ってみると、なんかもの足りない自己紹介文ができた気がする。


とりあえず。クラスの陽キャこと「琴峯 涼香」に

打診を試みる。


「うーん!!そうだねぇ。。まぁ今はこれでいっか!!」


好感触は得られなかったが、とりあえず型はできた。


「それで・・・最後かな。アイコンを決めないとだね!

これを設定しないと、規約的に投稿できないっぽい。」


近年の大量BOTによる違法動画投稿や、コメント荒らし対策によって


初期設定の敷居が高くなってきているようだ。


「アイコンって、、どうしたらいいの??

あ、フリー画像とかが・・・いいのかな?」


恐る恐る意見を出してみる。昨今のフリー画像は大変、クオリティーが高く


クリエイター泣かせとネット記事で見た。私のアイコンもそこから流用している。


「うんうん!たしかに、すごい綺麗なイラストとかもあるからね!

なるほど、フリーの画像ね。」


彼女は話を進めながら、ベッドの収納スペースから大きめのホワイトボードを取り出

して、次々と書き込んでいるようだ。


「フリーもいいけど、私はリンちゃんが自作で作ったほうがいいと思う!

せっかくこれから頑張っていくんだし、看板のアイコンはやっぱりオリジナリティが

あったほうがいいと私は思う!」


(オリジナリティ??私なんかにそんなものなんて・・・)


少し難色を示している様子が伝わってしまったのか、


彼女がうーーんと何やら少し考えことをしている。


「そうだ!フリー画像ってね。実は、規約が突然変わって、明日になったら突然使えなくなったり、お金を要求されるケースもあるみたいだよ!」


「え!?そうなの・・・。ちょっとそれは怖い。。

じゃあ自分で作ったりしたほうがいいのかな。」


たしかにほとんどのネット投稿者の人は"自作"のアイコンらしきものを


作成している。時間を多く費やしていた娯楽コンテンツに、


そんな裏社会があることに驚きを隠せなかった。


「うん!じゃあ作っていこう!」


「リンちゃんって絵を描くのとか得意?」


「え、絵??

わ、私ほんとに絵描くの苦手で・・・。」


ふと脳裏に美術の思い出がよみがえる。

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「あなた、真剣に描いてます?

ほら、隣の人を見てください。

彼は、あなたと違って早く作業を終わらせている。

しかも完成度が高いですよね??」


ヒステリックに、そして囁くように美術の先生は私に言葉を浴びせていた。


先生はため息をつき、最後にその言葉は放たれたのだった。


「あなたの周りを観察することもできない能力が、そのまま

作品として滲みでてると思います。評価はあまり期待しないでください。」


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(うわああああああ!!)


陰キャ特有の暗黒面に落ちてしまっていた。


「リンちゃん!おーい!」


彼女の声が遠くから聞こえてきた。


フラッシュバックした映像から現実に戻ると、目の前には手の甲が上下に動いて


私の視界を占領していた。


「え、な、なに涼香・・・ちゃん。」


少し困惑した涼香は、すぐに目を細めて責め立てた。


「あ、やっぱり聞いてなかった!

なんか変な考え事してたでしょ??」


微笑を浮かべ、脇腹をちょんちょんと肘で突っついてくる。


「い、いや。別にそういうわけではないんだけど。。

た、ただ絵を描くのが下手だから、そういうの私できないかも。。。」


語尾がだんだんと弱くなっていき、最後の言葉は自分でも聞こえないように


なってしまうのが情けなく思ってしまうのだった。


「中学のときは自分の自画像も上手く描けなくて、先生に怒られちゃったし。」


思わず過去に胸にずっとつっかえていたエピソードを吐き出してしまう。


「そっか!じゃあ一緒につくろ!私もあまり得意じゃないから大丈夫!!」


彼女の会心の笑顔が私の荒んだ心に陽光を注ぐ。


「一応、私がパッと思いついた感じなんだけど、こういうのはどう?」


ホワイトボードには胴体を含めた顔シルエットに頭の上には〇が書かれている。


「私、似顔絵とか難しくてできない・・・かも」


「リンちゃんにはここの頭の上に乗っけるマスコットキャラクターを描いてほしいな!似顔絵は私がリンちゃん見て描くから、心配はしないで!」


私が絵を描くことに、拒絶しようとしたことを優しく否定するように


代案を提案してきたのだった。その気遣いを無駄にしたくはない。


「す、涼香ちゃんわかったよ!

マスコットキャラクターね。ヒヨコとか子猫とかのほうが

可愛いからネットでも受けるかな・・・?」


「おーー!!いいね!

動物かぁ、うんうん。じゃあさらにそこに条件をつけよっか!

『リンちゃんが来世になったらなりたい動物』とかどう?

せっかくだし、リンちゃんが憧れるものをマスコットにして乗っけよ!」


「ら、来世?ネットの人が好きな動物とかじゃなくていいの?」


快く頷いている彼女の狙いはよくわからないが、


「わかった。がんばってみるね、いろいろありがとう涼香ちゃん。」


と応答するのであった。彼女がいなければ、一体どうなってたんだろう。


何かと先延ばしする悪癖で、まだアカウントすら作れていないかもしれない。


「うんうん。あ、その前にちょっと写真だけ撮らせて!

今日さすがに仕上げるのは難しそうだから、参考資料として!」


写真を撮ろうなんて同級生から誘われたのは初めてだったような気がする。


「わ、わかった。で、でも本当に描いてくれるの?

涼香ちゃんだっていろいろ都合とか・・・。」


クラスメイトのみならず、別のクラスからも彼女を遊びに誘う子がいるくらいだ。


自分みたいな日陰者がその時間を奪う権利があるのだろうか、つい思ってしまう。


「だーーいじょうぶ!私はリンちゃんを好きでお手伝い?してるんだから!

ほらほら、椅子からきりーーーつ!一緒に写真撮ろ!」


そういって彼女は私の手を握って弱い力で上に吊り上げられるのだった。


「じゃ、明日!お互いに描いてきたものを見せ合いね!」


その鮮やかなウィンクは一瞬だったが、同性ながらドキッとしてしまった。


「わ、わかった。

じゃあ明日の、、朝答練のあととかでいいかな?」


「うーん。いや!リンちゃんがよければ明日もここで続きしようよ!


明日は部活の顧問会議?で短縮授業だし、また雑談しながら進めてこ!」


その言葉はまだ私が見放されていないのだと感じて、安心感が満ちてくる。


「明日もいいの?あ、ありがとう!じ、じゃあまた、お願いします!」


深々とお辞儀をしていた私に、もっと力抜いて楽しくやってこ!と私の両肩をもって


元の直立した体勢に戻したのだった。




その日はたしか、気が付けば夜も更けてきて深夜になるくらいまで描いていたような


気がする。自分が描きたい動物を画面に表示させて、次々と描いていく。


実は私は絵を描くことが嫌いというわけではなかったのでは?と疑問が


生じるほどにルーズリーフには沢山の失敗作が創造されたのだった。

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