第7話 かつての戦友
『いや〜、手嶋先輩変わってなくてよかったな〜。見た目は変わってたけど、中身は変わってなくてよかったな〜。俺も将来あんな人を勇気付けられるような人間になりてぇ
な〜。』不動はそんなことを考えていた。
『まぁ、まずは目の前のことに集中しなきゃな。えーと、今日の相手のスタメンは……』
不動は今日の相手のスタメンを確認した。
『みんな名前知らないな…………ん?』
不動はある名前に釘付けになった。
『坂上昭徳………えっ!?………はぁ!?』
不動は、その名前に釘付けになった。
『坂上って…………甲子園で俺からホームランを打ったあの坂上か!?』
不動は、自分の目を疑った。
坂上昭徳(さかがみあきのぶ)とは、名門西宮学院の四番打者として、1年夏から4期連続で甲子園大会に出場、3年夏時の甲子園では、
大会最多記録となる8本のホームランを放った。また、決勝で不動から2打席連続ホームランを放つなどの活躍もあり、播磨の怪物と呼ばれ、世代最強打者との呼び声も高かった。その活躍もあってU18日本代表に選出され、不動のチームメイトとなった。日本代表でも四番打者として、怪物ぶりを発揮。大会MVPを獲得した。その後プロ志望届(しぼうとどけ)を出し、名古屋ブレイブサンダースに入団したらしい。『まさか、あいつとプロで対戦するとはな…………。あいつと顔を合わせるのはU18日本代表以来だな………。次は絶対に抑えてやる………』不動は静かな闘志を燃やしていた。
『play ball!!』球審の掛け声で試合が始まった。不動はいつもと違い冷静だった。『焦ったって何も変わらねぇ、打たれたら打たれただけ反省すればいいだけだ。』
古島コーチ、手嶋先輩の言葉を胸に淡々とボールを投げていく。『ストライーク、バッターアウツッ!!』甲高い球審の声が球場に響く。
『4番、ファースト、坂上』
その言葉と同時に坂上が登場した。
ずんぐりむっくりしたその体、あれが全て筋肉だと言うのが驚きだ。
不動は冷静にキャッチャーとアイコンタクトをとっていく。『ここは……まず何から投げればいいんだ?』キャッチャーのサインは
右打者坂上のインコースのストレートだった。『OK』不動は腕を振った。
『ストラーーイクッ!』甲高い球審の声が響く。『あいつ、ストレートに全く反応しなかった。じゃあ変化球待ちか?』
不動は、そんなことを考えながら、キャッチャーのサインを見る。『なるほど、一回変化球で様子を見ようってわけだな。』不動は、下へ落ちるチェンジアップを投げた。すると、坂上はこれに釣られてバットをフルスイング
『ストラーーイクッ!』これでノーボールツーストライク、『やっぱり変化球待ちだったかか、なら………』再びキャッチャーのサインを見る『高めの釣り球か………よし。』
不動は思いっきり腕を投げた………
注
スタメン→
スターティングメンバーの略
試合が始まった時の打撃と守備位置のメンバーの配置のこと
インコース→
バッターから見て体に近いところ
チェンジアップ→
投手の投げる球種の一つ、
フォークのように落ちて、空振りを奪う球と
変化が少なく、タイミングを外す球として
使われるものがある。
不動は前者の方を使っている。
ノーボール、ツーストライク→
野球において投手のカウントを表すもの
ストライクを3つ投げると、投手の勝利となり
逆にボールを4つ投げると、フォアボールとなり、バッターが一塁へ進む
高めの釣り球
ストライクゾーンの上に投げ込む球のこと
カウントが投手有利の時に使用することが多い。
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