第3話 作戦会議

「うんうん!かわいいよね!」


まさか本当に彼女の家に行けるなんて・・・・。

クラスどころか学校でも随一の美女で、人気者の琴峯 涼香。

それに引き換え、コミュニケーションが苦手で対して友人ができない私、名前は

"紅月 凛"と申します。


「ねぇねぇリンちゃん!リンちゃんは高校で何か、やりたいこととかるの??」

にこやかに質問を投げかけてくる。

(やりたいこと・・・)


「な、なんだろう。あまり特にない・・・かな」


しまった。こんな返答しちゃったら、涼香さんだって返答しづらいじゃん。

ごめん、と内心思うがあまり"やりたいこと"は思いつかない。


「そうなの?

なんか彼氏とか作ってどっか行きたいとかは?」


彼氏・・・私と一緒にどこか行く・・・

無理無理無理!!絶対会話が止まってつらい!!


「ははーんその顔はどうやら経験はなさそうね・・・」


「い、今はいいの!勉強で精一杯だから!」


やや顔が熱いのが自分でもわかる。


「でも勉強ばっかじゃ嫌にならない??

なんか息抜きとか好きなことは?」


話していて思ったが、本当に涼香さんは頭の回転が速い。

少しの迷いもなく、すぐに話を振ってくる。


(息抜き・・・やってることといえばインターネットとかで

すごいバズっている動画を見ること。いや、別にそれは息抜きじゃない。

見ることによって、自分が陰キャで日陰者であることを再認識して自己嫌悪に陥る。)


この人になら。私の長年の悩みを打ち明けてみたらもしかしたら私の人生が変わるかもしれない。


「わ、わたし!やりたいことがあって!

そ、それを聞いてもらっていいかな?」

その言葉は瞬発的に口から出たのだった。


「お!なになに!

聞かせて聞かせて!」


さきほどの彼女の質問をガン無視していることに、気がついてしまったが後の祭り!

大きく息を吸って、気持ちの限りを伝える。


「イ、インターネットで人気者になりたい!

有名配信者みたいに、派手な企画をしてみんなに注目してもらいたい!」


静かな部屋に私の声が響き、私の耳に自分の声が反芻する。


「ふむふむ・・・」


少し悩む仕草をして、手をグーにする。

そして親指だけを伸ばし、


「いいね!リンちゃん!

今まで会った子達と雰囲気というか何か違うものを

感じたけど、なるほど!熱くてどす黒い良い野心を持ってるね!!」


前かがみになって私の座ってる座布団の近くまで寄ってくる。


同性でもドキドキするに、もし私が男性だったら、

間違いなく卒倒してしまいそうだ。


この人にはパーソナルスペースという概念がないのかもしれない。


「なになに??

ゲーム配信者とかになるの??

それとも、ライブ配信者?はたまた動画投稿者??」


次々と選択肢を与える彼女に、私はやや押され気味だった。


「い、いや方向性が決まっているわけではなくて・・・」


「じゃあまずは簡単な動画投稿かしら。

それとSNSの運用ね。それと、グッズなんかのアイデアも今のうちに・・」


「え・・・そ、そんないきなり!?」


話は転々と前進していく。


「なんで?だってやりたいことは思い立った時にやるのが一番楽しいでしょ?

ほら!まずは動画投稿サイトにアカウントをつくろーー!!」


デスクのパーソナルコンピューターを指さして、私を椅子に座らせる。


(あれ、なんだろうこの写真・・・)

スリープ状態から復帰すると、涼香とご両親らしき人、それに


なにやら数名の筋肉質な男性、溌剌とした表情の女性が数名映っている。


「あら。なんか自分の映っている写真を友達に見られるのは、、恥ずかしいね!

ではでは、インターネットの世界にゴー―!」


やや、焦り気味に私の手に握られたマウスに彼女の手が重ねられ、素早くクリックをする。


[すずかさんおかえりなさい]

と画面に表示される。


こうして私、"赤月 凛"は『有名になりたい』というあまりにも


よこしまな考えを受け入れてくれた"琴峯 涼香"の指導のもと


新しい世界へ飛び込んでいくのだった。

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