第8話 悪夢の再来
『カキーン』『えっ…………』不動は球の軌道を目で追った。『ドスッ』、無情にも
ボールは綺麗な放物線を描き、バックスクリーンに着弾した。『……まじかよ』不動は動揺していた。すかさず古島コーチがマウンドに来た。『たかが、ホームラン一本や、あまり気にするな!』『はい……』少し不動の心が落ち着いた。『よし、まずは次のやつを抑えよう。』不動は腕を思いっきり振った。
『ストラーーイクッ!バッターアウト!チェンジ!!』『よしっ………』不動はなんとか後続を打ち取った。
『ふう………』不動はベンチで一息ついていた。『なんとか、抑えたな。』不動は声のした方向を向いた。するとそこにいたのは高濱監督だった。『はい、なんとか抑えましたけど、あいつやばかったです。』『そうだろう。世の中にはもっとやばい奴がたくさんいるんや。俺も元々ここに世話になったからよくわかる。』『そうなんすか?』『またいつかその話はする。今は試合は集中しろ。』『はいっ!!』
不動は次の回もマウンドに上がった。
『ストーライークッ!バッターアウト!』
白熱した球場に球審の甲高い声が響く。
『次の相手は1番バッターか。』
不動は腕を振った。『カーン!』『なにっ』打球はセンター前に抜けていった。
『マジか………』不動は腕を振り続ける。『カーン!!』『なにっ』打球はまたもセンター前に抜けていった。『落ち着け……落ち着け……』不動は自分のことを鼓舞した。
不動は、腕を思いっきり振る。
『カン!』『よしこれなら打ち取った。』
打球はショートへの平凡なゴロだった。
しかし、『あっ!』なんとショートがボールをファンブルしたのだ。『おいおい、マジかよ。今のは完全にゲッツーコースだったやん。』不動は落胆と共に動揺していた。
そして迎えた坂上との2回目の対決。
『さっきは何で打たれた……高めの釣り球のストレートだ。あのコースはあいつは対応できる。なら低めを狙えばいいんや。』
不動はキャッチャーのサインを見る。
『OK、まずはアウトコース高めのストレートか…』不動は思いっきり腕を振る。
『ズバンッ』『ボール!』球審はストライクを取らなかった。しかし、キャッチャーは頷いていた。『それでいい、坂上の反応が見れただけでいいんだ。次はこれで行こう。』
『OK、インコースに食い込むシュートか。』
『ブンッ』『ストラーーイクッ!』『振ってきたな。ストレートはバットを振らなかった。でも、シュートはバットを振った。球速はそこまで変わらない。一体あいつは何を狙っているんだ?』キャッチャーのサインは、落ちるチェンジアップだった。不動は腕を振る
『ズバンッ』『ストーライークッ!』これで【1ボール、2ストライク】キャッチャーは外へ逃げる死神の鎌と呼ばれるスライダーを、選択した。『OK、いくらあいつでもこれは打てないだろ………』不動の腕から投げられたボールは鋭く横に曲がっていく。『ズバンッ』『ボール!』『マジかよ……あいつこのスライダーを見極めたのか………ならここは………』不動とキャッチャーが選んだのは低め、フロントドアのシュートだった。
不動は思いっきり腕を振った。コースは、完璧なコースで、アウトコースからインコースに食い込んでいく…………坂上はそれに反応するようにバットを振った、、、
注
バックスクリーン→
野球場におけるホームランとなるには一番遠い場所。そこにホームランを打つのは至難の業。
センター→
野球における守備の要。
外野において1番守備が良い選手が務めることが多い。
ショート→
野球における日守備位置の一つ
内野の要で、内野で1番フットワークなどが良い人が務めることが多い。
ファンブル→
エラーの一種。守備の際、ボールがグラブの中で跳ねてボールを掴めないことを指す。
ゲッツー→
ゲットツーの略語。守備チームが一度に2つボールを取ることを指す。
ゲッツーコース→
ゲッターを比較的取りやすい打球コースのことを指す。
シュート→
シュートボールの略。スライダーとは逆の方向に曲がる球種。相手の凡打を誘う場面で多く使われる。
フロントドア→
野球においてボールゾーン(ストライクを取れないエリアのこと)からストライクゾーンに入ってくるボールのこと。
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